神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

文字の大きさ
57 / 96

56 叔父様の家にて1

しおりを挟む
 結界による討伐は、すでに実戦で十分に通用することが証明された。あとは実際の討伐活動を重ね、理解を深めていくことになった。
 アオくんや祥太朗さんと共に行くこともあれば、光矢や叔父様と組むこともある。そして佳乃は常に傍らにいて、ときには二人きりで向かうこともあった。

 叔父様と初めて一緒に討伐に出かけたとき、彼は結界をじっと観察しながら、矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。さすが研究者だと感心しつつ、一つひとつ答えながら結界で禍憑を囲み討伐していくと――あれ以来、起きていなかった現象が再び現れた。黒いモヤがすべて抜け切ったあと、禍憑は消滅せず、ただの兎へと戻ったのだ。
 叔父様はすぐに丁寧に処理を施し、持参していた保冷袋に収めた。早く調べたいとのことで、その日の討伐はそれで解散となった。

 数日後、叔父様の家に招かれ、光矢と共に伺うことになった。
 私は初めて訪れる叔父様の家に胸を弾ませていた。回帰前では縁のなかった場所であり、交流すらなかったのだから。

 叔父様は上機嫌で出迎えてくれた。
 光矢はまるで「第二の我が家」と言わんばかりに先へ進み、叔父様を追い越して部屋に入り、「そのソファに適当に座って」と言いながら、手際よくみんなの紅茶を淹れ始める。同行していた佳乃が慌てて手伝いに回った。
 この二人は、いつもここでこんなふうにしているのだろう。叔父様もにこにこと微笑みながら席についた。

「あっ、佳乃さん。その戸棚の中に、この前いただいた美味しそうな茶菓子があるんだ。出してくれるかな」

「あ、はい」

「右から二番目の戸棚だよ。そう、その緑の箱」
「これですね。お皿に出しますね」

 二人が楽しそうに準備をしている様子を眺めていると、叔父様が声をひそめて尋ねてきた。
「瑞葉ちゃん、“時戻し”のことは佳乃さんに話したのかな?」

「はい。もう話しました。二人で討伐に出たときに」

 そう。私はついに佳乃に時戻りのことを打ち明けた。
 彼女は私が変わったことをうすうす察していたようだ。信じてもらえないのではと恐れて黙っていたのではない。ずっと話したかったのだが、彼女は、私が命を落としたことを知ればきっと深く悲しむと思い、言い出せずにいたのだ。だが、何度も討伐を共にするうち、思わず話してしまった。案の定、佳乃は号泣した。普段は感情をあまり表に出さない彼女が、泣いたり怒ったりと忙しかった。
 その流れで、彼女の結婚に関する未来のことも話した。お父様とお母様にはすでに伝えており、必要な手は打ってくれると思うが、何か兆しがあればすぐ知らせてほしい、と。今から五年後に起こる出来事なので、まだ何の気配もないはずだが、備えておくに越したことはない。

「そうか。話せたんだね」
 叔父様は穏やかな笑みを浮かべて言った。

「うーん、佳乃さん、そのお皿じゃなくて、こっちにしよう」
 光矢が別の棚から新しい皿を取り出す。

「ははは。光矢君はもう、うちの物の所在を全部把握しているね。本当にありがたいよ。瑞葉ちゃん、僕はね、光矢君がいないと研究ができないんだ」
「ふふっ、叔父様ったら。じゃあ光矢は優秀な助手なのですね」

「ああ、とんでもなく優秀だよ」

「この部屋は通いの使用人には入らせないから、掃除も自分でやらざるを得なくてね」

「でも叔父さん、僕が来る前からわりときれいでしたよ」
 皿に盛りつけた茶菓子を手に、光矢が笑いながら戻ってきた。

「いやいや、光矢君が来てからすっかり甘えてしまって、もう前の生活には戻れないんだよ。それが人間というものさ」

「はいはい。お役に立てて何よりです。それで、この前の兎、何かわかったんですか?」

「おお、そうだ。実は重要なことがわかったんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。 1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。 2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。 3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。 狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。 「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。 ----- 外部サイトでも掲載を行っております

私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。

白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。 でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。 結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。 健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。 父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。 白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――

無能だと捨てられた第七王女、前世の『カウンセラー』知識で人の心を読み解き、言葉だけで最強の騎士団を作り上げる

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
エルミート王国の第七王女リリアーナは、王族でありながら魔力を持たない『無能』として生まれ、北の塔に長年幽閉されていた。 ある日、高熱で生死の境をさまよった彼女は、前世で臨床心理士(カウンセラー)だった記憶を取り戻す。 時を同じくして、リリアーナは厄介払いのように、魔物の跋扈する極寒の地を治める『氷の辺境伯』アシュトン・グレイウォールに嫁がされることが決定する。 死地へ送られるも同然の状況だったが、リリアーナは絶望しなかった。 彼女には、前世で培った心理学の知識と言葉の力があったからだ。 心を閉ざした辺境伯、戦争のトラウマに苦しむ騎士たち、貧困にあえぐ領民。 リリアーナは彼らの声に耳を傾け、その知識を駆使して一人ひとりの心を丁寧に癒していく。 やがて彼女の言葉は、ならず者集団と揶揄された騎士団を鉄の結束を誇る最強の部隊へと変え、痩せた辺境の地を着実に豊かな場所へと改革していくのだった。

【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

月森かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

うり坊、浄化で少女になった

秋の叶
ファンタジー
山の中、餌を求めて歩いていた猪親子が罠にはまる。 唯一助かったうり坊が走った先で浄化の魔道具に触れ、人間の少女になった。 衣服が無いピンチ状態から少女の日常が始まる。 「召喚されたけれど、夫を捜しに出奔します」の20年後の話になりますが、前作を読んでいなくても問題ありません。  読んでくださる方に感謝を。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

処理中です...