33 / 72
33 届かなかった小さな手
しおりを挟む
血の臭いと肉が焦げる臭いが辺り一帯に立ち込めている。人々の怒号と魔物の怒鳴が耳を占めている。ここは···戦場?
「聖女リーゼ様!第16小隊が押されているようです!トルス副中隊長が負傷!第12小隊負傷者多数!これ以上は前戦が持ちません!」
私は煙管を咥えたまま思案する。ん?あれ?この煙管お気に入りだったけど、壊れてしまった物が何故私の手にあるのだろう。
いや、今はそんな事よりこの状況を打破しなければならない。
「第8小隊は動けそう?」
「再編すればなんとか····しかし、グレーリー小隊長が」
「グレーリー小隊長の穴埋めは私が出ましょう。第16小隊と第12小隊を下げて、再編した第8小隊を投入。」
私は後を振り返る。そこには治療中の者達とその人たちを治療する衛生小隊の者達が目に映る。軽傷の者は治療され再び小隊に合流して戦地を駆けることになる。
重傷の者の中には四肢が無くなった者や酸で皮膚が爛れた者、爆炎に体を焼かれた者様々だ。
今回は特に酷い。ああ、そうだったエルグランのスタンピードが発生したのだった。何故、私はこんな事を忘れていたのだろう。
「ハルド!サーシャ!治療は他の者に任せて私に付いて来てください!」
「聖女リーゼ様!今は無理です!」
「リーゼ!ジジィを扱き使い過ぎだ!」
無理だと言ったサーシャの元に行き、治療中の者の傷を瞬時に癒し、サーシャの腕を取り歩かせる。流石聖女様ですとか言っているけど、傷を治した者は直ぐに戦場に戻らなければならない。少し可哀想な事をしたかな?
「サーシャ。無理じゃない!サーシャは応急処置をして、別の人に任せる!時間は有限!ハルド、まだ40代は働き盛り!孫ができたからと言って引退できるわけないでしょ!」
文句を言い続け白衣をなびかせているハルドと自分より小さな子にキラキラした目を向けているサーシャを連れて、救護所を出る。
その横を次々に怪我人が運ばれ、救護所に吸い込まれていく。
「ま、······待ってくれ」
運ばれて行く者に声を掛けられて視線を向けた。
「せ··じょリーゼ様······俺を治療してくれ······すぐ····に、············戻らない····」
片腕を失ったグレーリー小隊長が運ばれているところだった。第8小隊を率いる者で、かなりの腕が立つ彼だったが、流石にこの押し寄せる波のような魔物には対処しきれなかったようだ。少し責任感が強いところが気になる者でもある。
「グレーリー小隊長。貴方は休んでいてください。代わりに再編した第8小隊は私が率います」
「しかし、俺が······」
「グレーリー小隊長。たとえ腕を治療したからと言って直ぐに使い物になるわけではありません。貴方の今やるべきことは、素直に救護所に行くことです。さぁ、小隊長を運んで」
私はそう言って、歩を進める。その先には再編した第8小隊の50名と衛生隊の10名がいた。
「これから第12小隊と第16小隊の穴埋めに入ります。私が小隊長代理となりますので、各班長は指示に従うように」
「「「はっ!」」」
「餓鬼の癖に偉そうに」
「······。ハルド、サーシャは怪我人を応急処置後、衛生隊に託すように。特に第12小隊を優先にお願いします。衛生隊、怪我人は戦場にいます戦場を駆け抜けなさい。あなた達になにかあると死人が増えることを肝に命じておきなさい。」
「「「は!」」」
そう命じて私は、戦場に向かう。第12小隊と第16小隊が戦っているところにはオーガが群衆のように犇めきあっている。
私は戦線に穴を開ける為に駆け抜け、一番近いオーガに大剣の一撃を······あれ?なんで私は私の肉切り包丁じゃないの?ああ、あれは使い物にならなくなった?
まぁ。このノコギリの刃のような血吸丸で構わないか。でもこれは使うのを禁止されていたような······????何かがおかしい?
私は衝撃と共に吹き飛ばされ、目の前には片腕が無いままのグレーリー小隊長が······。
駄目。ダメダメダメ!このままだと彼の死が!彼が死んでしまう。
「グレーリー小隊長!なぜ戻ってきた!」
間に合え!この先にはオーガキングが!
舞い踊る鮮血に崩れ落ちる体。その先には強靭な肉体を持ち、歪んだ笑みを浮かべているオーガキングが!
