番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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8章 赤い呪いと青い呪い

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「なんですか。第6師団長さん、本当のことじゃないですか。」

「そう言って、前回もユーフィアを追い詰めただろう。」

クストが唸るように答える。

「追い詰めるですか。この赤い液体もこの青い液体も禍々しい呪いとして存在しているのは事実です。そして、多くの被害者がいるのも事実です。炎王の奥方も被害者です。それで、わたしはアイラという少女を放置して炎国へ行っていいですか?」

「その前になんで君に炎王からの依頼が来るのかな?炎国には光の巫女がいたよね。あと、鬼婆が口癖のあの炎王が奥さんの為に他国にいる君に頼むのは疑問を持つね。」

 確かに、一国の国王が他国のBランクでしかない冒険者に依頼を出すのはおかしなことではある。

「鬼婆?・・・5代目の炎王ではないですよ。初代からの依頼です。」

 自分の嫁を鬼婆というのが口癖なのは5代目の炎王だ。

「はぁ?それこそありえない。僕でさえ会ったことがないのに!」

 初代炎王は2代目に引き継いでから表舞台には出てこず、裏方で国を支えていたので、一国の国王であるイーリスクロム陛下でさえ会うことのない人物だ。

「証拠の書状」

 そう言いながら、シェリーは炎王からの巻紙の手紙を渡す。イーリスクロム陛下がその手紙を開くが「うぉ。」と言いながら、巻紙の端を床に転がしている。普通の手紙ではないので、知らない者が開くとその様になってしまうのだろう。しかし、書かれている文字は、この世界で使われている文字ではないので当然読めない、隣から覗き込んでいるクストは何かに気づいたようであるが、イーリスクロム陛下は首を捻っている。

「本物かわからないけど?それに何が書かれているかさっぱりわからない。」

「第6師団長さんは本物かわかりますよね。その文字は一番身近にありますよね。奥様が術式に使われている文字ですよね。本物かどうかわからないのであれば、奥様に読んでいただくといいですよ。」

「いや、ユーフィアにとってお前は害だ。ユーフィアには会わせない。本物だと俺が証明する。多分、最後の文字が炎王を表している文字だ。」

「あ、そうなんだ。えー。何で、初代炎王からこんな手紙のもらうのかな。僕も紹介してほしな。その前に聖女候補の件をどうするかだよね。まいったな。モルテ王の番か・・・。」

 そうだ、あの時シェリーが視たアイラという少女のステータスの変更された項目は称号と。そして、もうひとつは番だ。最初はシェリーの知らない人物だった。しかし、変更された人物の名前は知っている。ある意味有名な人物だ。

  つがい ルナティーノ・トールモルテ

 隣国モルテ国の王の名前だ。王なのだから多くの人たちに名を知られているのは当たり前なのだが、何が有名かといえば、かの国の王は狂人で有名だ。種族はノーライフキングだと言われているがそれを本当かどうか確認したものはいない。しかし、この3000年間、王が変わっていないと言われている。
 その3000年間生きた王はここ1000年ほど前からの奇行が報告されている。一晩で後宮の女性たちを皆殺しにしたとか、とある村が地面ごと一晩で無くなったと思えば3日後に全く離れた山中で無くなった地面ごと村が破壊されていたと。もちろん住んでいた住人ごとだ。雄叫びを上げながら王都を走り回っているのは日常化しているらしい。
 そんなモルテ王の番に変更されたのだ。変更した人物はあの白い謎の生命体だろう。

 そんな狂王モルテ王のツガイとして選ばれてしまったアイラ嬢は危険視しなければならない要注意人物になってしまった。

「あー。ここ数年教会がおとなしいから、この機会に聖女を立てようとしたのに、その聖女候補が狂王の番だなんて、最悪だ。なぁ。番の変更はもう行われないのか?」

 そんなことをシェリーに問われても知ることのできないことだ。気分屋と言っていい謎の生命体のことなんて理解できない。その問にシェリーは答えない。

「はぁ。先にこの件を終わらせてから、炎国に行ってくれないか?狂王は危険だ。誰かアンディウムを呼んで来てくれないか。聖女候補は今はどうしていたかな。」



 アンディウムが第6師団の詰め所にやってきて、そのまま教会の方に行くことになったのだが、第6師団を去り際にシェリーは第6師団長のクストに一言を口にする。

「そういえば、わたしと奥様が会うことに否定的でしたが、奥様はわたしの家によく来ていますよ。」

「はぁ?なんだと!」

 シェリーは背中にクストの叫び声を聞きながら、第6師団の詰め所を後にするのだった。

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