番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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14章 黒の国

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「久しいな。シェリー。」

「お久しぶりです。王太子殿下。」

「王太子だなんて他人行儀だな。リオンと呼べと言っただろ。」

「他人ですから。」

「面白い冗談だな。初代様。邪魔なのですが?」

 この二人のやり取りは炎王越しにされている。

「別に邪魔をしているわけでもなく、佐々木さんが離してくれないから。」

 先程まで掴まれていた手で、シェリーは逆に炎王の胸ぐらを掴んでいるのだ。この国で絶対的な炎王を盾にすることで、人一人分の距離を取っている。

「シェリーはいつも初代様やアフィーリアに会いに来ているのに、私には会いに来てくれないのだな。」

「炎王とは取り引きをしているだけで、アフィーリアは突撃されているだけです。王太子殿下には特に用はありません。そろそろ帰りますので、失礼します。」

 そう言いシェリーは王太子を突き放す。

「そんなに急いで帰らなくてもいいだろう?」

 その時、シェリーと王太子の間に風が抜け、間にいた炎王がいなくなっていた。目線を横に向けると、炎王が地面に横たわりその上には青みがかった白い髪の少女が立っていた。

「エン。何があったの?エンの魔力が溢れていたから心配してきたの。」

 しかし、心配して来たと言うには炎王を足蹴にしている。炎王は起き上がり少女の頭を鷲掴みにし

「毎回突撃するなと言っているよな。しかし、今回は結果オーライだ。」

 そう言って炎王は少女にカップアイスを渡しているが大きさがおかしい。どうみても1kg入っているアイスに見える。そして、少女は嬉しそうにその大きなアイスを抱えて食べ始めた。

 炎王がアイスを食べている少女によって突撃され、移動させられたという事は、シェリーと王太子との間を隔てるものは無くなってしまったということだ。
 炎王と少女のやり取りに気を取られてしまったシェリーは王太子に抱えられていた。いつかの日の出来事と同じく、子供を抱える様に片腕で抱えられていた。

「もうすぐ正午だ。お昼を用意させよう。それで一緒に食べよう。」

「いいえ、帰りますので大丈夫です。」

「遠慮せずともよい。」

 王太子は優しい笑顔をシェリーに向ける。

「遠慮などしていません。帰りますので降ろしてください。」

「ははは。」

 そう王太子は笑いながら訓練場の出口へと歩き出した。シェリーは殴ってもいいかと炎王に視線を送るが、炎王はニヤニヤとアイスを食べている少女の隣で笑っている。
 わかった。殴ろう。
 シェリーは拳を握り構えたところで、体が浮いた。

「シェリーを勝ってに連れて行かないでもらえるかな?」

 今度はカイルに抱えられていた。シェリー的には何も変わってはいなかった。王太子からカイルに移動しただけだった。

「あ゛?お前は誰だ?俺のシェリーを返せ。」

「私は王太子のものではありません。」

「カイザール・セイルーン。セイルーン竜王国の第三王子だ。そして、シェリーの第1夫だ。」

「カイルさん、ですから籍は入れていません。」

 シェリーはすぐさま否定をする。

「夫だと?」

 王太子はカイルを睨みつける。

「ですから、違います。」

 シェリーの目の端に赤い色が映った。

「初めまして、グレイシャル・ラースだ。ラース公国の第二公子で、シェリーの第2夫だ。」

「グレイさん、違いますから。」

「スーウェンザイル・シュエーレン。エルフ族のシュエーレンの第三子でシェリーの奴隷兼第3夫です。」

「スーウェンさん。奴隷からは解放しました。それからいらない言葉が入っています。」

「オルクス・ガナートだ。シェリーの第4夫だ。シェリーを勝手に連れていくなよ。ただでさえ、いなくなったら分からなくなるのに」

「オルクスさん。夫は違いますから。わからなくなるのは、そういうものです。」

 シェリーの否定の言葉は誰も聞いてくれない。

「改めて本人から聞くとすごいな。セイルーンの王族に、ラースの女神の加護を得た公子に、エルフ王の末裔に、ギランのガナートか。佐々木さん凄いね。」

 炎王は青い白髪の少女の頭を撫でながら言っている。シェリーは炎王を睨み、この状況をどうにかしてほしいものだと視線を投げつける。こうならない様にするためのペンダントのはずが、王太子にはあまり効力がないのか、おかしな行動を取られている。
 そして、あの謎の生命体が手を下したことにより、シェリーのツガイが5人揃ってしまった。
 この状況から現実逃避したいシェリーの目は腐った魚の目になっていた。

「取り敢えず、私だけ帰っていいですか?」

 シェリーはルークに癒やされたかった。

「「「「「ダメだ。」」」」」

 しかし、帰ることを5人に否定された。
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