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雪月風花・雪
第79話
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さてさて……雪海さんとは消しゴムのときに会話したっきりだったな。放課後になったら、さりげなくイベントを開始していこう。
授業中、なんとなく前のほうを見ていると雪海さんを発見した。そりゃ同じクラスなのだからいるのは当然なのだけれど、今まで意識に上っていなかった。
やや斜め後ろから眺める雪海さんは、キレイな黒髪が際立っていた。真面目そうな顔で先生の話に耳を傾けている。すぐに授業への興味を失って窓の外を眺めてしまう僕とは大違いだ。
クラスの学級委員長で成績優秀。しかも美少女……こんな人でも心に闇を抱えているんだなぁ……なんだか意外だ。いや、こんな人だからこそ闇があるものなのだろうか? だとしたら、僕は凡人で良かった。
さて、数学の授業が終わって、
「雪ちゃん雪ちゃん」同じクラスの女子が雪海さんに話しかけた。「さっきの数学のことで質問があるんだけど……」
「うん。何?」
そんな会話の後に、雪海さんは同級生に数学を教え始めた。同級生が授業の質問に、教師ではなく同級生を選ぶ……その辺からも雪海さんへの信頼度がうかがえるな。
「いつもありがとう」説明を受け終わった同級生が言う。「それでさ……昨日見たテレビなんだけど――」
そんな感じで、2人の会話は世間話に移っていった。
雪海さんは……花咲さんとか為人会長、赤星先輩とかと違って、ずっと誰かに囲まれているというタイプではない。どちらかというと孤立しているほうだが、友達がいないわけじゃない。
クラスの大人しい人が集まるグループ、って感じだ。他の人達の明るいノリについていけない人たちでも、雪海さんのグループに所属することができる。
雪海さんのグループ、と便宜上呼んでいるが、おそらく雪海さんはグループのトップではない。今雪海さんと話しているメガネの女子がグループのトップだと思う。雪海さんはそこに所属しているだけだ。所属と言うか……メガネの女子が勝手に引き込んでる感はあるけれど……まぁいいや。
勉強もできる。しかもかわいい。友達関係だって良好。
一見完璧超人に見える雪海雪だが、そんな彼女にも弱点は存在する。豪快な弱点が存在する。
4限目、授業科目は体育。男子は体育館でシャトルラン。女子はグラウンドで走り高跳びをしていた。
僕はシャトルランを早々に脱落して、壁際で力尽きていた。心臓が止まりそうなくらい頑張ったが、記録はほぼ最下位だ。まぁ今まで運動関係の事柄は積み重ねてきてなかったのでしょうがない。
チラリと、体育館の窓からグラウンドを覗いてみる。すると、どうやらちょうど雪海さんが走り高跳びに挑戦するらしい。
……なんだかすでにツッコミどころが……まず棒が低い。歩いて超えられるんじゃないかってくらい低い。あんな低い位置に設置できるのかと驚いてしまうくらいには低い。
そして、雪海さんの体操服が泥だらけだった。なんで走り高跳びであそこまで汚れるのだろう。どこに汚れる要素があるのだろう。飛んだ先には柔らかそうなマットがあるはずなのに……
……雪海さんの白い肌が泥だらけになっている……なんだかそんな姿も魅力的だな……なんて思っていると、雪海さんが走り出した。
言っちゃ悪いが遅い。そんな遅い助走で飛び越えるべき棒の目前までたどり着いて、そこで立ち止まった。せっかく助走をつけたのに立ち止まってどうする。なんのための助走だ。
……たぶんどうやって飛ぶのかわからなくなったんだろうな……雪海さんは迷った末にその場でちょっとだけジャンプして、そのまま棒を落としながらマットに倒れ込んだ。
その場はもはや笑いすら起きない。皆、気まずそうに顔をそらしているだけだった。
そう……要するに彼女は運動音痴だ。マンガでも見たことがないくらいの運動音痴なのだ。
100メートル走で5回転倒。プールで溺れ、死にかける。サッカーでゴールを直接蹴り、足にヒビが入る。バスケットボールが頭に直撃して脳震盪。20キロマラソンの完走時間17時間32分はもはや破られることのない大記録だろう。
……17時間もかけてちゃんと完走するのが凄いよなぁ……僕だったらとっくに諦めている。そしてバスケットボールに関しては……うん、たぶん扉を開けた瞬間だったのだろう。ならばしょうがない。
