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act-11 第2のターゲット
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インストアライブ翌日の夜。
九条は近所の行きつけの店にいた。いつものようにカウンターでひとり、ビールから焼酎のコースで今日の仕事を振り返り明日の案件、その段取りと対策を考える‥はずが頭に浮かぶアスカの顔が邪魔をする。
彼女から恋愛感情をほのめかす手紙をもらった。が、鴨志田曰く‥
-アスカは男だよ-
とんでもない事実を告げた電話は「ごめん、終電間に合わない」の言葉とともに一方的に切られ、その後かかってくることはなかった。
九条も芸能界の端くれにいる。お姉系のタレントと仕事もするし、堅気の世界に比べ変わり者は多い世界だ。非常識の常識も学んだし、その辺のサラリーマンには想像もできないような付き合いも夜の歌舞伎町でたっぷり鍛えられた。
が、アスカは別だ。いや、別ではないのか‥?
待てよ、酔っぱらった鴨さんに担がれたか?でもハルもいたよな‥
堂々巡りの推察が、ほろ酔いの頭を駆け巡る。
と、その時メールの着信音。
鴨志田だ!
-今 アスカと飲んでる 来ない?-
意味が分からない。なんでアスカと飲んでいる?あいつは未成年だ。
-どこです?- のメールに即返信。
-先週一緒に行った目黒のバー-
九条は「あれ、もう帰るの?」と言う店主に「急用」と短く答え、支払いを済ませると店を出て‥一旦自宅に戻った。
帰宅途中のサラリーマンや学生でごった返す電車に九条が飛び乗ったのは、それから20分後‥行き先はもちろん目黒だ。
***********************************
目黒川沿いから一本裏道に入った路地。知らなければ見過ごしそうな隠れ家的なバーに九条は入っていく。愛想のいい店主に「待合わせで」と言い訳じみた言葉を投げつけ、九条は指定された店奥へと向かった。
「おー、こっちこっち」と言う鴨志田の声と「まー君!」と言う声は、ほぼ同時だった。
「誰がまー君だよ」
九条はそう言いながら二人が向かい合わせで座っていた四人がけ席の、鴨志田側に腰を下ろした。アスカと自分VS鴨志田‥という構図を意識的に避けた。
「まずはビール?」
九条が頷くと、鴨志田は「マスター、ビールと電気ブラン(ブランデーが混合されたリキュール)おかわり!」と声を張り上げた。
「あ。私もおかわりで!」
アスカの言葉に「お前さ、未成年‥」と言いかけた九条を鴨志田は制し「それとオレンジジュースもおかわりで!」と続けた。アスカは空のグラスを九条の顔の前に突き出し「ジュースだよーん」と言い、まるで酔ってるかのようにケラケラ笑った。鴨志田が切り出す。
「アスカから事情は聞いたよ」
「事情って何です?」
「いやだから、何で九条ちゃんを気に入ったかとか」
そこはどうでもいい部分だ。だから確信をついた質問をした。
「鴨さんから聞いたけど、アスカ‥」
「はい」
「君は男なの?」
九条の言葉に食い気味で「そうですよ」とあっさりアスカは答え、悪戯を見つかった子供のような表情で「バレちゃいましたぁ?」と続けた。
「鴨さん!」
「いやー、すまない九条ちゃん。伝えてなかったのは悪かった。ハルのファンはみんな知ってることなんで」
「僕だけ知らなかったんですか?」
「でもさぁ、何か無きゃあえてアスカは男なんだよ、なんて言わないでしょ?九条ちゃんを好きだっていうのも知らなかったし」
そりゃそうだ‥
「鴨さん、あんまり九条さんをいじめないで」
鴨志田が「ゴメンなぁ、アスカ」と言って大笑いしたところに、ウエイターがやって来た。グラスを受け取った鴨志田が「まあ、九条ちゃん、怒りなさんな。アスカみたいな奴は味方につけておいた方がいいんだよ」と言って、九条の肩をポンポンとたたいた。
「味方にしておいた方がいいと思うよー」
アスカは鴨志田のセリフを復唱してジュースのグラスを掲げた。
「乾杯の前に一つ聞いておく」
九条の低く冷静な声にアスカが小首を傾げた。
「もう伝えてあるけど、君とは付き合えないよ」
「分かってる」
「そこはいいね?」
「うん‥でも、時々一緒にご飯とか行きたい」
「‥分かった」
「えっ、ほんと?」
「ああ」
「それと九条さんのメアド、教えてもらっていい?」
「いいよ」
「あと‥もうひとつ」
「何?」
「まー君て呼んでもいい?」
「いいよ」
すんなり即答した九条が意外だったのか「マジで?聞いた?鴨さん」とアスカは目を丸くして「良かったじゃん」と笑う鴨志田とハイタッチをした。
「ひとつ条件がある」
「何?」
「君をカメラで取材したいんだ」
予想外の申し出だったのかアスカは一瞬驚いたようだったが、すぐに「なんだ、そんなこと。全然いいですよー」と笑顔で答えた。
九条はその言葉を聞くと、足元に置いたバックの中からカメラを取り出した。
「じゃあ、今から始めるよ」
アスカと‥さすがに鴨志田も言葉を失っていた。
九条は近所の行きつけの店にいた。いつものようにカウンターでひとり、ビールから焼酎のコースで今日の仕事を振り返り明日の案件、その段取りと対策を考える‥はずが頭に浮かぶアスカの顔が邪魔をする。
彼女から恋愛感情をほのめかす手紙をもらった。が、鴨志田曰く‥
-アスカは男だよ-
とんでもない事実を告げた電話は「ごめん、終電間に合わない」の言葉とともに一方的に切られ、その後かかってくることはなかった。
九条も芸能界の端くれにいる。お姉系のタレントと仕事もするし、堅気の世界に比べ変わり者は多い世界だ。非常識の常識も学んだし、その辺のサラリーマンには想像もできないような付き合いも夜の歌舞伎町でたっぷり鍛えられた。
が、アスカは別だ。いや、別ではないのか‥?
