番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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27章 魔人と神人

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 言われてみれば、そうなのかもしれないが、仮説が強引なような気もする。しかし、シェリーは足の内側のところを三人に見せつけながら、大胆な仮説を言葉にした。

「ここに小さな穴が並んでいますので、これが空を飛ぶ推進機構なのでしょう」

「へー。こんなんで空が飛べるんだぁ」

 ラフテリアはいつの間にかロビンの腕から降りて、シェリーが持っている、魔導兵の一部を観察している。

「はぁ、動力部分がどうなっているのか気になりますが、この外装をこじ開けて見る気は無くなりました」

 本当であれば、どのように動いているのか気にはなっているが、見てしまったものを思い起こすとシェリーはこの魔導兵を解体する気が無くなっていた。

「だったら、私が見てあげる」

 ラフテリアはシェリーが足を取った魔導兵の背中に手を突っ込んで、外装を引き剥がした。その中身は異様と言ってよかった。

「はぁ」

 止める暇もなく、背後の外装を破壊したラフテリアにシェリーはため息を吐く。
 そして、そのラフテリアといえば、再びロビンに抱えられ、ロビンの肩に顔を埋めて嫌々と首を横に振っている。

「ここまでとは思いませんでしたが、シュロスという人の狂気が垣間見えますね」

「シェリー……これは……」

 シェリーの手を掴んでいることで、必然的に近くでそれを見ることになったカイルの顔は引きつっていた。

「アーク族の骨と神経で成り立っていますが、普通は腐っているだろう心臓が残っていることがおかしいですね。……それから」

 シェリーは壊れた外装の中の説明をしているが、その中にはシェリーにとって見慣れたモノが存在していた。

「悪心の塊」

 外装を維持するための人骨に、稼働する電気信号を伝える神経。そして、謎の左胸にある心臓に見える臓器。それを肉体のように、筋肉のように、固定する存在として、黒いモヤが詰まっている。
 そのモヤの中には複数人の人の顔が浮かび上がっている。まさにシェリーが浄化すべき存在だ。

「気味が悪いね。人の顔が浮かび上がるって」

 カイルのその言葉に、シェリーは思わず仰ぎ見る。今までカイルはシェリーが黒いモヤと称するモノは見えなかったはずだ。

「カイルさん。見えているのですか?」

「見えているね」

 その事にシェリーは疑問を覚えた。今まで見えなかった黒いモヤというべき人の悪心の塊が突如として見えることなんて、ありえるのだろうか。“つがい”という絆ができたから?いや、番の儀はただ生きる時を同じにするだけのはずで、能力の付与という効力は無かったはずだ。

 そう結論づけたシェリーは、背中の外装が剥がれた魔導兵に触れてみる。

 すると、心臓と思われる臓器がドクンと振動した。そして、連続して鼓動を始める。その鼓動に合わせるように、神経と思われる枝状に分かれた構造物が、呼応するように光りだす。

 神経が伝達信号を伝えるように末端に光を送れば送るほど、黒いモヤは薄くなり、半透明な雲のようなものが魔導兵の中に埋め尽くされた。

 と、突然その魔導兵の個体が動き出す……が、カイルが魔導兵の頭を大剣で跳ね飛ばした。

「この半透明のモヤは何でしょう?」

 カイルが頭部を切り離したことで、再び動かなくなくなった魔導兵の中身がシェリーは気になった。恐らくこれの所為で、カイルにも黒いモヤとして目に映すことができたのだと。

 シェリーはその雲のような半透明のモヤに手で触れた。

「シェリー!」

 そのシェリーの大胆な行動に、カイルは慌ててシェリーの手を半透明のモヤから引き抜く。
 引き抜いた瞬間、シェリーは膝から崩れ落ち、右手で目を覆うように額を押さえた。

「これは?」
「シェリー?何かあったのか?」

 カイルはシェリーに何かを引き起こした魔導兵を大剣でバラバラに破壊し、シェリーを抱き起こす。

「そう言うことですか」

 心配するカイルをよそに、シェリーは一人納得していた。そして、ロビンの方にシェリーは視線を向ける。

「大体のことはわかったので、ここにある全てを浄化していいですか?」

 最初は渋っていたロビンだが、外装が剥がれた中身を見て、その考えは変わったらしく、頷いてシェリーの言葉に答えた。

「僕たちはアレを受け入れた身だけどね。流石に意思がない体にアレが入っているかと思うと、いつおかしな動きをするかわからないからね」

「恐らく、これを作ったシュロスという人もそれを懸念したのでしょう。複数の心が存在すると機能停止するようにしていたと思います」

 シェリーはあの雲のようなモヤに手を入れたときに何かを見たのだろう。だからこそ、全て浄化するべきだという考えに至ったのだった。


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