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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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「はぁ····」
「はぁ···」
先程からシェリーのため息が絶えない。冬期休暇の間は可愛がっている弟と一緒に過ごせると思っていたのに、今の自分はというと騎獣である豹羽のアマネに乗って南に向かっている。横を見れば白い飛狼に乗ったカイルがいる。
これが現実かというため息だ。
そう、シェリーはギルドの依頼を受けてモルディールに向かっているのだった。
ルークを送り出した後、意気消沈で沈み込んでいるシェリーにカイルが言った。
「気晴らしにギルドの依頼でも受けに行かない?そうすれば一週間なんてあっという間だよ?」
と。そして、シェリーはニールが計画した計らいに、まんまとはまってしまったのだ。
モルディールの冒険者ギルド支部がどうなっているか確認して欲しいという、子供のお使いのような依頼を受けたのだ。
辺境都市モルディールはヴィーリス国との国境に接する辺境都市でもあるが、モルテ国との国境にも接している。そう、3カ国の国境が混じるところだ。しかし、そこには侵略者に対する防衛機能は施されていない。
モルテ国は言わずもがな。狂王が支配する者達が、死の神と闇の神の加護が施された国の外に領土を広げようとは考えない。
そして、ヴィーリス国は国民全てがある意味特殊な者達であった。ここでは詳しくは語らないが、ヴィーリス国もまた領土を広げようと考えを持たない国であった。
だから、防衛という意味では穴であると言うべきだろう。
上空で騎獣で移動しながら、ため息を吐き続けているシェリーの視界に異質な者が映った。騎獣が飛ぶ高度にだ。
「あれ?シェリー。ヨーコさんじゃない?」
カイルが進行方向のある一点を指して言った。王都メイルーンから南に進むこと50キロメル。草原が広がる一角に突如として、要塞都市が現れた。
四方2キロメルが高い石壁で囲まれ、上空から見ると迷路のように道が入り組んでおり、所々に高い建物も見える。その高い塔というべき建物の一番上に、黒髪の人物が立っていた。
そう、この要塞都市に見えるところが陽子の愚者の常闇ダンジョンの入り口なのだ。
黒髪の人物は高い塔の上で手を大きく振っている。ここにいることをアピールしているが、相変わらずTシャツにジーンズズボン姿は、この要塞都市の風景の中では異質でしかない。
「ササっち!寄り道してもらって悪いね」
高い塔の上でシェリーに話しかける陽子。そのシェリーは陽子の言葉を騎獣に乗ったまま空中で止まって聞いている。
「本当に番って、そんなにいいものか、陽子さんにはわからないよ」
陽子は苦笑いを浮かべながらそんなことを言う。その時、陽子の背後の塔が崩れ落ちた。
「あ、おしいな」
「陽子さん。いったい何をしているのですか?」
実はギルドからお使いのような誰でもできそうな依頼を受けた後、一旦家に戻ったシェリーに陽子がお願いを言ってきた。
「ササっち。預かっている4人がササっちに会わせろってうるさいんだよ。一週間ぐらいでぐちぐち言ってくるんだよ。流石の陽子さんもイライラしてきたから、ちょっとダンジョンに寄ってくれない?」
と、突然いつものように現れた陽子が言ったのだ。
それに対しシェリーはいつものように淡々と答える。
「放置しておけばいいのでは?」
「えー!陽子さんの頭に十円ハゲができてもいいの?本当にうるさいんだよ。特に豹の兄ちゃん」
オルクスがシェリーに会いたいとグチグチ陽子に言っているようだ。
ちょっとだけでいいんだよという陽子の懇願にシェリーは仕方がなくうなずいた。別にツガイの彼らに会う会わないではなく。友達の陽子の願いをシェリーは叶えることにしたのだ。
そして、モルディールに行く途中でダンジョンの中には入らずに外側でならいいと了承し、今に至った。
「何をしているかって?今は鬼ごっこ」
鬼ごっこは普通、塔の破壊はされない。
「ササっちに会いたいなら、中央の塔にくれば会えるよって言って、魔導師様作、外に出せないモノたちと鬼ごっこ中なんだよ」
陽子はシェリーという餌で彼らを釣ったようだ。今ここで、シェリーに会えようが会わまいが陽子に取ってどうでもいいことで、彼らを鍛えることが陽子にとって最優先だからだ。
陽子の言葉にシェリーは眼下に視線を降ろし、直ぐに陽子に視線を戻す。
「陽子さん、鬼ごっこというより、廃棄したいだけでは?」
「え?ソンナコトナイヨー」
陽子は片言で話しながら目を泳がしている。シェリーの隣で同じように騎獣に乗っているカイルも眼下に視線を向け首を傾げている。
「ヨーコさんのダンジョンでは見かけない魔物ばかりだな」
「それはそうでしょう。普段は裏通路のゴミ溜めにいる偶発的産物ですから」
シェリーは呆れたように言う。今、要塞都市のような迷路の中に解き放たれている魔物は全てオリバーが創り上げたモノたちだった。それもSクラスの災害級と言っていい魔物がうろついている。