待てよ、酔っぱらった鴨さんに担がれたか?でもハルもいたよな‥
堂々巡りの推察が、ほろ酔いの頭を駆け巡る。
と、その時メールの着信音。
鴨志田だ!
-今 アスカと飲んでる 来ない?-
意味が分からない。なんでアスカと飲んでいる?あいつは未成年だ。
-どこです?- のメールに即返信。
-先週一緒に行った目黒のバー-
九条は「あれ、もう帰るの?」と言う店主に「急用」と短く答え、支払いを済ませると店を出て‥一旦自宅に戻った。
帰宅途中のサラリーマンや学生でごった返す電車に九条が飛び乗ったのは、それから20分後‥行き先はもちろん目黒だ。
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目黒川沿いから一本裏道に入った路地。知らなければ見過ごしそうな隠れ家的なバーに九条は入っていく。愛想のいい店主に「待合わせで」と言い訳じみた言葉を投げつけ、九条は指定された店奥へと向かった。
「おー、こっちこっち」と言う鴨志田の声と「まー君!」と言う声は、ほぼ同時だった。
「誰がまー君だよ」
九条はそう言いながら二人が向かい合わせで座っていた四人がけ席の、鴨志田側に腰を下ろした。アスカと自分VS鴨志田‥という構図を意識的に避けた。
「まずはビール?」
九条が頷くと、鴨志田は「マスター、ビールと電気ブラン(ブランデーが混合されたリキュール)おかわり!」と声を張り上げた。
「あ。私もおかわりで!」
アスカの言葉に「お前さ、未成年‥」と言いかけた九条を鴨志田は制し「それとオレンジジュースもおかわりで!」と続けた。アスカは空のグラスを九条の顔の前に突き出し「ジュースだよーん」と言い、まるで酔ってるかのようにケラケラ笑った。鴨志田が切り出す。
「アスカから事情は聞いたよ」
「事情って何です?」
「いやだから、何で九条ちゃんを気に入ったかとか」
そこはどうでもいい部分だ。だから確信をついた質問をした。
「鴨さんから聞いたけど、アスカ‥」
「はい」
「君は男なの?」
九条の言葉に食い気味で「そうですよ」とあっさりアスカは答え、悪戯を見つかった子供のような表情で「バレちゃいましたぁ?」と続けた。
「鴨さん!」
「いやー、すまない九条ちゃん。伝えてなかったのは悪かった。ハルのファンはみんな知ってることなんで」
「僕だけ知らなかったんですか?」
「でもさぁ、何か無きゃあえてアスカは男なんだよ、なんて言わないでしょ?九条ちゃんを好きだっていうのも知らなかったし」
そりゃそうだ‥
「鴨さん、あんまり九条さんをいじめないで」
鴨志田が「ゴメンなぁ、アスカ」と言って大笑いしたところに、ウエイターがやって来た。グラスを受け取った鴨志田が「まあ、九条ちゃん、怒りなさんな。アスカみたいな奴は味方につけておいた方がいいんだよ」と言って、九条の肩をポンポンとたたいた。
「味方にしておいた方がいいと思うよー」
アスカは鴨志田のセリフを復唱してジュースのグラスを掲げた。
「乾杯の前に一つ聞いておく」
九条の低く冷静な声にアスカが小首を傾げた。
「もう伝えてあるけど、君とは付き合えないよ」
「分かってる」
「そこはいいね?」
「うん‥でも、時々一緒にご飯とか行きたい」
「‥分かった」
「えっ、ほんと?」
「ああ」
「それと九条さんのメアド、教えてもらっていい?」
「いいよ」
「あと‥もうひとつ」
「何?」
「まー君て呼んでもいい?」
「いいよ」
すんなり即答した九条が意外だったのか「マジで?聞いた?鴨さん」とアスカは目を丸くして「良かったじゃん」と笑う鴨志田とハイタッチをした。
「ひとつ条件がある」
「何?」
「君をカメラで取材したいんだ」
予想外の申し出だったのかアスカは一瞬驚いたようだったが、すぐに「なんだ、そんなこと。全然いいですよー」と笑顔で答えた。
九条はその言葉を聞くと、足元に置いたバックの中からカメラを取り出した。
「じゃあ、今から始めるよ」
アスカと‥さすがに鴨志田も言葉を失っていた。
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