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53 結界の可能性
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私たちはさっそく移動を開始した。せっかく四人もいるのだから、この前より深い場所で試してみようということになった。
この辺りには禍狐が出る。猪八怪より小さいが、その分素早く火を吐くため、神殿が定める討伐難易度では猪八怪以上とされている。
やがて、目当ての禍狐が一匹だけ現れ、ものすごいスピードで突っ込んできた。
私は正確に位置を定めて結界を発動する。問題なく閉じ込めると、猪八怪のときと同じように黒いモヤを放ち始めた。
ただ、違ったのは――黒いモヤの放出が終わっても、禍狐がその場に残っていたことだ。
「討伐できていないわ」
私はがっかりした。
「……いや、待ってくれ」
アオくんが近づいて確認する。
「……禍憑の特徴がなくなっている。これはただの狐だ」
「えっ?!」
私も近づいて見ると、確かにただの狐だった。
「瑞葉様の結界は、穢れだけを浄化したということかもしれません」
「それは……この禍狐が穢れに侵されてから、あまり時間が経っていなかった?」
アオくんが確証はないが、と呟く。
「うーん、その可能性は高いと思います。もっと検証してみましょう」
祥太朗が言い、続けて提案した。
「広範囲の結界に、複数を閉じ込めたらどうなるんですかね?」
その言葉で次の実験が決まった。アオくんの探知で穢牙兎の群れを見つけ、十羽ほどを結界で覆った。だが何も起きない。移動しようと結界に近づいた穢牙兎は嫌な気配を察して近づかなかった。
「なるほど、複数には効果がない」
祥太朗がつぶやく。
「結界を強化したらどうだろう?」
アオくんの提案で、結界を強めていくと、やがて兎から黒いモヤが出てきたが、結界から逃げるように真ん中に集まった。このため結界を縮めて密集させると、次々と煙となって消えた。
「できたわ……でも」
「効率が悪いですね」
「やはり、一匹ずつの方が良いかもしれません」
「では次は、複数に遭遇したとき、一頭ずつ閉じ込めて、その速度と数を検証してみよう」
佳乃は真剣に記録をとっていた。
そのとき、アオくんが急に顔を上げた。
「強い穢れが複数、急速に近づいている」
私はすぐに察した――岩毛熊だ。
「みんな、岩毛熊の群れが来る。さすがに検証は無理だ、それぞれ戦闘準備! 瑞葉は一頭ずつ結界を試してくれ」
碧人が指示を出す。
「わかったわ!」
「来るぞ!」
祥太朗が叫んだ瞬間、十頭ほどの岩毛熊が勢いよく飛びかかってきた。
私は気を引き締めた。だが同時に――胸の奥で、これまでにない高揚が湧き上がっていた。
今度こそ、戦闘の面で仲間の役に立てるかもしれない。
この辺りには禍狐が出る。猪八怪より小さいが、その分素早く火を吐くため、神殿が定める討伐難易度では猪八怪以上とされている。
やがて、目当ての禍狐が一匹だけ現れ、ものすごいスピードで突っ込んできた。
私は正確に位置を定めて結界を発動する。問題なく閉じ込めると、猪八怪のときと同じように黒いモヤを放ち始めた。
ただ、違ったのは――黒いモヤの放出が終わっても、禍狐がその場に残っていたことだ。
「討伐できていないわ」
私はがっかりした。
「……いや、待ってくれ」
アオくんが近づいて確認する。
「……禍憑の特徴がなくなっている。これはただの狐だ」
「えっ?!」
私も近づいて見ると、確かにただの狐だった。
「瑞葉様の結界は、穢れだけを浄化したということかもしれません」
「それは……この禍狐が穢れに侵されてから、あまり時間が経っていなかった?」
アオくんが確証はないが、と呟く。
「うーん、その可能性は高いと思います。もっと検証してみましょう」
祥太朗が言い、続けて提案した。
「広範囲の結界に、複数を閉じ込めたらどうなるんですかね?」
その言葉で次の実験が決まった。アオくんの探知で穢牙兎の群れを見つけ、十羽ほどを結界で覆った。だが何も起きない。移動しようと結界に近づいた穢牙兎は嫌な気配を察して近づかなかった。
「なるほど、複数には効果がない」
祥太朗がつぶやく。
「結界を強化したらどうだろう?」
アオくんの提案で、結界を強めていくと、やがて兎から黒いモヤが出てきたが、結界から逃げるように真ん中に集まった。このため結界を縮めて密集させると、次々と煙となって消えた。
「できたわ……でも」
「効率が悪いですね」
「やはり、一匹ずつの方が良いかもしれません」
「では次は、複数に遭遇したとき、一頭ずつ閉じ込めて、その速度と数を検証してみよう」
佳乃は真剣に記録をとっていた。
そのとき、アオくんが急に顔を上げた。
「強い穢れが複数、急速に近づいている」
私はすぐに察した――岩毛熊だ。
「みんな、岩毛熊の群れが来る。さすがに検証は無理だ、それぞれ戦闘準備! 瑞葉は一頭ずつ結界を試してくれ」
碧人が指示を出す。
「わかったわ!」
「来るぞ!」
祥太朗が叫んだ瞬間、十頭ほどの岩毛熊が勢いよく飛びかかってきた。
私は気を引き締めた。だが同時に――胸の奥で、これまでにない高揚が湧き上がっていた。
今度こそ、戦闘の面で仲間の役に立てるかもしれない。
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