人生の攻略本を拾いました~彼女の行動がギャルゲー感覚で予測できるので、簡単にハーレム……とおもいきや誰かが死んでしまうらしい~

星上みかん(嬉野K)

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雪月風花・花

第70話

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 迷いながら帰宅。迷いの内容はヒカリさんに助けを求めるべきか否か……いや、『他人に助けを求めるか否か』である。

 考えがまとまらない。そんなとき僕が取る行動は一つだ。

 自室に入って、僕は幼馴染に電話をかける。

『はいよー』

 この声が聞こえるだけで、僕の心は少し落ち着いてくる。それくらい、僕はこの幼馴染のことを信用している。

莉杏りあん……」
『お……』名前を呼ばれただけで、莉杏りあんは僕の異変を察知したようだった。『どうしたの? 何かあった? ヒカリさんにいじめられた?』

 いじめられたのはいじめられた。だけどそれは気にしてない。いじりの範囲内だし、僕の自業自得だから問題ない。

「むしろ助けてくれるらしい」
『……ああ、なるほどね』それだけでわかるのか。『ヒカリさんにも夢の内容を説明したほうがいいのか、ってことね』

 その通りである。
 莉杏りあんには攻略本の内容は伝えていない。だけれど、誰かが自殺してしまうことは伝えてある。僕が見た夢ということで、伝えているのだ。
 それと同じ内容を、ヒカリさんにも説明するかどうか。

『これは私個人の考えだけど、ヒカリさんは信用できる人だよ。機密保護はしっかりやってくれる。ヒカリさんに伝えて、他の人に漏れることはない。それだけは保証する』
「逆に保証できないことは?」
『問題の解決』ダメだろそれは。『あの人は……失敗することをダメな事だとは思ってないから。成功しても成長しなかったら意味がないって考えてる人だから。逆に言えば、失敗しても良いって思ってる』
「……それは……」
『そうだね。今この場でいうと、ヒカリさんは誰かが自殺しても良いと考えると思う。その結果残された人間たちが成長できるのなら、必要な犠牲だってね』
「……」
『あの人は残酷な人だから……それでいて強引な人。キミが望む未来は与えられない可能性が高い。それでもいいのなら、助けを求めたらいいと思うよ』
「……いや、やめとく」
『そうだね。それがいいかも。たしかにあの人を頼ると最終的には良い所に終着する。だけれど……キミが望んでない未来に行き着くからね。私は、キミの望む未来を叶えてあげたいから』

 誰も自殺しない未来。成長しなくてもいいから、誰も死なない未来。それを叶えるためには、やはり現状のメンバーだけで進めるべきなのだろう。

『ご相談はそれだけかな?』
「ああ……いや、もう少しある」
花咲はなさきさんの話題?』
「そうそう」やはり莉杏りあんとの会話は早くてありがたい。「花咲はなさきさんと出会って、食事に行ったんだ。風光明媚に……」

 そこまで言って、ヒカリさんから莉杏りあんに対して伝言を預かっていることを思い出した。

「ああ……ごめん、ちょっと話がそれるんだけど……」
『いいよ。何?』
「ヒカリさんから伝言。次に来るときは手加減できないから、覚悟してこいって」
『ホント?』急に莉杏りあんの声が明るくなる。『ホントにそう言ってたの?』
「ああ……うん」
『なるほど……そりゃ嬉しいねぇ……じゃあ幼馴染くん、骨は拾っておくれよ』
「何をする気なんだよ……」
『さぁねぇ……まぁ、たぶん私もただじゃすまなくなるだろうね。今まで手加減されて叩きのめされてたから大事にはなってなかったけど』

 ……手加減してたのかヒカリさん……その状態で莉杏りあんを叩きのめすとは……あの人は本当に人間なのだろうか? 不老不死の化け物なんじゃないだろうか? 吸血鬼かなにかじゃないだろうか?

