314 / 894
23章 孤独な世界と絆された世界
303
しおりを挟む
「親方!持ってきました!」
奥の方から大男の鬼族のベンが布に包まれた剣を持ってやってきた。しかし、ベンは目の前光景に頭を捻る。
尊敬するドワーフの親方が炎王に向かってペコペコと頭を下げ続けている。珍しい光景だった。
「ベンさん。剣を彼らに渡してもらえますか?」
ファブロが赤べこのように首を振り続けており、役に立たなさそうなので、シェリーが代わりにベンに剣を渡すように指示をする。
その言葉にベンは、はっと我に返り、まずは一振りの剣を包まれた布から取り出し、リオンに手渡す。
「リオン殿下。渡された竜の鱗を元にして作られた刀になります。名を不知火。」
不知火と名を与えられた剣····いや、刀は青みがかった黒い鞘に収められ、受け取った刀をリオンが抜き、刀身を顕にすると一瞬刀身が無いのかと錯覚を覚えるほど、透明な刃だった。正確には、青みがかった透明な刃だった。
「親方、説明を·····」
と、ベンがファブロに視線を向けるが、そっと視線を外し、説明を始めた。
「え、えーと。不知火の刀身はいただいたヒュドラの鱗を使用しています。殿下を魔力を全力で込めても大丈夫な仕様になっております。鞘にはヒュドラの力を抑え込む為にべヒモスの牙を用いているので、毒素が漏れることはないと思うのですが、長時間鞘から抜いたままにはしないでください」
また、ファブロは怖ろしい刀を作ったようだ。放置すると毒素が漏れてくる刀って駄目じゃないのだろうか。しかし、リオンは別のところが気になったらしく、刀身を抜いたままベンに尋ねる。
「べヒモスとは何だ?」
そう尋ねられたベンも首を傾げ、シェリーを見る。
「自分も素材しか目にしては居ないので」
二人から視線を受けたシェリーは端的に答える。
「”ゾウ”です」
ゾウと言ってわかるのか言えば、カイル以外の4人のツガイとベンの頭の上にハテナが飛んでいる。
「シェリー、それは何かの名前かな?」
カイルが苦笑いを浮かべながら尋ねてくる。どうやら、この世界にゾウは存在していないらしい。時々ある世界の壁を感じてしまった。
カイルはシェリーがおかしな事を言うのは以前から知っていたので、シェリーの中での言葉だろうと解釈をしていた。しかし、ここではシェリーの言葉に理解を示す人物がいるのだ。
「ベヒモスはゾウの姿なのか?犀だという説もあったと思ったが?」
そう、炎王だった。
「ゾウです」
そのやり取りにカイルは内心苛立ちが沸き立つ。カイルの視線を受けた炎王も苦笑いを浮かべ、試し切りするのだろう?と言って建物の外に出ていった。
「シェリーは炎王ともアフィーリアとも仲がいいみたいだけど、出会ってどれぐらい経つのかな?」
カイルは苛立ちを押さえながらシェリーに聞いてみると、シェリーは今更何を言っているのかと言わんばかりの視線をカイルに向け答える。
「10年程ではないのでしょうか?」
適当である。しかし、シェリーがオリバーに言ってツガイに対する対応と、聖女として各地の浄化を始めたのは、ルークに付きっきりではなくなってからなので、それぐらいという感覚で答えている。
そう答えてシェリーも建物の外に向かう。その横ではオルクスがシェリーにベヒモスって強いのかと聞いていた。
「リオン。炎王とは何者だ?」
カイルはシェリーの後ろ姿を見ながら、リオンに質問をする。そのリオンは刀を鞘にしまいながら、ため息を吐いた。
「俺の方が知りたい。····が、スーウェンの方が何か知っているのじゃないのか?異端者とは何かと」
二人の視線を受けたスーウェンは困ったような顔をする。
「そう聞かれましても、世界に変革をもたらそうとする異端者としか教えられていないです。しかし、お二人には千年という間があるのに、その歳月を感じさせない程ですね」
そう、シェリーと炎王の間には千年という年月が開いている。この世界では、エルフ族が世界の王から降ろされた千年であり、モルテ王が狂った千年であり、ギラン共和国、シーラン王国が作られた千年であり、マルス帝国が軍国主義に走った千年でもある。
それ程の歳月があれば、失われていく記憶や物が存在している。現に人族が騎獣という物を乗りこなす事で、浮遊の魔術は失われていると言っていいだろう。
だが、シェリーと炎王の間には共通する話題があるのだ。そこをスーウェンに指摘され、カイルは瞠目する。
しかし、彼らの概念に異界というものは存在しない。だから、思い至らない。なぜ、シェリーが炎王が魂が異質だと言っているか。
それが異界の記憶を持って、この世界に存在しているは思い至らないのだ。
だが、シェリーと炎王は決してその事を他者に話すことはない。二人は知っているのだ。
この世界の在り方を否定したアリスがどの様な運命を辿ったかを。エルフの王として運命を定められた彼女が種族の改変を求めたがゆえに種族から命を狙われ、己の死の未来しか見えなくなってしまった彼女の慟哭を垣間見てしまったからだ。
奥の方から大男の鬼族のベンが布に包まれた剣を持ってやってきた。しかし、ベンは目の前光景に頭を捻る。
尊敬するドワーフの親方が炎王に向かってペコペコと頭を下げ続けている。珍しい光景だった。
「ベンさん。剣を彼らに渡してもらえますか?」
ファブロが赤べこのように首を振り続けており、役に立たなさそうなので、シェリーが代わりにベンに剣を渡すように指示をする。
