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51話 モフモフ精霊
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「…な、何っ⁉︎ここ…どこ?…あれ?私馬から落ちて死んじゃった…⁇…護衛さんは…大丈夫だったかしら…」
アイリスは突如真っ白な空間の中に立ち尽くしていたので驚いたが、それより護衛のことが心配になって、また自分の身勝手な行動に人を巻き込んでしまったのだろうかと落ち込んでいると、目の前にすうっと少しずつ何かが現れてきた。
その姿がだんだんはっきりしてくると、それは美しい銀色の毛並みの、大きな狼だった。
「えっ⁉︎ア、アクア⁉︎えっ⁉︎どうしてここに⁉︎まさかカイルも死んじゃったの⁉︎」
アイリスの目がまた泣きそうになる。
(大丈夫よ…カイル王子は生きてるわ)
アイリスは頭の中に声が響き、キョロキョロ周りを見て誰かが話しかけているのか探してみた。
しかし、目の前の狼と自分以外そこにはいない。
(あなたの目の前の狼があなたの頭の中に直接話しかけているのよ?狼じゃなくて、精霊だけどね)
「せ、精霊⁉︎…でもその姿って…アクアにそっくり…」
(それはそうよ。私が彼をあの姿にしたんだから。私はフーラっていうの)
「え⁉︎…じゃあアクアは精霊だったの⁉︎」
(夜だけね。でも契約が終わったから、今はもう普通の人間に戻してるわよ?)
「えー!もうあのふわふわの毛触れないの…?」
カイルがなぜ精霊と契約していたのかより、狼姿にもう会えないことの方が気になってしまったアイリスは、そう聞きながら悲しそうな顔になる。
(そうなるわね)
「えー⁉︎………」
アイリスは2度と触れないと聞いて、目の前のアクアにそっくりな狼にじりじりと近寄って行く。
(な、なに?)
「…精霊さま、失礼します」
アイリスは一応断りを入れると、精霊フーラの毛に触り始めた。
「ふぁあ、これこれ。もうこれが触れないだなんて…」
そう言いながら、アイリスは精霊ということなどお構いなしに、毛の中に顔を埋め、これが最後なんだと幸せなひと時を噛みしめた。
(や、やめてっ、何するの!…ふ…ふふっく、くすぐったい!やめて!会わせてあげないわよ⁇)
「え?」
アイリスは毛を触るのをやめて少し離れて聞き返す。
「…どういうことでしょうか?」
(…あなたがカイル王子にとっても会いたそうだったから、私も彼に会いたい気持ちはよくわかるし、あなたキレイな子だから会わせてあげようと思ってたのよ?あっ、キレイって心のことね。
でも、直接会うと今は彼が心配しちゃうだろうから、ここから覗かせてあげる。
危なくなくなったら彼のところに送ってあげるわ)
「いいんですか⁉︎フーラさま‼︎」
(ええ、同士だもの、助けてあげる)
「…同士?何がですか?」
(ふふっ、ナイショ…今はあなたのものかもしれないけど、魂は私が迎えに行くわ)
「…フーラさま…まさか…カイルを好きなんですか?」
(さあねー?)
「だめ!絶対だめです!魂もあげません!やだー‼︎でも死んだあとのことまでどうしていいかわからないっ!うわーん!」
アイリスは頭を抱えて叫んだ。
(ふふふっ、あなたってほんとおかしいわねっ。あははは
彼が好きになるのも頷けるわ。まぁ、魂になってから私とやり合いましょうよ?それも楽しみだわ。
それより、こっちへいらっしゃい。私の背に乗って少し移動するわよ?)
アイリスは背中に乗せて貰えると聞いて、目がキラキラする。さっきの叫びはどこへやら、もうニコニコと精霊フーラの背にしがみついていた。
アイリスは突如真っ白な空間の中に立ち尽くしていたので驚いたが、それより護衛のことが心配になって、また自分の身勝手な行動に人を巻き込んでしまったのだろうかと落ち込んでいると、目の前にすうっと少しずつ何かが現れてきた。
その姿がだんだんはっきりしてくると、それは美しい銀色の毛並みの、大きな狼だった。
「えっ⁉︎ア、アクア⁉︎えっ⁉︎どうしてここに⁉︎まさかカイルも死んじゃったの⁉︎」
アイリスの目がまた泣きそうになる。
(大丈夫よ…カイル王子は生きてるわ)
アイリスは頭の中に声が響き、キョロキョロ周りを見て誰かが話しかけているのか探してみた。
しかし、目の前の狼と自分以外そこにはいない。
(あなたの目の前の狼があなたの頭の中に直接話しかけているのよ?狼じゃなくて、精霊だけどね)
「せ、精霊⁉︎…でもその姿って…アクアにそっくり…」
(それはそうよ。私が彼をあの姿にしたんだから。私はフーラっていうの)
「え⁉︎…じゃあアクアは精霊だったの⁉︎」
(夜だけね。でも契約が終わったから、今はもう普通の人間に戻してるわよ?)
「えー!もうあのふわふわの毛触れないの…?」
カイルがなぜ精霊と契約していたのかより、狼姿にもう会えないことの方が気になってしまったアイリスは、そう聞きながら悲しそうな顔になる。
(そうなるわね)
「えー⁉︎………」
アイリスは2度と触れないと聞いて、目の前のアクアにそっくりな狼にじりじりと近寄って行く。
(な、なに?)
「…精霊さま、失礼します」
アイリスは一応断りを入れると、精霊フーラの毛に触り始めた。
「ふぁあ、これこれ。もうこれが触れないだなんて…」
そう言いながら、アイリスは精霊ということなどお構いなしに、毛の中に顔を埋め、これが最後なんだと幸せなひと時を噛みしめた。
(や、やめてっ、何するの!…ふ…ふふっく、くすぐったい!やめて!会わせてあげないわよ⁇)
「え?」
アイリスは毛を触るのをやめて少し離れて聞き返す。
「…どういうことでしょうか?」
(…あなたがカイル王子にとっても会いたそうだったから、私も彼に会いたい気持ちはよくわかるし、あなたキレイな子だから会わせてあげようと思ってたのよ?あっ、キレイって心のことね。
でも、直接会うと今は彼が心配しちゃうだろうから、ここから覗かせてあげる。
危なくなくなったら彼のところに送ってあげるわ)
「いいんですか⁉︎フーラさま‼︎」
(ええ、同士だもの、助けてあげる)
「…同士?何がですか?」
(ふふっ、ナイショ…今はあなたのものかもしれないけど、魂は私が迎えに行くわ)
「…フーラさま…まさか…カイルを好きなんですか?」
(さあねー?)
「だめ!絶対だめです!魂もあげません!やだー‼︎でも死んだあとのことまでどうしていいかわからないっ!うわーん!」
アイリスは頭を抱えて叫んだ。
(ふふふっ、あなたってほんとおかしいわねっ。あははは
彼が好きになるのも頷けるわ。まぁ、魂になってから私とやり合いましょうよ?それも楽しみだわ。
それより、こっちへいらっしゃい。私の背に乗って少し移動するわよ?)
アイリスは背中に乗せて貰えると聞いて、目がキラキラする。さっきの叫びはどこへやら、もうニコニコと精霊フーラの背にしがみついていた。
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