【完結】政略結婚はお断り致します!

かまり

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18話 アクアの記憶4 一目惚れ

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「戦争が終結したのは1ヶ月前。兄上が戻られたのは10日前。他の兵士たちも皆それぞれ家に帰り、休養しているところです」

 マクロスの話を聞いてカイルは驚き目を瞠った。精霊の話も、精霊と会ったことさえも夢心地だったが、その力をまざまざと見せつけられ、あれは全て実際にあったことだったのだと思い知る。
 呆然としているカイルに、マクロスは続けた。

「父上からは、僕が婚約したという話や兄上も帰ってきたなら、もう21歳になってしまいましたし、急いで婚約して結婚しなければという話もされていましたが、それも、もしやお忘れですか?」

「マクロス!婚約したのか⁉︎相手は⁉︎」

「はぁ…やっぱりですか…

相手はドルマン侯爵家のマリーサで、僕と同じ19歳の子です。

来年成婚する予定で、今は時折僕と一緒に社交へ出て貰ったりしています」

「そうなのか…仲良くやってるのか?」

「ええ、恥ずかしながら、一目惚れしてしまって。とても可愛い子なんですよ。また兄上にも紹介させてください。…あっ、…でもなぁ…」

 マクロスはそう言って照れた顔をしていたのに、一瞬悩んだ顔に変わったので、カイルは不思議そうに見返した。

「なんだ?」

「あっ、いや、その…だって兄上って男の僕から見ても美しいからなぁ…

マリーサが目移りしないか心配で…」

 本当に心配そうに言ったマクロスが可笑しくて、カイルは笑いながら言った。

「マクロス、そんなに心配しなくても見違えるほどかっこよくなってるよ?もうすぐ22歳になってしまう僕には、もうその爽やかさには勝てないよ?」

 カイルは、マクロスのサラサラの栗色の前髪から覗く不安そうな緑の目を見て、本当にそう思った。

 その目に淀みはなく、戦争の恐ろしさを知らないあどけなさを残す、少年と青年の狭間の若々しい目の前の弟は、顔立ちが整っているからだけではなく、気持ちの良い爽やかさを放っていて、誰もが好きになりそうな好青年だった。

「…ほんとかなぁ。でもまぁ、紹介しないわけにいかないしね。そうそう、兄上の方の婚約者候補の子はなんて言ったかな?

あの賢者のようなジルコニア公爵のご令嬢なんでしょ?

昔から目星はつけてたけど、戦争が終わるまで婚約せずにいたんだよね?」

「ああ、アイリスか?あまり仲良くしすぎると、他の派閥がうるさくて、子どもの頃しか会っていないから、それ以来だな。忘れてないといいけど…」

「憶えてようと忘れてようと、どっちにしろ僕たち王子なんて生き物は自分で結婚相手なんて決められないけどね?」

 マクロスは儚く笑った。

「そうだな…」

「まぁ、僕はたまたまマリーサを好きになれたからよかったけどさ。兄上もそのアイリスと想い合えるといいね?」

 マクロスは幸せそうな笑顔でそう言ったので、カイルは大事な弟の幸福を本当に嬉しく思った。

「そうだな。とにかくマクロスが幸せそうでよかったよ」

「ありがとう、兄上。

…あっ、そうそう、これ、次の社交パーティーの案内。僕の婚約者も来るから、その時にでも紹介するよ。だから必ず出席してね?」

 マクロスは手に持っていた手紙の事を思い出し、カイルに渡した。

「ああ、わかった。楽しみにしておくよ」

 と、本当にマクロスの思い人が見られるのを楽しみ思ったカイルは、優しく微笑んでそう言った。

「じゃあ、兄上。ほんとにゆっくり休んでね?」

 マクロスは心配気にそう言って、自室の方へ向かって去って行った。

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