番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
574 / 894
26章 建国祭

561

しおりを挟む
「ルーちゃん。忘れ物ない?何かあれば、絶対に連絡をしてくるのよ」

 シェリーは玄関先でルークの手を握って、見送っているのか引き止めているのかわからない状況になっている。

 今日は年が明けてルークが騎士養成学園に戻る日だ。明日には新学期が始まるのだが、シェリーが引き止めに引き止め、ギリギリの前日になってしまった。

「ないよ。姉さん、行ってくるよ」

 シェリーの手をそっとのけ、ルークは踵を返して背を向けて行ってしまう。シェリーはその姿を涙目で見送っていた。まるで恋人に別れを切り出され、置いていかれているかのような雰囲気をシェリーはまとってはいるが、ただの見送りにすぎない。

 そして、ルークの姿が無くなるまで玄関先で見送ったシェリーは、1つため息を吐くとスッといつも通りの無表情に戻り、踵を返して屋敷の中に入っていく。
 玄関ホールにはシェリーが戻ってくるのを待ち構えていたように、5人の姿があった。

「シェリー、今日はどうするの?」

 カイルがニコニコと笑顔で聞いてきた。それに対し、シェリーは無表情のまま淡々と答える。

「ニールさんからいい加減にギルドに顔を出すように言われ続けているので、冒険者ギルドに寄ってから、第3師団に行きます」

「第3師団?何をしにいくんだ?」

 第3師団との取引を何も知らないオルクスが聞いてきた。

「第0師団の再編ですよ」

 そう言ってシェリーは足を進める。第0師団の再編。これは対マルス帝国の布石だ。時間はかかってしまったが、あれからユーフィアが永久駆動の魔力発生装置を完成させ、第3師団の人員を半分引き抜ける状態になったのだ。

「使える人員は最大限に使わないといけません」

 一国を相手にするのであれば、使える人員はどれほどあっても足りないぐらいだ。しかし、これはただのシーラン王国ができる対マルス帝国対策であって、元々は黒狼クロードが采配していたことの真似事にすぎない。
 それにこの根底にあるのが、ルークが平和に幸せに暮らせることのみが主幹におかれているため、国土防衛のことは何も触れていない。王都を守る。ただそれだけだ。

 そのルークと言えば、シェリーの想いも理解することもなく、拗ねらせたまま学園に戻っていったのだ。
 送り出すシェリーの態度と、そっけないルークの態度から、それは見て取れたと思うが、ルークがシェリーの真意に気がつくのには時間がかかりそうであった。



 そして、朝の時間帯には珍しく、がらんどうとした冒険者ギルドにシェリーは来ていた。

「なぜ、年明け早々に来るんだ?」

 眉間にシワを寄せ、紫煙を吐き出しながら、ニールはシェリーに文句を言う。冒険者ギルドに顔を出すように催促していたのはニールのはずだったのにだ。

「年明け早々に仕事をしているニールさんに言われたくありませんが?」

 文句を言われたシェリーはニールにいつも通り淡々言葉を返す。そもそもこの時期は年が明けたばかりで、人々は家で過ごすのが当たり前なのだ。だから、冒険者といえども、依頼を受けに来る者たちなど皆無に等しい。
 そして、年が明ければ、数日に渡って建国祭が催される。そのため、人々の心は浮足立ち、気もそぞろ。まだ建国祭ではないが、国民の心は祭り一色だ。

 クソ真面目に仕事などしているのは、この騒ぎに乗じて事件が起こるかもしれないと気を張っている、門兵の第5師団と警邏を担う第6師団だけだろう。あとは人々の生活の根底を担う第3師団だ。

 だから、ニールが職員が誰も居ない冒険者ギルドで働いている事自体がおかしい。はっきり言って、冒険者ギルドを年明けから祭りが終わるまで閉めていても問題がないと言っても過言ではないだろう。

 だが、敢えてシェリーはこの時期を選んて冒険者ギルドを尋ねた。ニールなら必ず仕事をしているだろうと。

「で、いったい何の用ですか?」

 何度も催促するように冒険者ギルドに来るように言っていたニールだ。それなりに用があるのだろう。

「一つは年末に起こった『愚者の常闇』ダンジョンで見慣れない魔物が大量発生の件だ。あれ、いったい何をしたんだ?」

 まるでシェリーが何かをしたと確信を持ってニールは言っている。それに対しシェリーは普通に答えた。

「何もしていませんが?」

 そう、シェリー・・・・は何もしていない。あれは面倒だとオリバーが黒い鎧を繰り出しただけで、シェリー的にはオリバーに動くように言ったにすぎない。

「そんなわけないだろう?見たことのない鎧を着た者が魔物を駆逐していたと報告をうけたが、あれは人としての動きではなかったと言われた。何をした?」

 人として有り得ない行動をとった鎧のモノ。人としては膨大な力を持ったシェリーならその鎧のモノと同一人物だとしてもありえるだろうというニールの考えだった。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、私は異世界で―― 恐怖と絶望の象徴・魔王の娘として生まれていた。 この世界で魔王の血を引く者は、恐れられ、忌み嫌われる存在。 孤独な運命を覚悟していたはずなのに、なぜか周囲の反応がおかしい。 父である魔王は超美形で娘に激甘。 魔族たちは命がけで守ってくる。 さらに人間側の勇者や王子、騎士までもが、次々と私に惹かれていき――。 どうやら私は、世界一の美貌を持って生まれてしまったらしい。 恐れられるはずだった魔王の娘・セラフィナ・ノワールの人生は、 気づけば溺愛と恋愛フラグだらけ。 これは、 魔王の血と世界一の美貌を持つ少女が、 数多の想いの中から“運命の恋”を選ぶ、 甘くて危険な異世界恋愛ファンタジー。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

処理中です...