番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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22章 獣人たちの騒がしい大祭

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「私に言われても困ります」

 シェリーは機嫌の悪いシド総帥に向かって言う。自分に言うのはお門違いだと。

「わかっている。わかっているが、それで誰が幸せになったんだ?」

 女神ナディアの神託で嫁いた第3夫人も番を亡くしたミゲルロディアも第2夫人を自死に追いやった第1夫人も誰も幸せにはなっていない。

「あの神託の意味は何だったんだ?」

 シド総帥の疑問は最もだ。神託の意味。愛子を贈るという神託の意味。それはただの女神ナディアが嫌っている白き神への牽制だ。
 神と言うものは身勝手なものだ。押し付けがましく神託を下し、祝福を与える。こちらの都合などお構いなしだ。

「ナディア様にとって意味があったのです」

 だから、シェリーはそのまま答える。自分たちには無価値なものでも神からすれば意味があったのだと。

「はぁー」

 そうため息を漏らして、シド総帥は項垂れた。

「クロードが白き神を嫌っている事が今になって理解できた。よく言っていた。神というものはクソだと。自分勝手だと。俺の人生は俺のものだと」

 あの黒狼が微妙に捻くれているのは、彼にとってどうしようもない事できっと振り回されたのだろう。

「それで、未だにミゲルロディアについて各国に報告されないのは魔人化してしまったからか?」

 シド総帥は顔を上げシェリーに問いかける。第3夫人からもたらされたミゲルロディアの番がいたという情報。冒険者であったはずのオーウィルディアが公都グリードに戻ってきた事。そして、ラースとしてこの場にいるシェリーがその事について口を開かない事からシド総帥は答えを導き出したようだ。

「それは私が答えるべきことではありません」

 しかし、シェリーは答えない。だが、シド総帥はそれが真実だと確信してる。

「まぁ良い。しかし、フィーには悪いことをしてしまった。良い選択肢だと思ったんだが。グレイ、フィーが落ち着いた頃に顔でも見せに行ってくれ。お前のことを心配していたからな」

「はい」

 いきなりの話を振られたグレイはビクリと肩を震わせ答えた。そして、シド総帥はオルクスの方を向いて

「そう言えば今年はどうするんだ?」

 と聞いてきた。主語のない質問だったが、オルクスには理解できたようで

「そんなもの行かないに決まっているだろ?代わりに総帥が行けばいい」

 その返答にシド総帥は呆れたような目をして言う。

「お前バカか。それだとルールが変わってしまうだろ。まだ不参加の方がましだ」

「爺様、何の話ですか」

 グレイが二人の話に割り込んできた。始めの方は仕事関係の話かと思われる感じだったが、シド総帥の最後の言葉がそれを否定していた。だから、グレイは二人の話を不思議に思い尋ねてみたのだ。

「ん?ああ祭りの話だ。明日からの本祭が始まるから、参加するか聞いてみたんだが、やっぱり駄目か」

 そう言いながらシド総帥はシェリーを見る。番であるシェリーと離れるのは嫌だと言われそうだと予想はしていたようだ。

「これだと今年は盛り上がりに欠けるかもしれんな」

 オルクス一人に大げさなと言いたいことだが、冒険者ギルドでの対応をみると、シド総帥の話はお大げさではないのだろう。

 しかし、シェリーは関係がないことなので、それはオルクスの好きにすればいいと思い、席を立とうとするが、ふと考え込みシド総帥に頼み事を言う。

「シド総帥閣下。フェクトス総統閣下に面会することは可能ですか?出来れば早い方がいいのですが」

「フェクトスにか?すぐには無理かもしれんぞ。何の用だ?」

 一国の代表者に会いたいというシェリーの言葉にシド総帥は首を捻りながら答える。

「この国でも問題になっている眠り病と青い薬の代償として連れ去られていく人々について、その問題が解決できそうだというご報告があります」

 シェリーの返答にシド総帥は立ち上がり、テーブル越しに前のめりになって聞いていた。

「なんだと!詳しく話せ!」

 ギラン共和国でもこの事は問題になっていたようだ。それはそうだろう。マルス帝国とは東側に国境が隣接した国なのだから、多大なる被害にあっていても、おかしくはない。

「そうですね。眠り病の薬の量産とばら撒きの算段が整ったとの報告ですね」

「ばら撒き?」

 シェリーの言動に引っかかりを感じたのか、言葉を疑問形で繰り返している。しかし、すぐにこの話の重大性に気づき、シド総帥は長椅子を飛び越え、背後にある窓をバンと勢いよく開け、そこから大声をだす。

「ネール。すぐにここまで来い!」

 下の訓練場にいると思われる人物に呼びかける。自分の息子である団長ではなく、長年、副団長を勤めている人物を呼び出したのだった。

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