……まぁ、あれだ。人には得意不得意があるってことだ。
にしても不得意すぎるけれど。
授業中、なんとなく前のほうを見ていると雪海さんを発見した。そりゃ同じクラスなのだからいるのは当然なのだけれど、今まで意識に上っていなかった。
やや斜め後ろから眺める雪海さんは、キレイな黒髪が際立っていた。真面目そうな顔で先生の話に耳を傾けている。すぐに授業への興味を失って窓の外を眺めてしまう僕とは大違いだ。
クラスの学級委員長で成績優秀。しかも美少女……こんな人でも心に闇を抱えているんだなぁ……なんだか意外だ。いや、こんな人だからこそ闇があるものなのだろうか? だとしたら、僕は凡人で良かった。
さて、数学の授業が終わって、
「雪ちゃん雪ちゃん」同じクラスの女子が雪海さんに話しかけた。「さっきの数学のことで質問があるんだけど……」
「うん。何?」
そんな会話の後に、雪海さんは同級生に数学を教え始めた。同級生が授業の質問に、教師ではなく同級生を選ぶ……その辺からも雪海さんへの信頼度がうかがえるな。
「いつもありがとう」説明を受け終わった同級生が言う。「それでさ……昨日見たテレビなんだけど――」
そんな感じで、2人の会話は世間話に移っていった。
雪海さんは……花咲さんとか為人会長、赤星先輩とかと違って、ずっと誰かに囲まれているというタイプではない。どちらかというと孤立しているほうだが、友達がいないわけじゃない。
クラスの大人しい人が集まるグループ、って感じだ。他の人達の明るいノリについていけない人たちでも、雪海さんのグループに所属することができる。
雪海さんのグループ、と便宜上呼んでいるが、おそらく雪海さんはグループのトップではない。今雪海さんと話しているメガネの女子がグループのトップだと思う。雪海さんはそこに所属しているだけだ。所属と言うか……メガネの女子が勝手に引き込んでる感はあるけれど……まぁいいや。
勉強もできる。しかもかわいい。友達関係だって良好。
一見完璧超人に見える雪海雪だが、そんな彼女にも弱点は存在する。豪快な弱点が存在する。
4限目、授業科目は体育。男子は体育館でシャトルラン。女子はグラウンドで走り高跳びをしていた。
僕はシャトルランを早々に脱落して、壁際で力尽きていた。心臓が止まりそうなくらい頑張ったが、記録はほぼ最下位だ。まぁ今まで運動関係の事柄は積み重ねてきてなかったのでしょうがない。
チラリと、体育館の窓からグラウンドを覗いてみる。すると、どうやらちょうど雪海さんが走り高跳びに挑戦するらしい。
……なんだかすでにツッコミどころが……まず棒が低い。歩いて超えられるんじゃないかってくらい低い。あんな低い位置に設置できるのかと驚いてしまうくらいには低い。
そして、雪海さんの体操服が泥だらけだった。なんで走り高跳びであそこまで汚れるのだろう。どこに汚れる要素があるのだろう。飛んだ先には柔らかそうなマットがあるはずなのに……
……雪海さんの白い肌が泥だらけになっている……なんだかそんな姿も魅力的だな……なんて思っていると、雪海さんが走り出した。
言っちゃ悪いが遅い。そんな遅い助走で飛び越えるべき棒の目前までたどり着いて、そこで立ち止まった。せっかく助走をつけたのに立ち止まってどうする。なんのための助走だ。
……たぶんどうやって飛ぶのかわからなくなったんだろうな……雪海さんは迷った末にその場でちょっとだけジャンプして、そのまま棒を落としながらマットに倒れ込んだ。
その場はもはや笑いすら起きない。皆、気まずそうに顔をそらしているだけだった。
そう……要するに彼女は運動音痴だ。マンガでも見たことがないくらいの運動音痴なのだ。
100メートル走で5回転倒。プールで溺れ、死にかける。サッカーでゴールを直接蹴り、足にヒビが入る。バスケットボールが頭に直撃して脳震盪。20キロマラソンの完走時間17時間32分はもはや破られることのない大記録だろう。
……17時間もかけてちゃんと完走するのが凄いよなぁ……僕だったらとっくに諦めている。そしてバスケットボールに関しては……うん、たぶん扉を開けた瞬間だったのだろう。ならばしょうがない。
……まぁ、あれだ。人には得意不得意があるってことだ。
にしても不得意すぎるけれど。
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