その言葉にベンは、はっと我に返り、まずは一振りの剣を包まれた布から取り出し、リオンに手渡す。
「リオン殿下。渡された竜の鱗を元にして作られた刀になります。名を不知火。」
不知火と名を与えられた剣····いや、刀は青みがかった黒い鞘に収められ、受け取った刀をリオンが抜き、刀身を顕にすると一瞬刀身が無いのかと錯覚を覚えるほど、透明な刃だった。正確には、青みがかった透明な刃だった。
「親方、説明を·····」
と、ベンがファブロに視線を向けるが、そっと視線を外し、説明を始めた。
「え、えーと。不知火の刀身はいただいたヒュドラの鱗を使用しています。殿下を魔力を全力で込めても大丈夫な仕様になっております。鞘にはヒュドラの力を抑え込む為にべヒモスの牙を用いているので、毒素が漏れることはないと思うのですが、長時間鞘から抜いたままにはしないでください」
また、ファブロは怖ろしい刀を作ったようだ。放置すると毒素が漏れてくる刀って駄目じゃないのだろうか。しかし、リオンは別のところが気になったらしく、刀身を抜いたままベンに尋ねる。
「べヒモスとは何だ?」
そう尋ねられたベンも首を傾げ、シェリーを見る。
「自分も素材しか目にしては居ないので」
二人から視線を受けたシェリーは端的に答える。
「”ゾウ”です」
ゾウと言ってわかるのか言えば、カイル以外の4人のツガイとベンの頭の上にハテナが飛んでいる。
「シェリー、それは何かの名前かな?」
カイルが苦笑いを浮かべながら尋ねてくる。どうやら、この世界にゾウは存在していないらしい。時々ある世界の壁を感じてしまった。
カイルはシェリーがおかしな事を言うのは以前から知っていたので、シェリーの中での言葉だろうと解釈をしていた。しかし、ここではシェリーの言葉に理解を示す人物がいるのだ。
「ベヒモスはゾウの姿なのか?犀だという説もあったと思ったが?」
そう、炎王だった。
「ゾウです」
そのやり取りにカイルは内心苛立ちが沸き立つ。カイルの視線を受けた炎王も苦笑いを浮かべ、試し切りするのだろう?と言って建物の外に出ていった。
「シェリーは炎王ともアフィーリアとも仲がいいみたいだけど、出会ってどれぐらい経つのかな?」
カイルは苛立ちを押さえながらシェリーに聞いてみると、シェリーは今更何を言っているのかと言わんばかりの視線をカイルに向け答える。
「10年程ではないのでしょうか?」
適当である。しかし、シェリーがオリバーに言ってツガイに対する対応と、聖女として各地の浄化を始めたのは、ルークに付きっきりではなくなってからなので、それぐらいという感覚で答えている。
そう答えてシェリーも建物の外に向かう。その横ではオルクスがシェリーにベヒモスって強いのかと聞いていた。
「リオン。炎王とは何者だ?」
カイルはシェリーの後ろ姿を見ながら、リオンに質問をする。そのリオンは刀を鞘にしまいながら、ため息を吐いた。
「俺の方が知りたい。····が、スーウェンの方が何か知っているのじゃないのか?異端者とは何かと」
二人の視線を受けたスーウェンは困ったような顔をする。
「そう聞かれましても、世界に変革をもたらそうとする異端者としか教えられていないです。しかし、お二人には千年という間があるのに、その歳月を感じさせない程ですね」
そう、シェリーと炎王の間には千年という年月が開いている。この世界では、エルフ族が世界の王から降ろされた千年であり、モルテ王が狂った千年であり、ギラン共和国、シーラン王国が作られた千年であり、マルス帝国が軍国主義に走った千年でもある。
それ程の歳月があれば、失われていく記憶や物が存在している。現に人族が騎獣という物を乗りこなす事で、浮遊の魔術は失われていると言っていいだろう。
だが、シェリーと炎王の間には共通する話題があるのだ。そこをスーウェンに指摘され、カイルは瞠目する。
しかし、彼らの概念に異界というものは存在しない。だから、思い至らない。なぜ、シェリーが炎王が魂が異質だと言っているか。
それが異界の記憶を持って、この世界に存在しているは思い至らないのだ。
だが、シェリーと炎王は決してその事を他者に話すことはない。二人は知っているのだ。
この世界の在り方を否定したアリスがどの様な運命を辿ったかを。エルフの王として運命を定められた彼女が種族の改変を求めたがゆえに種族から命を狙われ、己の死の未来しか見えなくなってしまった彼女の慟哭を垣間見てしまったからだ。
3
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、私は異世界で――
恐怖と絶望の象徴・魔王の娘として生まれていた。
この世界で魔王の血を引く者は、恐れられ、忌み嫌われる存在。
孤独な運命を覚悟していたはずなのに、なぜか周囲の反応がおかしい。
父である魔王は超美形で娘に激甘。
魔族たちは命がけで守ってくる。
さらに人間側の勇者や王子、騎士までもが、次々と私に惹かれていき――。
どうやら私は、世界一の美貌を持って生まれてしまったらしい。
恐れられるはずだった魔王の娘・セラフィナ・ノワールの人生は、
気づけば溺愛と恋愛フラグだらけ。
これは、
魔王の血と世界一の美貌を持つ少女が、
数多の想いの中から“運命の恋”を選ぶ、
甘くて危険な異世界恋愛ファンタジー。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる