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「いいや、取り消すつもりはない。婚約破棄は遂行する。」
僕はあの書類を取り出し、突きつけた。
「………診断書?」
アーデルハイトは書類に目を通すと、唖然とする。
これまで眉ひとつ動かさず平静を保っていた彼女が、初めて見せた動揺だった。
「医者に診てもらった結果、僕は軽度のうつ状態だったことが分かった。原因は言わずもがな君だよ。」
「…そんな…ですが…うつ状態といえど軽度だったのでしょう?」
「アンタらしくもない軽率な発言だな。今はそうでも、アンタのどの心無い言葉が引き金になって悪化するか、分からない状況なんだぞ?」
ここでソラが参入してきた。
彼は僕の隣に立ち、アーデルハイトに反論する。
「っ!!」
アーデルハイトは怒りに顔を顰めるが、ソラの言ってることが正論だと理解しているからだろう、何も言い返してこない。
「これまでズレアバに構い続け、婚約者である君を蔑ろにしてきたこと。さらに君に冤罪をかけ大勢の晒し者にしたこと。人生に一度の記念である皆の卒業パーティーを壊したこと。そして王命である婚約を独断で破棄したこと。すべてに謝罪しよう。だからその償いとして、僕は王太子を退位して魔王を倒す旅に出る。」
アーデルハイトはもはや何も言えないようだ。
茶番の断罪劇は読みきっていたが、ここからは想定外のようで。
茫然自失のなか今にも泣き出しそうなほどに顔を歪めて立ち尽くしていた。
「アーデルハイトの新しき婚約者、そして新たなる王太子には、トリアトが選ばれることでしょう。それでは僕はこれで。」
「まっ、待ってください兄上!」
トリアトがギャラリーの中から飛び出してきた。
恐らくアーデルハイトに乱暴を働いたら取り押さえるつもりで、最前列の陰から待機していたのだろう。
「本気ですか?考え直してください!アーデルハイト様はこのようなことを望んでいたわけではありません!彼女はあなたのことを真に愛していて、あなたをお支えできる伴侶として頑張ってきたんですよ!?」
トリアトは必死だ。
無理もない。
ズレアバやその取り巻きたちが裁かれ、僕もこれから償いをする。
後に残るのは、王太子を精神が病むまで追い詰めておいて何の罰も受けず、新しい王太子の婚約者の座におさまろうとする女と、兄を追い詰めた女を慕い婚約を受け入れるお花畑の王子様。
ふたりとも到底受け入れられるわけがない。
しかし…
「溢れるほどの愛情を抱いていたとしても、注いでくれなければ、彼女から愛されて幸せだと僕が感じていなければ、何の意味もない。それはただ彼女ひとりが楽しいだけだよ。」
とうとう何も言えなくなったトリアトとアーデルハイトを残して、僕は会場を後にした。
僕はあの書類を取り出し、突きつけた。
「………診断書?」
アーデルハイトは書類に目を通すと、唖然とする。
これまで眉ひとつ動かさず平静を保っていた彼女が、初めて見せた動揺だった。
「医者に診てもらった結果、僕は軽度のうつ状態だったことが分かった。原因は言わずもがな君だよ。」
「…そんな…ですが…うつ状態といえど軽度だったのでしょう?」
「アンタらしくもない軽率な発言だな。今はそうでも、アンタのどの心無い言葉が引き金になって悪化するか、分からない状況なんだぞ?」
ここでソラが参入してきた。
彼は僕の隣に立ち、アーデルハイトに反論する。
「っ!!」
アーデルハイトは怒りに顔を顰めるが、ソラの言ってることが正論だと理解しているからだろう、何も言い返してこない。
「これまでズレアバに構い続け、婚約者である君を蔑ろにしてきたこと。さらに君に冤罪をかけ大勢の晒し者にしたこと。人生に一度の記念である皆の卒業パーティーを壊したこと。そして王命である婚約を独断で破棄したこと。すべてに謝罪しよう。だからその償いとして、僕は王太子を退位して魔王を倒す旅に出る。」
アーデルハイトはもはや何も言えないようだ。
茶番の断罪劇は読みきっていたが、ここからは想定外のようで。
茫然自失のなか今にも泣き出しそうなほどに顔を歪めて立ち尽くしていた。
「アーデルハイトの新しき婚約者、そして新たなる王太子には、トリアトが選ばれることでしょう。それでは僕はこれで。」
「まっ、待ってください兄上!」
トリアトがギャラリーの中から飛び出してきた。
恐らくアーデルハイトに乱暴を働いたら取り押さえるつもりで、最前列の陰から待機していたのだろう。
「本気ですか?考え直してください!アーデルハイト様はこのようなことを望んでいたわけではありません!彼女はあなたのことを真に愛していて、あなたをお支えできる伴侶として頑張ってきたんですよ!?」
トリアトは必死だ。
無理もない。
ズレアバやその取り巻きたちが裁かれ、僕もこれから償いをする。
後に残るのは、王太子を精神が病むまで追い詰めておいて何の罰も受けず、新しい王太子の婚約者の座におさまろうとする女と、兄を追い詰めた女を慕い婚約を受け入れるお花畑の王子様。
ふたりとも到底受け入れられるわけがない。
しかし…
「溢れるほどの愛情を抱いていたとしても、注いでくれなければ、彼女から愛されて幸せだと僕が感じていなければ、何の意味もない。それはただ彼女ひとりが楽しいだけだよ。」
とうとう何も言えなくなったトリアトとアーデルハイトを残して、僕は会場を後にした。
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