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act-30 ダメージ
しおりを挟む「実は、昨夜ミチルに会ったんです」
九条が切り出すと、鴨志田は「おー、元気だった?」と能天気な返答。
九条は単刀直入に全てを話した。ミチルが佐伯のバンドのボーカルになったこと、そのバンドがメジャーレーベルからデビューすること、そしてその時期がハルのファーストアルバムのリリースとかぶること‥
鴨志田は腕組みをしながら九条の話を黙って聞いていた。そして全てを聞き終わると、灰皿に置いたまま短くなった煙草をもみ消し「マジで?」と言って頭を抱えてしまった。あまりの分かりやすい反応に、かける言葉の無い九条も黙ってしまった。薄暗い部屋を長い沈黙が支配する。
そこにハルが帰ってきた。
「どうしたの?二人とも」
口を開きかけた九条を鴨志田が手で制した。
「俺から話すよ」
***********************************
鴨志田の話を聞き終わると、ハルは意外なほどあっさりと言った。
「良かったじゃん、ミチル」
「良かったって‥ハル、分かってる?」
ハルの言葉に戸惑いながら鴨志田は続けた。
「ミチルの所属したレコード会社はハルも知ってるよね?」
「もちろん。だから?」
「だからって‥」
「凄いじゃん、ミチル」
二人の会話は噛み合わない。聞いている九条も、あっけらかんとしたハルの言葉には違和感を感じる。強がっているのか?それとも事の重要性に気づいていないのか?
「あのな、ハル。あっちは強力なメジャーレーベルなんだぞ」
「うん」
「敵とは言わないけど、オマエにとってミチルはライバルになるんだ。そこ分かってる?」
そう言った鴨志田の顔をまじまじと見てハルは言った。
「あのね、鴨さん。この世界、みんなライバルでしょ?」
「いや、そりゃそうだけど」
「じゃ、それがミチルでもいいじゃん」
ハルは鴨志田に向かってそう言うと「でしょ?」という表情で九条を見た。佐伯、キリト、そしてハル‥自分より全然年下のヤツらに圧倒され気味の自分が九条は少し情けなかった。
***********************************
表参道から1本裏道に入ったBAR。アストラッド・ジルベルトのボーカルを聴きながら、九条と鴨志田はカウンターで何杯目かのバーボンを口にしていた。
口数の少ない鴨志田‥その心情を九条は察する。ハルはああ言ったが、プロデューサーとしての鴨志田にはやはり複雑な思いがあるのだろう。ミチルのデビュー‥それが大手音楽会社だったことが鴨志田にずっしりと負荷をかけている。自分の力がハルという才能の十分な支えとなれるのか?ハルvsミチルというガチバトル以前に、弱小プロダクションが巨大な資本力の前に屈してしまうのではないか?そんな業界の力学を鴨志田は今まで嫌という程見てきている。
「ちょっと失礼」
九条は携帯をかけるふりをして店の外に出た。風が冷たい。煙草を咥え火をつけると、道行く若者たちの多くがコートを着ている事に気付いた。
冬がそこまで近づいている‥
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