番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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27章 魔人と神人

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 シェリーはシュロスのことを無視をして、再びモルテ王に向って尋ねる。

「命というものを考えなければ、先程言ったことは、この城にある転移門を改良すればいけますか?」
「……できる。が、本当にそんなことをやってしまえば、倫理から逸脱してしまう。それこそ、ラフテリアのように生きながらにして世界の理から外れる存在になるだろう」

 生きながら世界の理に外れる。
 確かにモルテ王もロビンも三千年間生きた大魔女も一度、死というものに囚われ、再び生を与えられたものだ。だが始まりの魔人であるラフテリアは違う。彼女は生きながら狂い、人という理から外れていった。
 それをモルテ王は生きながら世界に見放されたかのように言ったのだ。

 ラフテリアが敬愛してやまない白き神から見放されたかのように……いや、モルテ王自身が白き神から見放されたと思っているから、そのような言葉が出てきたのだろう。

「しかし、マルス帝国か。俺の記憶の中では、ただの烏合の衆という感じだったのだがな。レガートス、その辺りはどうなんだ?」

 モルテ王の記憶は千年前のことだ。それからときは進み、世界は変化し変革を起こしている。
 そう、変革者の手によって世界は徐々に変わってきているのだ。

 そのモルテ王の記憶の誤差を埋めるのも他国とのつながりを維持してきたレガートスの役目なのだろう。
 少し考えるような素振りをレガートスは見せている。

「少し前までは一貴族が裏で牛耳っている感じでしたが、ここ最近……二十年でしょうか?十年でしょうか?そこを崩そうとしている動きが見られますね」

 レガートスの感覚では十年二十年は最近と表現するようだ。死がない種族に変化した者たちにとっては、時間間隔は無いに等しいのかもしれない。

「例えば何だ?」
「裏で軍以外の組織が作られていますね。探らせると人体実験のようなことをしていましたが、詳細はわかりませんでした」

 人体実験と聞いてシェリーは目を細める。何かの儀式のような跡があった場所を思い出したのだ。
 だが、それは神の力によって新たな種族に変化するための実験だったはずだ。これは白き神からの神言があったため、間違いはない。モルテ王を視てみるといいと。

 そうなると後は、人を次元の悪魔に変化させる実験だ。今はなくなったとユールクスから連絡を受けたが、マルス帝国から次々とギラン共和国を侵略するかのように送られてきた次元の悪魔だ。

 ただ、これも予想である。
 予想ではあるが、次元の悪魔というのは先程襲撃されたように次元の狭間から顕れることが常識とされてきた。

 だが、マルス帝国から来たと思われる次元の悪魔は地を歩いて移動していた。ここに何か違いがあるのだろうか。

「すみません。先程言っていた『レベリオンの血』のことを聞いていいですか?恐らく、その人体実験に関わっていると思うのです」

 これはシェリーの予想だ。レガートスが言うようにサウザール公爵がマルス帝国を牛耳っているのは事実だ。
 オリバーが皇帝の首をすげ替えたと言っていたように、実質皇帝より立場が上なのだろう。

 だが、ここに来てサウザール公爵を今の地位から落とそうとしている動きがあると予想できた。

 そこに『ハルナ アキオ』が作った魔道具や次元の悪魔が関係すると思われる。
そう、あまりにもサウザール公爵がやったにしては、拙すぎると。

「『レベリオン』というのは太古の昔に、白き神から神ならざる者とされた神の名だ」

 モルテ王の口からとんでもないことが出てきた。神として存在しない神レベリオン。

 ただ、この言葉にシェリーは首を傾げる。暖簾に腕押しの白き神らしくない言葉だと。たとえ世界の未来に不穏な未来しかなくても、それが世界のたどる未来であるのなら受け入れようというのが白き神だ。

 神殺しをしたシュロスを赦し、一つの大陸の人々を殺し尽くし、それが浄化だと言い張るラフテリアを赦し、大陸の六分の一を焦土化したナオフミを赦したのだ。

 白き神らしくないとシェリーは感じた。

「複数の国を支配下に収めれば、その国と同じぐらい崇める神が違う。その中にレベリオンという神を崇める部族があった」

 確かにカウサ神教国は白き神を崇めるために、神兵という集団が神の名のもとに他国を蹂躙してきた歴史がある。その中にレベリオンという神を崇める種族がいたようだ。

「レグスと名乗る種族で、全身の皮膚が黒く目だけが異様に赤い印象的だったと書物にはあった。その者たちは神の生き血を飲んだ者を戦士と呼び、皮膚に赤い血管が浮き出て首がない殺戮者に変貌したそうだ。なんとかその種族を絶滅させ、神の血といわれる黒い水は白き神の力によって浄化したとあった……なんだ?その顔は?」

 シェリーは白き神の力によって浄化したという言葉を、そんなことはしないだろうという死んだ魚の目をして聞いていた。
 あの神がわざわざ浄化なんてしないと。

「これは古い書物に書かれていたことだ。多少脚色されているだろうと思っていたが、今日のアレをみて、本当のことだったとわかった。あんなモノを相手にしたのなら、黒を排除する思想になっても仕方がないだろう」

 モルテ王が語ったことをどこまで信用していいのかはわからないが、首がない巨大な存在に人が変化したのだ。そして異様に浮き出た赤い血管が這うように漆黒の皮膚をまとっている。
 そんな危険な黒を持つ存在は排除しなければならない。これがカウサ神教国が黒を排除するきっかけだった。

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