王太子殿下のやりなおし

3333(トリささみ)

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 王城の自室。
 ベッドに篭っていると、廊下に繋がる扉からノック音が響く。

「兄上?まだ起きてますか?」

 声の主は僕の弟の第二王子、トリアトだった。
 対応するだけの余裕もなく無視する。

「最近の兄上は見ていられません。婚約者であるアーデルハイト様を置き去りにして、あんな平民くずれの女と睦み合っているなんて。」

 うるさい、うるさい、うるさい。

「『真実の愛に目覚めた』…学園でそう吹聴しているのを小耳に挟みましたが、兄上はただ逃避しているだけです。兄上を立派な王太子として導こうとしてくださっているアーデルハイト様を避けて、楽ができるあの女に擦り寄っているだけ。でもいつか、手痛いツケを払うときが必ず来ますよ。」

 僕が何も答えないでいると、トリアトは大きくため息を吐いて、扉の前から去って行った。

「…っ!」

 僕はベッドから起き上がり、着替えて窓から王城を脱出する。
 正規の通路から出れば、衛兵やメイドたちに止められる。

「ズレアバ…どこだ…?」

 そして彼女を探した。
 馬鹿馬鹿しい。
 学園で見せたあの冷たい目だって、何か訳があった筈だ。
 そうとも。
 僕が王太子をやめるとなれば、国での立場も金銭的状況も変わるし、そうなれば生活そのものが変わってしまうかもしれない。
 パニックで思考が働かなくなって、あんな無表情になっただけだろう。

「!」

 長い長い道のりを経て、僕はズレアバとよくデートしていた王都の大噴水の前にまで辿り着いた。
 しかし…

「っ!!!」

 そこで男とキスをしているズレアバの姿を、目撃してしまった。
 暗がりでよく見えないが、あの尖った耳と闇の中でも仄かに光る髪は間違いない。
 ズレアバを僕に紹介してくれた親友のフレドだ。
 どうして…

「…ん、ありがと。」
「どういたしまして。」

 ズレアバは何故かフレドにお礼を言うと、ふたりでベンチに座る。

「今日はちょっと、学園でしんどいことがあってね。」
「へえ、どんなだい?」
「ルシフ、私と結ばれるために王太子をやめたいなんて言い出して…止めるの大変だったんだから。」
「ええ、あのルシフが?驚きだね。」
「ホントホント!アイツから王太子を除いたら何が残るんだって話だよねー!」
「言い過ぎだよ、あはは…」
「「あはははは!!」」

 ……………

「だから言ったじゃねえか。」
「ソラ…」

 めまいが止まらないなか立ち尽くす僕の肩を、ソラが叩く。

「帰るぞ。もう夜更けだ。」
「でも王城はとっくに閉まってる時間だ。窓から飛び降りたからハシゴとかも用意してないし…」
「俺の家に来いよ。」

 僕はソラに導かれるがまま、彼の家にお邪魔した。
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