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71 鉱山7
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当主が悔しそうに口を開かれた。
「確かにそれは聞いたことがある。実行犯を捕らえても、指示役は捕まらない。今回、指示役まで捕らえられたのは珍しいことだった。だが、さすがにその上までは聞き出せなかった」
すると、先ほどまで口数の少なかった叔父様が静かに言葉を添えられる。
「もし光矢君の言うように、全人教の主要な人物を口にしようとすると呪いが発動するのだとしたら……まずはその呪いを解かねばなりません。解呪できれば、指示した人物も明らかになるのではないでしょうか」
当主は顎に手を当てて頷かれる。
「なるほど……それは試してみる価値があるな」
奥方が穏やかに口を開かれた。
「まあ、いずれにしても今すぐ試せるものではございませんわ。中央へ進言しておきましょう。それよりも――皆様はすぐにお立ちになりますか? もしお急ぎでなければ、このまま岩城家でお過ごしになってはいかがでしょう」
「おお、それは良い案だ」当主が上機嫌で続ける。
「せっかく遠方より来ていただいたのだ。ぜひしばらく滞在し、この地を知っていただきたい」
私は叔父様を見やった。
「叔父様、どうされますか?」
「そうですね。せっかくのお申し出ですから、もうしばらく過ごさせていただきましょう」
「ええ、ぜひ!」
遥様が、それはそれは嬉しそうに笑みを浮かべられる。
その様子を見て、私は思い切って前から考えていた願いを口にした。
「あの……滞在させていただくにあたり、一つお願いがございます」
「なんなりと、お申し付けください!」
遥様が食い気味に答えられる。
「岩城家は辺境の地で、強い禍憑やならず者と戦っておられると伺っています。遥様も幼い頃から訓練を積まれ、かなりの手練とお聞きしました。もしよろしければ、私に訓練をつけていただけないでしょうか?」
「えっ……」
遥様はしばし呆然と私を見つめた。
その横で奥方が微笑まれる。
「遥、いいではありませんか。ただし、あなたは教えるのは向いていないでしょう。遥の師に、一緒に訓練をつけてもらうのはどうかしら?」
「はい!ぜひお願いします!」私は深々と頭を下げた。
「僕も……!」樹様が身を乗り出す。「僕は浅井様と光矢様に、研究の話をお聞きしたいです」
「いいですよ」光矢が笑う。「僕も樹様と親交を深めたいと思っていました」
「樹、ちょっと待て」
当主が慌てて声を上げられる。
「浅井殿。実は少しご相談に乗っていただきたいことがあるのだ」
叔父様は落ち着いた様子で応じられた。
「私でよろしければ」
「そうか、そうか。それでは、この後すぐ執務室に来てもらえますかな?」
「ええ、行きましょう」
当主は嬉しそうにいそいそと、叔父様と連れ立って部屋を出て行かれた。
残された私たちを見て、遥様が首をかしげる。
「お父様は、なぜ浅井様を連れて行かれたのかしら?」
奥方がくすりと笑って答えられる。
「ふふっ、あの人ったら。遥も知っているでしょう? 討伐のほうが性に合っていて、書類仕事はからっきしなの。しかも、うちの側近は脳筋ばかりで事務の進みが遅い。樹と私がたまに手伝って、なんとか回しているけれど、それでも追いつかないのよ。おそらく、知恵者の浅井殿に良い案を授けていただきたいのだと思います」
「それはいいわね!」遥様が明るく頷かれる。「正直、私では何の助けにもならなかったから……浅井様なら、良い進め方を教えてくださるかもしれないわ」
その後も、食卓では和やかな会話が続いた。
こうして私たちは、岩城家の厚意に迎えられ、しばしこの地に滞在することとなった。
「確かにそれは聞いたことがある。実行犯を捕らえても、指示役は捕まらない。今回、指示役まで捕らえられたのは珍しいことだった。だが、さすがにその上までは聞き出せなかった」
すると、先ほどまで口数の少なかった叔父様が静かに言葉を添えられる。
「もし光矢君の言うように、全人教の主要な人物を口にしようとすると呪いが発動するのだとしたら……まずはその呪いを解かねばなりません。解呪できれば、指示した人物も明らかになるのではないでしょうか」
当主は顎に手を当てて頷かれる。
「なるほど……それは試してみる価値があるな」
奥方が穏やかに口を開かれた。
「まあ、いずれにしても今すぐ試せるものではございませんわ。中央へ進言しておきましょう。それよりも――皆様はすぐにお立ちになりますか? もしお急ぎでなければ、このまま岩城家でお過ごしになってはいかがでしょう」
「おお、それは良い案だ」当主が上機嫌で続ける。
「せっかく遠方より来ていただいたのだ。ぜひしばらく滞在し、この地を知っていただきたい」
私は叔父様を見やった。
「叔父様、どうされますか?」
「そうですね。せっかくのお申し出ですから、もうしばらく過ごさせていただきましょう」
「ええ、ぜひ!」
遥様が、それはそれは嬉しそうに笑みを浮かべられる。
その様子を見て、私は思い切って前から考えていた願いを口にした。
「あの……滞在させていただくにあたり、一つお願いがございます」
「なんなりと、お申し付けください!」
遥様が食い気味に答えられる。
「岩城家は辺境の地で、強い禍憑やならず者と戦っておられると伺っています。遥様も幼い頃から訓練を積まれ、かなりの手練とお聞きしました。もしよろしければ、私に訓練をつけていただけないでしょうか?」
「えっ……」
遥様はしばし呆然と私を見つめた。
その横で奥方が微笑まれる。
「遥、いいではありませんか。ただし、あなたは教えるのは向いていないでしょう。遥の師に、一緒に訓練をつけてもらうのはどうかしら?」
「はい!ぜひお願いします!」私は深々と頭を下げた。
「僕も……!」樹様が身を乗り出す。「僕は浅井様と光矢様に、研究の話をお聞きしたいです」
「いいですよ」光矢が笑う。「僕も樹様と親交を深めたいと思っていました」
「樹、ちょっと待て」
当主が慌てて声を上げられる。
「浅井殿。実は少しご相談に乗っていただきたいことがあるのだ」
叔父様は落ち着いた様子で応じられた。
「私でよろしければ」
「そうか、そうか。それでは、この後すぐ執務室に来てもらえますかな?」
「ええ、行きましょう」
当主は嬉しそうにいそいそと、叔父様と連れ立って部屋を出て行かれた。
残された私たちを見て、遥様が首をかしげる。
「お父様は、なぜ浅井様を連れて行かれたのかしら?」
奥方がくすりと笑って答えられる。
「ふふっ、あの人ったら。遥も知っているでしょう? 討伐のほうが性に合っていて、書類仕事はからっきしなの。しかも、うちの側近は脳筋ばかりで事務の進みが遅い。樹と私がたまに手伝って、なんとか回しているけれど、それでも追いつかないのよ。おそらく、知恵者の浅井殿に良い案を授けていただきたいのだと思います」
「それはいいわね!」遥様が明るく頷かれる。「正直、私では何の助けにもならなかったから……浅井様なら、良い進め方を教えてくださるかもしれないわ」
その後も、食卓では和やかな会話が続いた。
こうして私たちは、岩城家の厚意に迎えられ、しばしこの地に滞在することとなった。
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