神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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75 岩城家4(光矢視点)

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 僕は叔父さんと岩城家の執務室にいた。樹君と話しているうちに、彼が仕事を手伝っていることが判明したのだ。樹君が優秀だからこそできてしまうのだろうが、わずか七歳の子どもにまで仕事をさせるなんて、と僕はひそかに憤慨していた。せめて大人たちだけで仕事が回せるようにと、業務効率を上げるべく実際の書類を見ながら改善案を出していた。

「樹さん、この書類は、こういう形式に直したほうが要点がわかりやすいですよ」

「本当ですね!光矢君は僕より年下なのに、どうしてこんなことを知っているのですか?」

「光矢君はね、誰かに習ったわけじゃないんだ。私にも研究のアイディアをよくくれるんだよ」

 ――それは、前世で会社員をしていた知識のおかげだとは、もちろん言えない。
 きっと神童だと思われてしまうだろうが、持っている知識を活かさない手はない。使えるものはすべて使って、姉さまのあの悲惨な未来を回避しなくてはならないのだから。

 そんなふうに執務室で過ごしていると、岩城家の長女・遥様が勢いよく扉を開け放った。
「姉さま!! お客様がいるのですよ!?」
 あまりに礼を欠いた態度に、樹君が思わず声を荒げる。

「失礼します。浅井殿、光矢君。庭での訓練中に刺客が現れました。今は瑞葉様の結界に閉じ込めています。母が、『昨日のお話の検証をしましょう』とのことです」

「わかりました。光矢君、行こう」
「はい!」
 僕と叔父さんは身体強化を施し、遥様に続いて急ぎ足で屋敷から飛び出した。

 後方から、樹君の声がかすかに届く。
「僕もすぐに行きますから~!」
 その声を背に受け、僕たちは駆けていった。

 遥様の案内のもと、すぐに姉さまたちのいる場所へと到着する。まず目に入ったのは、美しい結界だった。その中には、刺客と思しき黒ずくめの男たち四人が必死に結界を壊そうと奮闘している。そして少し離れたところでは、当主夫人と姉さま、佳乃が談笑していた。

「ご無事ですか?」
 叔父さんが声をかける。

「ええ。浅井殿、光矢君。検証するにはちょうどいい機会じゃなくて?」

 当主夫人は上品に微笑みながら言ったが、その目の奥は冷ややかに光っていた。
「そうですね。飛んで火に入る、なんとやらですね。では、始めましょうか」
「はい、叔父様!」
 姉さまが張り切っているのがわかる。

「今は浄化はしていないんだよね?」
「はい。これはただ閉じ込めているだけです」

 そこで僕は鞄から『穢れが見える神具』を取り出し、掲げてみせた。
「これで、みなさんもご覧ください」

 僕はもともと見えているが、他の人には必要だ。刺客四人とも、真っ黒だ。鉱山で見た五人よりも、さらに濃い穢れが噴き出している。

「まあ! それが穢れが見える神具なのですね!」
「わあ、すごい! 真っ黒い靄がドロドロ出てきているわ!」
 岩城母娘がそろって感嘆の声を上げる。

「光矢君、これは期待できそうだね」

「叔父様、確認ですが今回の検証は、最初に呪いを解いた後に浄化を行い、そのうえで例の宗教との繋がりを自白させる……という流れですね」

「そのとおりだ。では瑞葉ちゃん、まずこの四人の状態を診てもらえるか?」

「はい。呪いにかかっているかどうかですね。一人ずつ見てみます」
 姉さまは目を閉じて集中した。ほどなくして目を開き、言う。

「四人とも、心臓に鎖状の呪いが巻きついている印象を受けました」

 僕も意識を集中すると、同じものが見えた。あれが呪いか。

「よし、ではまずそれを解呪してしまおう」
「はい」
 姉さまは再び目を閉じ、神気を込める。

 心臓にまとわりついていた鎖のような靄が、一人ずつ解けていく。だが怪我や病気と違い、本人たちには自覚がないようだ。実に興味深い。

「呪いは解けたようだな。だが、本人たちは気づいていないらしい」

 刺客たちは相変わらず結界を攻撃し続けていた。こちらの人数が増えたことで、ますます焦りを募らせているようだ。

「よし、それでは僕が直接聞き取りをしてみよう」
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