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act-16 笑顔の裏側
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先ほどの言葉以後、剣崎は口をつぐんでしまった。その代わりのようにケイコが話を続ける。
「ここはね、もともとアスカの親父さんのお店だったの。腕のいい板さんだったんだけど、他に女作って‥挙句その女に刺されて死んじゃったのよ」
ケイコの言葉はあまりに予想外で、九条は言葉を失った。
「今から5年くらい前かな、アスカが小学校の‥3年生の時だから。それからはずっとママがこの店を切り盛りしてるってワケよ」
剣崎がポツリと続ける。
「俺もケイコもこの店ができた頃からの常連でな。あんなことがあってママも大変だったが大人はまあいろいろある。でも、あん時小学生だったアスカは‥」
そこで再び剣崎は口をつぐんだ。ケイコが続ける。
「この店で刺されて血だらけの親父さんを見つけたのは、学校から帰ってきたアスカだったのよ」
三人が押し黙ったところに明るい声が響いた。
「ごめんね、まー君。すぐに次のおつまみ作るから」
アスカが戻ってきた。その笑顔を見ることのできない九条は「ちょっと」と席を立ち、手洗いに向かった。背中で「おい、アスカ。えこひいきしないで俺たちにも何か作ってくれよ」と好々爺に戻った剣崎の声がしていた。
トイレにはハルのポスターが貼られていた。その隣にハルとアスカの2ショット写真があり、『みんなでハルちゃんを応援しよう!』と手書きされた文字が書かれている。
-バカなやつだ。この店に来る客はハルなんて興味ないさ-
そう思いながら写真に写るアスカの笑顔を見ていたら、不覚にも泣けてきた。ハルのファンの中で一番明るく陽気なアスカ‥おそらくアスカの父親はアスカを誰よりも大切に思っていたのだろう。そうでなければ、板前が自分の店に我が子の名前なんか付けない‥
カウンターに戻ると九条はアスカに言った。
「ビールをもう1本もらえるかな。それから、つまみはお任せするからジャンジャン作ってくれよ」
アスカの「任せて!」の声と、いつの間にか買い出しから戻ってきた母親の「九条さん、いい人!」の声が重なった。
「ここはね、もともとアスカの親父さんのお店だったの。腕のいい板さんだったんだけど、他に女作って‥挙句その女に刺されて死んじゃったのよ」
ケイコの言葉はあまりに予想外で、九条は言葉を失った。
「今から5年くらい前かな、アスカが小学校の‥3年生の時だから。それからはずっとママがこの店を切り盛りしてるってワケよ」
剣崎がポツリと続ける。
「俺もケイコもこの店ができた頃からの常連でな。あんなことがあってママも大変だったが大人はまあいろいろある。でも、あん時小学生だったアスカは‥」
そこで再び剣崎は口をつぐんだ。ケイコが続ける。
「この店で刺されて血だらけの親父さんを見つけたのは、学校から帰ってきたアスカだったのよ」
三人が押し黙ったところに明るい声が響いた。
「ごめんね、まー君。すぐに次のおつまみ作るから」
アスカが戻ってきた。その笑顔を見ることのできない九条は「ちょっと」と席を立ち、手洗いに向かった。背中で「おい、アスカ。えこひいきしないで俺たちにも何か作ってくれよ」と好々爺に戻った剣崎の声がしていた。
トイレにはハルのポスターが貼られていた。その隣にハルとアスカの2ショット写真があり、『みんなでハルちゃんを応援しよう!』と手書きされた文字が書かれている。
-バカなやつだ。この店に来る客はハルなんて興味ないさ-
そう思いながら写真に写るアスカの笑顔を見ていたら、不覚にも泣けてきた。ハルのファンの中で一番明るく陽気なアスカ‥おそらくアスカの父親はアスカを誰よりも大切に思っていたのだろう。そうでなければ、板前が自分の店に我が子の名前なんか付けない‥
カウンターに戻ると九条はアスカに言った。
「ビールをもう1本もらえるかな。それから、つまみはお任せするからジャンジャン作ってくれよ」
アスカの「任せて!」の声と、いつの間にか買い出しから戻ってきた母親の「九条さん、いい人!」の声が重なった。
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