番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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27章 魔人と神人

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「どうしたのかな?」

 ラフテリアがエリザベートに、白き神がどんなにラフテリアのことを想っていてくれたのかという話を言い続けている。その姿を見ていたロビンが、シェリーの方に視線だけを向けた。

 エリザベートはというと、ラフテリアの話にうんざりしているようだった。恐らく彼らが共に過ごしていた時代にはよく見られた光景だったのだろう。

 誰も彼もがどことなく、笑みを浮かべている。うんざりしているエリザベートも、ため息を吐きながら、相変わらずだという感じで苦笑いを浮かべているのだ。

 彼らが共に生きた歳月は、それ以前に確立していた人生よりも、果てしなく長かった。エリザベートが死ぬ三千年間という歳月を彼らは同じ時を生きていたのだ。

「モルテ王がロビン様の身体を得た経緯を知りたいそうです」

 シェリーがロビンに言うと、ロビンは首を傾げながら、シェリーたちがいるところに来て、先程までエリザベートが腰を下ろしていたソファーに座った。

「え? シェリーちゃんから説明してくれていいよ」
「ロビン様からお願いします」

 シェリーの頑なに説明したくないというオーラに、ロビンは困惑の色を表情に見せたが、何も言わずモルテ王に視線を向けた。

「久し振りだね。千年と五百年ぶりかな?」

 久し振りという歳月を通り越しているような言葉をロビンは口にした。しかし、永遠に近い時を生きている彼らからすれば千年など、つい先日のような感覚なのかもしれない。

「久しいな。エリザベートの国葬の時以来か?」

 エリザベートの死。それが彼らを疎遠にしていたものなのだろう。そして、エリザベートという存在が居てこそ、再び会うことになった。

「え?」

 二人の言葉にシェリーの疑問の声が割り込んでくる。

 シェリーは、しまったという感じで、両手で口を押さえているものの、モルテ王とロビンからの視線が突き刺さる。何もおかしな話はしていないと。

「すみません」

 ロビンに説明するように言ったシェリーが、会話を止めてしまったのだ。ここは素直にシェリーは謝る。

「どうしたのかな?」

 ロビンは何かおかしなことでもあったのかとシェリーに尋ねる。

「あの……今更な質問なのですが、モルテ王はオスクリダー様とモルテ様の加護の地から出ても問題ないということなのですか?」

 今更な質問だった。ここは大陸が違う、ラフテリア大陸だ。シェリーたちが住まう大陸ではない。

 闇の神オスクリダー神と死の神モルテ神は、元々カウサ神教国であったモルテ国の領土に闇の祝福と死しても生きるという祝福を与えたのだ。
 二柱から創られた存在が、その地から離れても大丈夫なのか。そもそもモルテ王がどこかの国に赴いたという記録は残ってはいないのだ。もっともな疑問だった。

「別に問題はない。強いていうなら、力の制御が弱まることぐらいか」

 力の制御。それは問題になるのではないのだろうか。

 しかし、モルテ王が国から出なかったのは、ここ千年間は仕方がなかったというのを除いて、公式に国外に出る必要がなかったということだ。
 ただ個人的にエリザベートを訪ねにいくという感じで、自由に国外に出ていたのだろう。

「おかしなことを聞いてしまって、すみません。ロビン様。続きをどうぞ」

 変なことを聞いてしまったと、再び謝罪の言葉を口にしたシェリーに、ロビンはにこにこと笑みを浮かべて言った。

「おかしくはないよ。普通じゃないのは僕たちの方だからね。普通に人がいる街なんて行けないからね。モルテ王なんてそこにいるだけで、人は呼吸困難になるだろうからね」

 呼吸困難。それはまとっている気配が異質なのだ。モルテ神とオスクリダー神の神気が混じった神人。

 そこに存在しているだけで、息もままならなくなる。

「人のことは言えないだろう」

 ロビンの言葉に反論の言葉が返ってきた。

「あのラフテリアの悪口が聞こえただけで、威圧して人を殺そうとしていたヤツに言われたくない」
「それは当たり前だよね」

 いや、ロビンがブチ切れた話だった。首だけのロビンは何かの拍子で聞いてしまった。ラフテリアのことを悪く言っている言葉を。
 動けぬロビンは、それに対して殺気だけで、人を殺そうとしたという話だ。本人のロビンはというと、当然のことだとはっきりと言う。

「モルテ王。君もそうだろう?マリートゥヴァが悪く言われれば、面白くないだろう?」
「それは当たり前だ」

 ロビンとモルテ王は似ていた。
 つがいが存在していたが、一度死に世界の楔から解き放たれ、この現世に戻ってきた者たちだ。
 ただ、ロビンとラフテリアの関係は、彼らの姿かたちが変わってしまっても、互いが互いを想い、共に生きてきた。だが、モルテ王とマリートゥヴァはそうではなかった。

 モルテ王はモルテ国の王として存在し、マリートゥヴァは己たちが起こした過ちの贖罪のために、ラフテリアに仕えていた。彼らは共に生きることを選ばなかったのだ。

「マリーは俺にとって大切な人だからな」

 大切な人? 確かに王太子とマリートゥヴァはつがいであった。だが、それは世界の楔から解き放たれても想いは変わらなかったということだろうか。

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