九条Dの完パケ -傷だらけの天使たち-

麻美拓海

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act-17 緊急搬送

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小さくなり続けるメロディー‥それが着信音であることに気付き、九条は枕元の携帯に手を伸ばした。二日酔いで頭がグラグラする。

「寝てた?九条ちゃん」

耳元で鴨志田のデカい声が響いた。時計に目をやると、もう昼近くだった。

「どうしました?鴨さん」
「いや、なんだか面倒なことが起きちゃってさ。ちょっと事務所来れる?」
「2時くらいなら」
「おお、ありがと。待ってるよ」

九条はふらつく身体で熱いシャワーを浴びると、冷蔵庫から牛乳のパックを取り出しそのままラッパ飲みした。
酔いが冷めていくと同時に、昨夜のことが思い出される。経緯は覚えていないが、最後は剣崎とケイコの間に挟まれ焼酎を浴びるように飲んでいた‥が、その泥酔の中、九条はアスカにインタビューの確約をしていた。今日の夕方5時。開店する前の『飛鳥』で‥
鴨志田の言う「面倒なこと」は想像もつかないが、アスカとの約束までにはまだ時間がある。九条はいつものように撮影機材をまとめ家を出た。

***********************************

事務所に入ると、鴨志田が自分のデスクに腰掛け呆けたように煙草をふかしていた。

「おー、九条ちゃん」

元気がない。

「何かあったんですか?」

九条の問いかけに、鴨志田は煙草を灰皿でもみ消しながら言った。

「ユリアって覚えてる?」

ユリア?‥記憶にない。

「ミチルの件の時、原宿でハルたちの集会撮ってもらったじゃん。あの時にいた子でさ。カメラに映ってたでしょ?」

-ああ、あの綺麗なお姉さんか-

「あの子が昨日の晩、睡眠薬飲んじゃって」
「えっ!?」

顛末はこうだった。
昨日の深夜、携帯にユリアから着信があった。鴨志田が出ると途切れ途切れのユリアの声がする。最初は彼女が何を言っているのかわからなかったらしい。が、「ごめんなさい」と「ハルちゃんのせいじゃないから」という言葉が聞き取れた。「どうした?ユリア!」鴨志田の問いかけに微かに「さよなら」と言う声がして電話はプツッと切れた。リダイヤルしても彼女は出ない‥
ただ事ではないことを感じた鴨志田はすぐにハルに連絡。ハルはユリアと親しいファンの子から彼女の住むマンションを聞き出し、救急車を向かわせた‥
ユリアは自室のベッドの上、昏睡状態で発見され緊急搬送された。幸い一命をとりとめたとのことだが、鴨志田からハルへの連携が無かったら大変なことになっていたかもしれない。

「ユリアは今?」
「市ヶ谷の病院にいる。意識はあるみたい」
「会ったんですか?」
「誰にも会いたくないって言ってるって」
「何が原因で?」
「いや、分からない」
「最近変わったことは?」
「ハルのファンは危なっかしい連中が多いけど、ユリアは大人だし俺もノーマークだった」

ファンの中では最年長であろうユリア‥彼女に一体何があったというのか‥?

「誰か付き添っている人はいるんですか?」
「ユリアの母親。俺のところにそのお母さんから電話があったよ。ユリアが連絡してくれって言ったんだと思う」

その時、事務所の扉が開きハルが入って来た。一瞬、九条と視線が合ったが、ハルはまっすぐ鴨志田のデスクまで歩いていくとこう言った。

「私、病院に行ってユリアさんに会って来る」
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