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28章 穢れと鬼
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しおりを挟む「氷鬼。凄く楽しかった!」
晴れ渡った空の下、庭で火を焚いている。
その周りで走り回っている赤い毛並みの大型犬がいた。
楽しかったと言っているのは大型犬化したグレイではない。
焚き火で串刺しの肉を炙っているオルクスだ。氷鬼の途中で遭遇した大鹿の肉を庭で食べようとしている。
「雪の中で獲物を待ち伏せるのは久しぶりだった」
何か違う遊びになっているような気がする。
「途中一気に気温が下がらなければ、俺が勝てた」
焚き火の前で項垂れているリオンの言葉だ。一気に気温が下がったのは、炎国の精霊の所為なのだが。
「なんだ?アレぐらいの寒さなんて、冬によくあるだろう?グレイも元気に走り回っているし」
真冬のギラン共和国に行ったときに、冬期休暇なるものがあったので、外にでられないほどの寒さになるのは普通なのだろう。
そして名指しされたグレイは、ふと我に返り、すごすごと焚き火の前に行った。
どうやら、単純なルールの中で自由に行動できることが楽しかったのだろう。
いや、獣としての狩猟本能だろうか。少し離れたところに、クマ型の魔獣や鹿型の魔獣が積まれていた。
そして、一言も言葉を発していないスーウェンは縁側で行き倒れている。シャーレン精霊王国は、国全体に結界が張ってあるため、このような豪雪になることはなかったのだろう。
雪まみれのスーウェンをリオンが担いで戻ってきて、そのままだ。
「おいしい!この前のケーキも美味しかったけど、これも美味しい!」
カイルの炎王への殺意をへし折った精霊のヴィーネは、一人でホールケーキを抱えて食べている。
畳の部屋で空中に浮かんで、誰にも渡さないという雰囲気を醸し出していた。
カイルと言えども精霊を敵に回すことは避けたということだろう。そのヴィーネを前に、カイルはシェリーを膝の上に抱えて畳の上に座っている。
カイルに抱えられているシェリーの目は、相変わらず死んだ魚の目をして炎王を見ていた。
「それで、要望だったか?あー……何かめちゃくちゃなことを言われた気がするが?」
その炎王は、シェリーの言葉を代弁したカイルに視線を向けていた。
普通に聞けば、戦争が勃発する話だった。
「1ヶ月後に聖女お披露目パーティーがあるそうです」
「凄く他人事だな。佐々木さん」
シェリーからすれば、別に必要がないお披露目パーティーなので、どうてもいいと思っているのだろう。
だから、かなり無茶なことを言えるのかもしれない。
「そこにミゲルロディア大公閣下とモルテ王を招待しました」
「は?」
あまりにもの予想外のことに、炎王は唖然として固まった。
「魔人化した大公殿とあの狂王を?ありえねぇ。え?その状況でプライドだけはガチガチにあるレイグレシアに喧嘩を売れって?阿鼻叫喚地獄だろう」
炎王は素のエンが出ているのか、ブツブツと言っている。
「エン。アイス食べたい」
「そもそも魔人と狂王の時点で、アウトじゃないのか?」
「エン。アイス」
炎王が頭を抱えている側で、ヴィーネがアイスをねだっている。
それに対しどこからともなく、抱えるほどのアイスの容器を取り出して、炎王はヴィーネに渡した。
ヴィーネは否定されるとは思っていないようで、当たり前のように受け取り、抱えて食べだす。
「佐々木さん、いくらなんでも無理があるだろう」
長考した炎王は結論をだした。言っていることには無理があると。
炎王でさえイーリスクロムと同じ意見なのだ。
シェリーのやろうとしていることが、逸脱していると。
「私は何度もモルテ王と会談をもってくださいと言いました。魔人に対しての理解も変わったように、本人と会えばまた違った印象を受けるはずです」
「そもそも国交がない。もしそれを行うなら、ギラン共和国のフェクトス総統だ」
炎王の言い分は正論だ。
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それならば、ギラン共和国をまとめているフェクトス総統閣下が会談を行うべきだと。
「では、個人的に会うことでどうでしょう?仲介は私が行います」
「はぁ、佐々木さんがそこまで言う意図が見えない。それは佐々木さんのこれからの戦いの布石かなにかか?」
「まったく関係ありません」
炎王の疑問にシェリーはきっぱりと答える。悪魔や魔王との戦いにモルテ王は関係ない。
ただマルス帝国との戦いに手を出してくるなと言っただけだ。
「モルテ王を表舞台に上げたいのは星の女神ステルラ様の願いのためです」
「何か、知らない神の名前が出てきたな。神の意思で佐々木さんは動いているということか?」
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