とても恐ろしいダンジョンが出来上がっていた。
「はぁ···」
先程からシェリーのため息が絶えない。冬期休暇の間は可愛がっている弟と一緒に過ごせると思っていたのに、今の自分はというと騎獣である豹羽のアマネに乗って南に向かっている。横を見れば白い飛狼に乗ったカイルがいる。
これが現実かというため息だ。
そう、シェリーはギルドの依頼を受けてモルディールに向かっているのだった。
ルークを送り出した後、意気消沈で沈み込んでいるシェリーにカイルが言った。
「気晴らしにギルドの依頼でも受けに行かない?そうすれば一週間なんてあっという間だよ?」
と。そして、シェリーはニールが計画した計らいに、まんまとはまってしまったのだ。
モルディールの冒険者ギルド支部がどうなっているか確認して欲しいという、子供のお使いのような依頼を受けたのだ。
辺境都市モルディールはヴィーリス国との国境に接する辺境都市でもあるが、モルテ国との国境にも接している。そう、3カ国の国境が混じるところだ。しかし、そこには侵略者に対する防衛機能は施されていない。
モルテ国は言わずもがな。狂王が支配する者達が、死の神と闇の神の加護が施された国の外に領土を広げようとは考えない。
そして、ヴィーリス国は国民全てがある意味特殊な者達であった。ここでは詳しくは語らないが、ヴィーリス国もまた領土を広げようと考えを持たない国であった。
だから、防衛という意味では穴であると言うべきだろう。
上空で騎獣で移動しながら、ため息を吐き続けているシェリーの視界に異質な者が映った。騎獣が飛ぶ高度にだ。
「あれ?シェリー。ヨーコさんじゃない?」
カイルが進行方向のある一点を指して言った。王都メイルーンから南に進むこと50キロメル。草原が広がる一角に突如として、要塞都市が現れた。
四方2キロメルが高い石壁で囲まれ、上空から見ると迷路のように道が入り組んでおり、所々に高い建物も見える。その高い塔というべき建物の一番上に、黒髪の人物が立っていた。
そう、この要塞都市に見えるところが陽子の愚者の常闇ダンジョンの入り口なのだ。
黒髪の人物は高い塔の上で手を大きく振っている。ここにいることをアピールしているが、相変わらずTシャツにジーンズズボン姿は、この要塞都市の風景の中では異質でしかない。
「ササっち!寄り道してもらって悪いね」
高い塔の上でシェリーに話しかける陽子。そのシェリーは陽子の言葉を騎獣に乗ったまま空中で止まって聞いている。
「本当に番って、そんなにいいものか、陽子さんにはわからないよ」
陽子は苦笑いを浮かべながらそんなことを言う。その時、陽子の背後の塔が崩れ落ちた。
「あ、おしいな」
「陽子さん。いったい何をしているのですか?」
実はギルドからお使いのような誰でもできそうな依頼を受けた後、一旦家に戻ったシェリーに陽子がお願いを言ってきた。
「ササっち。預かっている4人がササっちに会わせろってうるさいんだよ。一週間ぐらいでぐちぐち言ってくるんだよ。流石の陽子さんもイライラしてきたから、ちょっとダンジョンに寄ってくれない?」
と、突然いつものように現れた陽子が言ったのだ。
それに対しシェリーはいつものように淡々と答える。
「放置しておけばいいのでは?」
「えー!陽子さんの頭に十円ハゲができてもいいの?本当にうるさいんだよ。特に豹の兄ちゃん」
オルクスがシェリーに会いたいとグチグチ陽子に言っているようだ。
ちょっとだけでいいんだよという陽子の懇願にシェリーは仕方がなくうなずいた。別にツガイの彼らに会う会わないではなく。友達の陽子の願いをシェリーは叶えることにしたのだ。
そして、モルディールに行く途中でダンジョンの中には入らずに外側でならいいと了承し、今に至った。
「何をしているかって?今は鬼ごっこ」
鬼ごっこは普通、塔の破壊はされない。
「ササっちに会いたいなら、中央の塔にくれば会えるよって言って、魔導師様作、外に出せないモノたちと鬼ごっこ中なんだよ」
陽子はシェリーという餌で彼らを釣ったようだ。今ここで、シェリーに会えようが会わまいが陽子に取ってどうでもいいことで、彼らを鍛えることが陽子にとって最優先だからだ。
陽子の言葉にシェリーは眼下に視線を降ろし、直ぐに陽子に視線を戻す。
「陽子さん、鬼ごっこというより、廃棄したいだけでは?」
「え?ソンナコトナイヨー」
陽子は片言で話しながら目を泳がしている。シェリーの隣で同じように騎獣に乗っているカイルも眼下に視線を向け首を傾げている。
「ヨーコさんのダンジョンでは見かけない魔物ばかりだな」
「それはそうでしょう。普段は裏通路のゴミ溜めにいる偶発的産物ですから」
シェリーは呆れたように言う。今、要塞都市のような迷路の中に解き放たれている魔物は全てオリバーが創り上げたモノたちだった。それもSクラスの災害級と言っていい魔物がうろついている。
とても恐ろしいダンジョンが出来上がっていた。
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