番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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16章 英雄の国

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「何か問題でしょうか。」

 これと言われたシェリーが尋ねる。

「だってラースではなく、あいつの言ったとおりシーランに行ってしまったじゃない?」

「当たり前じゃないですか、クソ勇者と遭遇する率が高いラースに住むわけないじゃないですか。」

「そういうところよ。私の意を伝えても無視されたしね。」

 女神ナディアはころころと笑う。自分の意である神意をシェリーは無視をしているのに、それがさも面白いかのように笑う。

「ナディア様、質問をしてもよろしいでしょうか。」

 身なりを整えたシド総帥が女神ナディアに尋ねたいことがあると言う。

「何かしら?」

「我々が変革者の影響を受けたと言うのはどういうことなのでしょう。」

 先程、確かに女神ナディアは言っていた3人の変革者の影響を受けたガレーネかフィーディスの血を取り入れたいと。

「ああ、その事?あの水龍の影響を受けなければ、英雄と言われる程の力を得ることなんて出来なかったわ。レベル90如きで英雄と呼ばれる力を得られるはずないじゃない?」

「「「「レベル90如き・・・。」」」」

 女神ナディアの前にいる3人+1人の呟きが重なった。女神ナディアはそのまま話し続ける。

「それが顕著に現れたのがあのうさぎ獣人の彼・・・名前は忘れちゃったけど、うさぎ獣人としてはあり得ない存在になってしまったわね。その一族がシーランに居るはずだからシェリーちゃんは知っていると思うけど、あれはうさぎ獣人と言うより1個の確立した種族と言ってもいいと思うわ。」

 女神ナディアが言っているうさぎ獣人と言うのは統括師団長閣下を始めとするグアトールの事だろう。確かに筋肉うさぎはグアトールの者達だけだった。

「まぁ、影響力の強い変革者が側に居続けた金狼と白猫とうさぎの一族は他の種族よりも力を得やすいのよ。特に3人の変革者の影響を受けたガレーネとフィーディスは別格ね。」

「その変革者が3人と言うのは誰ですか?一人は英雄の水龍のアマツ様のことですよね。もう一人は炎王様、残りの一人はどなたですか?」

 シド総帥は一族に影響を与えた変革者と言う者が誰か気になったようだ。

「黒狼よ。でも、一番あなた達に影響を与えているのはエン君よ。彼、頑張り屋さんだから色々影響を与えているみたいね。」

「エンクン・・・。黒狼ってことはやはりクロードか。」

 女神ナディアの言ったエン君という言葉に違和感があるらしい。そして、先程シド総帥が言っていた人物の名が出てきた。変革者というのはあの謎の生命体によってこの世界に喚ばれた者達の事だろうが、現に炎王のステータスを視れば『変革をもたらす者』の称号はあった。しかし、シェリーには変革者の称号はない、あるのは破壊者の称号だ。

「ふふふ。愛し子も今はまだまだだけど、その内化けるわよ。それにシェリーちゃんの5人目の彼、エン君が自分の影響力を理解しているかわからないけど、エン君自ら鍛えているから、彼もまた鬼族のとは別の化け物の域に達しているわよ。まぁ、ユールクス程じゃないけどね。」

 楽しみね。そう言って女神ナディアは消えていった。女神ナディアが消えて行ったことで、誰かがため息を吐いた。神特有の気配に息苦しさを感じていたようだ。

「シェリー、ユールクスと言うのは何者かな?神が個人の名を覚えていることは、特別な者か何かなんだろ?」

 カイルが膝の上に乗せているシェリーに聞いてきた。このギラン共和国に来て早々に聞いた名であり、シェリーが奇妙な言葉で表現した人物でもある。その名が神であるナディアからも出てきたのだ。

「特別ですか。確かにそうかも知れませんが、これは話してもいいのですかね。シド総帥閣下。」

 シェリーはシド総帥に聞いてみるが、本人は頭を抱え込み『俺の一族ってあの筋肉うさぎ並におかしいのか?筋肉うさぎと同等扱いされるなんて。』とボソボソ言っている。そんなシド総帥の姿を見てシェリーは聞くのを諦めた。

「はぁ。今、本人に聞いてみましょう。その方が色々都合もいいですから。」

 また、シェリーはおかしなことを言い出した。ここでユールクス本人に聞こうとしているのだ。ここは傭兵団の本部であり、2階の会議室にいるのだ。この部屋にはユールクスという人物は居ないので聞くことはできないはず。しかし、シェリーは呼びかけた。何処に向けた呼びかけでも無く、目の前に居るように呼びかける。

「ユールクスさん、その辺りの説明はしても問題ないですか?」

 この光景はいつぞやかを思い出してしまう。

「構わない。ラースの番なのだろ?」

 何処からともなく低い男性の声が聞こえてきた。そして、女神ナディアがいた場所の床から緑の髪に金の目をした人が出てきた・・・いや、裾の長い衣服を身に纏っているが、その下から見えるのは二本の足ではなく、蛇のような胴と尾が見えていことから、人族でもなく獣人でもなくナーガと呼ばれるものだと推測される。

「シェリー。なんだか見たことある現れ方をされたんだけど、もしかしてヨーコさんと言った人と同じだったりするのか?」

 首だけの陽子が床から出てくるのを間近で見ていたグレイが尋ねる。陽子と同じとはユールクスもダンジョンマスターかと聞いてきたのだった。
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