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8話 苦しい思い
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(驚いたな…この子が王妃⁇…確かに見た目は整っているが、王妃候補と言えばもっと気品があって、毎日王妃教育を受け、時間があればパーティ用のドレスでも選んだりしてるものなんじゃないのか?そもそもこんな森の中で暮らせるような神経はしていないはず…)
アクアはにわかには信じられないという顔をしていたが、これまでのアイリスを知る限り、嘘をつけるようにも思えなかった。
しかしあまりに突拍子もないことだったので、やはり半信半疑で続きを聞いた。
「…それが本当なら…国の一大事じゃないか?」
アクアは少し険しい顔をした。
「……別に私がいなくても、他にいくらでも相手はいるでしょ?…公爵家だって他にもあるんだし、他国のお姫様だって…探せばいるじゃない?」
「…そんな簡単な話じゃない。…国の勢力図が変わってしまうんだよ?
僕の知識で覚えている限りでは、今この国で一番力を持っていて、第一王子の後見役になっている公爵家は、国や民のことを一番に考えてくれる公明正大な公爵だったはずだ。
それが君の実家なんだとしたら、第一王子と結婚でさらに強く結びつくことによって、国の安寧は確約されるとも言える。
しかし、違う勢力図に変わってしまったら一体国はどうなってしまうのか…」
アクアは厳しい顔をして俯いた。
アイリスは悲しい顔になる。
「…ほらね?その考えが政略結婚だって言ってるのよ。国や国民のために犠牲になれってことでしょ?
…それは国にとって必要なことかもしれないけど、私だって1人の人間なのよ…
恋くらいしてみたいじゃない…
結婚だって、自分が好きになった人と愛し愛されて結婚したいのよ…
公爵家に生まれた人間として、それは我儘だとはわかってるけど、人としての気持ちを奪われたくない……
でも、…それでも私だって覚悟しようと何度か思ったわよ?
だけど、…そんな放蕩者だなんて…他に側妃をたくさん置かれたりしたら…私耐えられない…
だからどうしても気持ちに整理がつけられなくて…」
アイリスは逃避行することで考えないようにしてきた現実をまざまざと突きつけられ、目に涙が溜まってきたが、流れ落ちないようになんとか堪えた。
しかし、国や国民のこと、そして自分の気持ちとを天秤にかけると、どちらに傾くこともできないその大きな葛藤に苛まれて、今まで心に隠してきたものが溢れ出すように、結局泣き出してしまった。
「あっ、アイリス、ごめん!僕が無神経だった。そんな身分の君がこの場所に居るというのは、とんでもない覚悟と勇気が必要だったはずだ。それなのに責めるようなことを言って申し訳なかった。
……僕は君の味方だ。命の恩人なんだから、世間が何と言おうと、僕は君の気持ちを一番に優先するよ。
だから、ほら、泣かないで?」
アクアは優しくそう言って、ベッドのそばの椅子に座るアイリスの頭を撫でた。
アイリスはしかし首を横に振った。命の恩人だからどんな考え方も許されるなんてそれは嫌だった。
親と直接対決できずにこんなところに隠れていることこそ、自分自身、間違ったことをしているとわかっている証拠だったから。
色々な人に迷惑をかけてこんなことをしている自分も、政略結婚をしないといけない身の上も、命を助けられたからという理由で善悪の区別なく全てを許してくれようとするアクアも、全部嫌に思えて全てを投げ出したくなった。
アイリスは今まで溜めに溜めてきた思いを全て涙で洗い流すように泣き続けた。
その間ずっと頭を優しく撫で続けてくれるアクアの手に安心して、アイリスはいつの間にかベッドに突っ伏して寝てしまった。
アクアはにわかには信じられないという顔をしていたが、これまでのアイリスを知る限り、嘘をつけるようにも思えなかった。
しかしあまりに突拍子もないことだったので、やはり半信半疑で続きを聞いた。
「…それが本当なら…国の一大事じゃないか?」
アクアは少し険しい顔をした。
「……別に私がいなくても、他にいくらでも相手はいるでしょ?…公爵家だって他にもあるんだし、他国のお姫様だって…探せばいるじゃない?」
「…そんな簡単な話じゃない。…国の勢力図が変わってしまうんだよ?
僕の知識で覚えている限りでは、今この国で一番力を持っていて、第一王子の後見役になっている公爵家は、国や民のことを一番に考えてくれる公明正大な公爵だったはずだ。
それが君の実家なんだとしたら、第一王子と結婚でさらに強く結びつくことによって、国の安寧は確約されるとも言える。
しかし、違う勢力図に変わってしまったら一体国はどうなってしまうのか…」
アクアは厳しい顔をして俯いた。
アイリスは悲しい顔になる。
「…ほらね?その考えが政略結婚だって言ってるのよ。国や国民のために犠牲になれってことでしょ?
…それは国にとって必要なことかもしれないけど、私だって1人の人間なのよ…
恋くらいしてみたいじゃない…
結婚だって、自分が好きになった人と愛し愛されて結婚したいのよ…
公爵家に生まれた人間として、それは我儘だとはわかってるけど、人としての気持ちを奪われたくない……
でも、…それでも私だって覚悟しようと何度か思ったわよ?
だけど、…そんな放蕩者だなんて…他に側妃をたくさん置かれたりしたら…私耐えられない…
だからどうしても気持ちに整理がつけられなくて…」
アイリスは逃避行することで考えないようにしてきた現実をまざまざと突きつけられ、目に涙が溜まってきたが、流れ落ちないようになんとか堪えた。
しかし、国や国民のこと、そして自分の気持ちとを天秤にかけると、どちらに傾くこともできないその大きな葛藤に苛まれて、今まで心に隠してきたものが溢れ出すように、結局泣き出してしまった。
「あっ、アイリス、ごめん!僕が無神経だった。そんな身分の君がこの場所に居るというのは、とんでもない覚悟と勇気が必要だったはずだ。それなのに責めるようなことを言って申し訳なかった。
……僕は君の味方だ。命の恩人なんだから、世間が何と言おうと、僕は君の気持ちを一番に優先するよ。
だから、ほら、泣かないで?」
アクアは優しくそう言って、ベッドのそばの椅子に座るアイリスの頭を撫でた。
アイリスはしかし首を横に振った。命の恩人だからどんな考え方も許されるなんてそれは嫌だった。
親と直接対決できずにこんなところに隠れていることこそ、自分自身、間違ったことをしているとわかっている証拠だったから。
色々な人に迷惑をかけてこんなことをしている自分も、政略結婚をしないといけない身の上も、命を助けられたからという理由で善悪の区別なく全てを許してくれようとするアクアも、全部嫌に思えて全てを投げ出したくなった。
アイリスは今まで溜めに溜めてきた思いを全て涙で洗い流すように泣き続けた。
その間ずっと頭を優しく撫で続けてくれるアクアの手に安心して、アイリスはいつの間にかベッドに突っ伏して寝てしまった。
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