『ああ……楽しみだなぁ……準備ができたらすぐに行こっと』

 ……骨壷は準備しておこう。莉杏りあんに言われた通り骨は拾ってやる。骨が残ればの話だけれど。

『それで……さっきの話の続きは?』
「あ……そうだった」花咲はなさきさんの話題が本題だった。「花咲はなさきさんと風光明媚に行ったりゲームセンターに行ったりして遊んだんだけど……」
『今日の話? だとしたら、学校を抜け出したのかな? それとも放課後?』
「学校を抜け出した」
『そっか。その様子だと振り回されたようだね』

 どの様子なのだろう。僕自身はいつもの僕のつもりなんだけれど、莉杏りあんから見れば違いがあるようだ。やはり莉杏りあんにはかなわないな。かないたいとも思わないけれど。

「まぁ……確かに振り回されたけど……」
『けど?』
花咲はなさきさんのどこに問題があるのかがわからない」
『……ほう?』

 幼馴染が聞きモードに入ったことを察して、僕は続ける。

「いや……確かに学校をサボってたり、自分勝手な行動をしていると敵を作るのはわかる。それに花咲はなさきさんがカリスマ的魅力を持っているのも、なんとなくわかる。でも……そんな人は他にもいるよね?」

 学校をサボる人なんてたくさんいる。自分勝手な人もたくさんいる。カリスマと呼ばれる人だって世界的にはたくさんいるのだろう。
 それが僕には問題には思えない。たしかに問題行動を取るのかもしれないが、そんなのは珍しいことじゃない。
 どうして花咲はなさきさんだけを問題視しているのか、それがわからない。

『……まぁ、そうだね』莉杏りあんの歯切れは悪かった。『たしかにそこは言葉にし辛いんだけども……度合いの問題かな』
「度合い?」
『うん……強いて言うなら、花咲はなさきさんはカリスマじゃない。なんだよ』
「……超……」
『別にスーパーカリスマでも、超次元的カリスマでもいいけどね……要するに、その辺のカリスマとは次元が違う。だから、いろいろ問題が起こるんだ』
「問題とは?」
『例えば……今日キミは学校を抜け出して、花咲はなさきさんと遊びにいったんだよね。その時、彼女についてどう思った?』
「……元気な人だと思った……」
 
 強引な人だとも思ったけれど、ここで伝える必要はないだろう。

『キミならそうだろうね。でも、他の男子が今日のキミと同じ状況に置かれたら、別の感情を抱くんだ』
「別の感情? それは……何?」
『恋心』そうだろうか? 『あるいは、憎悪だよ。あの人の評価は二極化するんだ』
「ああ……それはわかる気がする」

 評価が真っ二つになるのは理解できる。極端に憧れるか、極端に嫌われるかの二択だと思う。場合によっては、極端に嫌いだけど憧れる場合だってあるだろう。
 他人の迷惑を顧みずに行動する。未来のことなんて考えずに動く。そして最終的に何とかしてしまうだけの才能を用いて、問題を解決してしまう。強引で適当で、最強の人生だろう。

『憎悪が敵を作るのは今更言う必要もない。だけど、恋心も敵を作るのさ』
「……」
『多くの男子は花咲はなさきさんのことが好きだけど、花咲はなさきさんはその辺の男子に興味がないからね。花咲はなさきさんのことが好きな男子の中には、自分は花咲はなさきさんと恋人、だと思ってる人もいるだろう』
「……ああ、まぁ、勘違いさせる言動ではあるよね」
『そういうこと』

 花咲はなさきさんは他人との距離感が近い。今日だってすぐに僕の腕をつかむというスキンシップをおこなってきた。人によっては『あれ? これ俺のこと好きなんじゃね?』となってもおかしくない。
 花咲はなさきさんを好きになる人間が1人なら問題ないのだ。だけれど……彼女の才能がそれを許さないということか。

『それとねぇ……彼女なんだか自暴自棄に見えるんだ』
「自暴自棄?」
『うん……これは私の直感だから、的はずれな意見かもしれないけどね』

 そんなことはない。莉杏りあんの直感はよく当たる。当然当たらないこともあるけれど、僕の一晩考えた結論とかよりは信用できる。

 にしても……花咲はなさきさんが自暴自棄? それはどういうことだろう?

 ……むぅ……普通に悩んでしまっている。それもこれも攻略本のせいだ。月影つきかげさんとふうさんのことはかなり細かく書いてあったのに、花咲はなさきさんと雪海ゆきみさんに関しての記述が少ないのだ。
 お得意のネタバレ回避が多量に盛り込まれているのが、花咲はなさきさんと雪海ゆきみさんのシナリオなのだ。

 ……今まで攻略本に頼り切ってたからな……まぁ仕方がない。重要なところは記載されてないが、一応未来は見えている形なのだ。なんとかなるだろう。
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