届かなかった手。私の小さな手は、また彼を救えなかった。
「あ······ああ、あああああぁぁぁぁぁ!」
『アリア!アリア!』
揺さぶられ目を覚ます。目を覚ます?ああ、夢か。いや、あれは過去の事。全て終わったこと。
「アリア、どうした?」
その声に視線を向ける。
彼は誰?いや、呪われたグランシヴァリスだ。
しかし、ここはどこ?視線を巡らすが私の家ではない······確か。えーっと、あの後強引に食事を取らされて、結界と治癒の陣を敷くように言われ、捕獲された。あ、うん。そのまま寝ちゃんたんだね。
それで、昨日愚兄から私が苦労して作り上げた聖騎士団のその後を聞いて、私のトラウマの戦いを夢を見てしまったと。
本当にあの戦いは最悪だった。
問題の王家直轄領のスタンピードだ。まだ私が王の命令で各地の魔物討伐を始めたばかりの頃だったので指揮系統が全く駄目、騎士たちも自尊心が高く使い物にならない。そして、泥沼の戦いと······
ん?······なぜ、私は目の前の人物からキスされているのだろう。
「聖女リーゼ様!第16小隊が押されているようです!トルス副中隊長が負傷!第12小隊負傷者多数!これ以上は前戦が持ちません!」
私は煙管を咥えたまま思案する。ん?あれ?この煙管お気に入りだったけど、壊れてしまった物が何故私の手にあるのだろう。
いや、今はそんな事よりこの状況を打破しなければならない。
「第8小隊は動けそう?」
「再編すればなんとか····しかし、グレーリー小隊長が」
「グレーリー小隊長の穴埋めは私が出ましょう。第16小隊と第12小隊を下げて、再編した第8小隊を投入。」
私は後を振り返る。そこには治療中の者達とその人たちを治療する衛生小隊の者達が目に映る。軽傷の者は治療され再び小隊に合流して戦地を駆けることになる。
重傷の者の中には四肢が無くなった者や酸で皮膚が爛れた者、爆炎に体を焼かれた者様々だ。
今回は特に酷い。ああ、そうだったエルグランのスタンピードが発生したのだった。何故、私はこんな事を忘れていたのだろう。
「ハルド!サーシャ!治療は他の者に任せて私に付いて来てください!」
「聖女リーゼ様!今は無理です!」
「リーゼ!ジジィを扱き使い過ぎだ!」
無理だと言ったサーシャの元に行き、治療中の者の傷を瞬時に癒し、サーシャの腕を取り歩かせる。流石聖女様ですとか言っているけど、傷を治した者は直ぐに戦場に戻らなければならない。少し可哀想な事をしたかな?
「サーシャ。無理じゃない!サーシャは応急処置をして、別の人に任せる!時間は有限!ハルド、まだ40代は働き盛り!孫ができたからと言って引退できるわけないでしょ!」
文句を言い続け白衣をなびかせているハルドと自分より小さな子にキラキラした目を向けているサーシャを連れて、救護所を出る。
その横を次々に怪我人が運ばれ、救護所に吸い込まれていく。
「ま、······待ってくれ」
運ばれて行く者に声を掛けられて視線を向けた。
「せ··じょリーゼ様······俺を治療してくれ······すぐ····に、············戻らない····」
片腕を失ったグレーリー小隊長が運ばれているところだった。第8小隊を率いる者で、かなりの腕が立つ彼だったが、流石にこの押し寄せる波のような魔物には対処しきれなかったようだ。少し責任感が強いところが気になる者でもある。
「グレーリー小隊長。貴方は休んでいてください。代わりに再編した第8小隊は私が率います」
「しかし、俺が······」
「グレーリー小隊長。たとえ腕を治療したからと言って直ぐに使い物になるわけではありません。貴方の今やるべきことは、素直に救護所に行くことです。さぁ、小隊長を運んで」
私はそう言って、歩を進める。その先には再編した第8小隊の50名と衛生隊の10名がいた。
「これから第12小隊と第16小隊の穴埋めに入ります。私が小隊長代理となりますので、各班長は指示に従うように」
「「「はっ!」」」
「餓鬼の癖に偉そうに」
「······。ハルド、サーシャは怪我人を応急処置後、衛生隊に託すように。特に第12小隊を優先にお願いします。衛生隊、怪我人は戦場にいます戦場を駆け抜けなさい。あなた達になにかあると死人が増えることを肝に命じておきなさい。」
「「「は!」」」
そう命じて私は、戦場に向かう。第12小隊と第16小隊が戦っているところにはオーガが群衆のように犇めきあっている。
私は戦線に穴を開ける為に駆け抜け、一番近いオーガに大剣の一撃を······あれ?なんで私は私の肉切り包丁じゃないの?ああ、あれは使い物にならなくなった?
まぁ。このノコギリの刃のような血吸丸で構わないか。でもこれは使うのを禁止されていたような······????何かがおかしい?
私は衝撃と共に吹き飛ばされ、目の前には片腕が無いままのグレーリー小隊長が······。
駄目。ダメダメダメ!このままだと彼の死が!彼が死んでしまう。
「グレーリー小隊長!なぜ戻ってきた!」
間に合え!この先にはオーガキングが!
舞い踊る鮮血に崩れ落ちる体。その先には強靭な肉体を持ち、歪んだ笑みを浮かべているオーガキングが!
届かなかった手。私の小さな手は、また彼を救えなかった。
「あ······ああ、あああああぁぁぁぁぁ!」
『アリア!アリア!』
揺さぶられ目を覚ます。目を覚ます?ああ、夢か。いや、あれは過去の事。全て終わったこと。
「アリア、どうした?」
その声に視線を向ける。
彼は誰?いや、呪われたグランシヴァリスだ。
しかし、ここはどこ?視線を巡らすが私の家ではない······確か。えーっと、あの後強引に食事を取らされて、結界と治癒の陣を敷くように言われ、捕獲された。あ、うん。そのまま寝ちゃんたんだね。
それで、昨日愚兄から私が苦労して作り上げた聖騎士団のその後を聞いて、私のトラウマの戦いを夢を見てしまったと。
本当にあの戦いは最悪だった。
問題の王家直轄領のスタンピードだ。まだ私が王の命令で各地の魔物討伐を始めたばかりの頃だったので指揮系統が全く駄目、騎士たちも自尊心が高く使い物にならない。そして、泥沼の戦いと······
ん?······なぜ、私は目の前の人物からキスされているのだろう。
1
あなたにおすすめの小説
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!
皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!
お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます
りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。
初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。
それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。
時はアンバー女王の時代。
アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。
どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。
なぜなら、ローズウッドだけが
自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。
ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。
アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。
なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。
ローズウッドは、現在14才。
誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。
ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。
ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。
その石はストーン国からしか採れない。
そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。
しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。
しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。
そして。
異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。
ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。
ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる