神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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40 愚かな母娘(領主夫人視点あり)

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 沼安家には、姫花と花蓮の荷物とともに夫が現れ、離縁を申し出た。応じなければ、今回と今後の損害を請求すると告げられる。裕福でない沼安家には到底払えず、離縁に応じるしかなかった。

 さらに問題となったのが、姫花の実家宛てに届いた上中位・鷹野家からの抗議文だった。内容を要約すると茶会での数々の非常識な振る舞。こんな者たちをいつまで野放しにしておくつもりか。誠実に対応せよ。というものだった。

 正直、この親子の面倒を見るのは限界だった。本来なら修道院に入れるところだが、持参金がなければ受け入れられない。そもそも払えるはずもなく、払えたとしても通常の修道院に入れるのは鷹野家を敵に回すに等しい。

 そこで選ばれたのが「聖励修道院」である。表向きは「勤労と祈りを通して更生を目指す施設」とされるが、実際には素行不良や厄介者ばかりが集められる場所で、過酷な労働を強いられることで知られていた。姫花も花蓮も、そこへ入れるしかなかった。「野放しにするな」とはそういう意味なのだ。

 花蓮はまだ子どもだから可哀想だという声もあがりそうだが、母に似て問題を起こし、引き取れば被害が及ぶのは目に見えていた。二人は怒り狂って抵抗したが、物置部屋に閉じ込められ、迎えを待たされた。やがて屈強な修道院の職員が到着し、母娘を引き立てて馬車に乗せた。行き先は、もちろん「聖励修道院」である。

 これで矛を収めてもらえるのか――沼安家の面々は、不安に苛まれていた。


(岩城家夫人視点)

 片付いたわね。
 こちらの思い通りに手のひらで踊ってくれて、よかったわ。

 今回準備していたのは三つ。
 一つ目は、彼女の夫の商会がこの辺りで幅を利かせており、神守といえどここから買えなければ困る、という話を通いの家政婦にそれとなく伝えさせたこと。彼女は愚か者たちの世話に不満を抱えて辞めようとしていたので、少し金を渡して引き留め、協力させた。

 二つ目は、席を家格順に配置し、下小位の谷口夫人に、あえて平民を気遣うような態度を取らせたこと。

 三つ目は、かつての取り巻きたちに平民扱いをさせたこと。彼女らから相当に嫌われていたようで、危険を告げてもむしろ進んで引き受けた。万一に備え、武術に長けた谷口夫人を側につけておいたが。

 準備は整えていたが、彼女が神守に対し、平民らしく常識的に振る舞っていれば、何事もなかったはず。結末は、彼女自身が招いたもの。

 娘の花蓮については、いろいろ樹が計画していたが、こちらもほとんど自滅だった。

 愚かな母娘が透子様ご一家にご迷惑をかけたことには、腸が煮えくり返る思いだが――聖励修道院という結末に、透子様はご満足いただけたかしら。
 そうそう、聖励修道院には、特別に目をかけてくださるようお願いしておかなきゃね。
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