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第一章 転生アンマリア
第13話 鼻血の代償
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「はっ!」
私は不意に意識を取り戻すと、そこは見た事のある天井だった。うん、王都にある屋敷の自分の部屋だわ。
「あれ? 確か謁見の間に居たはずなのに、なんでここに居るのかしら……」
私はとにかく状況を思い出してみる。その時だった。
「起きたか、マリー!」
「お父様?!」
父親のゼニーク・ファッティ伯爵が飛び込んできた。
「心配したんだぞ、急に鼻血を出して倒れたからな。ああ、目が覚めてよかった」
こう言いながら、父親は私を抱き締めた。
「大丈夫なの、アンマリア!」
母親のフトラシア・ファッティ伯爵夫人も飛び込んできた。それと同時にスーラまでもがやって来た。とにかく全員が取り乱しており、私がとにかく心配を掛けた事だけは分かった。というわけで、私はベッドの上で体を起こして、
「ご心配お掛けしました。アンマリアはもう大丈夫です」
頭を下げて謝罪しておいた。
だけど、私の心配はこれだけでは終わらなかった。なにせ謁見の間で鼻血を噴いて倒れたので、お咎めが来ないかと戦々恐々としていた。だって、謁見の間なんて場所を(自分の鼻)血で汚したんだもの。首ちょんぱくらいの事だって想像してしまうものよ。でも、父親からの答えは意外なものだった。
「マリー、その事に関してだけど、お咎めはなしだよ。子どもだから緊張でそうなってしまったのだろうと理解してくれていたし、何よりマリー自身がとっさに血を魔法で固めていたからね。謁見の間自体は汚れていないよ」
どうやら私は、薄れいく意識の中でどうにか血を床に零さないように必死に魔法を使っていたらしい。これだけの魔法使いを処罰していいのか議論がなされて、その場に居た者だけの胸三寸で事は収まったようだった。
「ん? 議論がされた……?」
ふと私は思ってしまった。父親の説明には、明らかな時間の経過が読み取れる言い回しがあったのだ。だからこそ、私は恐る恐る聞いてみる事にした。
「お、お父様」
「ん、なんだい?」
「今日は、あれからどれくらい経っておりますか?」
「そうだね、丸二日といったところだろうかな」
父親が顎に触れながら話した言葉に、私は愕然とした。謁見の間で王子たちを見て鼻血を噴いた挙句、丸二日間眠っていたのである。薄れいく意識の中で無理に魔法を使ったから、その反動が出たのではないかというのが医者の診断だった。オーマイガッ!
「残念だけど、マリーはあと数日は安静にしていてもらうよ。2日間も寝ていたんだ、体を急に動かして何かあっては困るからね」
父親はそう言うと、スーラの方を見る。
「スーラ、マリーの事を頼むよ」
「畏まりました、旦那様。このスーラ、精一杯アンマリア様の世話をさせて頂きますので、ご安心下さい」
胸をとんと叩いて答えるスーラはやる気に満ちあふれていた。
というわけで、私は更に2日ほどベッドの上で安静を余儀なくされたのだった。動けるのはトイレの時だけとか、もうやだやだだわ。
結果、2日間寝ていた&食事制限が出ていたにもかかわらず、私の体重はさらに増えていた。いや、54kgとか何なんですかね!
「ふっかーつっ!」
謁見の間に呼ばれてから4日後、私は無事にベッドを出て動けるようになった。医者の診察でも問題なし。ああ、健康っていいわぁ。……これで太ってなければなぁ。私は自分の体形を見て、とにかく大きなため息を吐いた。
早速ステータスを確認する私だけど、体重の項目の54kgを見るたびに気が滅入る。今の私8歳なんですけれど、なんで中学生以降並みに体重があるんですかね? 前世の私が一番太ってた時よりも重いんですけどぉ?!
変な目で見られるのを避けるために心の中で叫んだ私は、気を取り直して洗礼式以降の日課にしている庭いじりへと向かう。出向いた先では、今日もセンマイが元気に庭の手入れをしていた。
「おお、お嬢様。やっと出てこられましたか」
「心配掛けましたね、センマイ。もう大丈夫ですよ」
私は腰を捻ったり軽く跳んだりして健康アピールをする。しかし、跳んだ時の着地音がどすっていうのは正直頂けない。
「ふむ、それだけ動ければ、確かに問題なさそうですな。では、今日は久しぶりに頼みましたぞ」
センマイのその言葉を受けて、私は庭の手入れを始める。貴族の令嬢って思ったよりもやる事がない。淑女教育というのはあるけれど、結構お休みがあったりするのだ。しかも今の私は病み上がり。というわけで今は免除されているので、こうやって自由に動けるのだ。
そうやって、庭いじりをしている最中だった。何やらスーラが慌てたように走ってくる。
「お、お、お嬢様ーっ! た、た、た、大変でございます!」
「スーラ、どうしたの?」
スーラの血相がよくない。よっぽどとんでもない状況が起きたという事は容易に想像はついた。
「すぐに、すぐにお屋敷にお戻り下さい」
「いや、スーラ落ち着いて。とにかく何があって、屋敷に戻らなきゃいけないの?」
私はとにかく混乱するスーラを落ち着かせる。何が言いたいのまったく分からないからだ。
「で、殿下が……、フィレン殿下がお見えになっています!」
「な、な、何ですってーっ?!」
スーラから告げられた衝撃的な言葉に、私はまた気絶しそうになりましたわよ、コノヤロー。
私は不意に意識を取り戻すと、そこは見た事のある天井だった。うん、王都にある屋敷の自分の部屋だわ。
「あれ? 確か謁見の間に居たはずなのに、なんでここに居るのかしら……」
私はとにかく状況を思い出してみる。その時だった。
「起きたか、マリー!」
「お父様?!」
父親のゼニーク・ファッティ伯爵が飛び込んできた。
「心配したんだぞ、急に鼻血を出して倒れたからな。ああ、目が覚めてよかった」
こう言いながら、父親は私を抱き締めた。
「大丈夫なの、アンマリア!」
母親のフトラシア・ファッティ伯爵夫人も飛び込んできた。それと同時にスーラまでもがやって来た。とにかく全員が取り乱しており、私がとにかく心配を掛けた事だけは分かった。というわけで、私はベッドの上で体を起こして、
「ご心配お掛けしました。アンマリアはもう大丈夫です」
頭を下げて謝罪しておいた。
だけど、私の心配はこれだけでは終わらなかった。なにせ謁見の間で鼻血を噴いて倒れたので、お咎めが来ないかと戦々恐々としていた。だって、謁見の間なんて場所を(自分の鼻)血で汚したんだもの。首ちょんぱくらいの事だって想像してしまうものよ。でも、父親からの答えは意外なものだった。
「マリー、その事に関してだけど、お咎めはなしだよ。子どもだから緊張でそうなってしまったのだろうと理解してくれていたし、何よりマリー自身がとっさに血を魔法で固めていたからね。謁見の間自体は汚れていないよ」
どうやら私は、薄れいく意識の中でどうにか血を床に零さないように必死に魔法を使っていたらしい。これだけの魔法使いを処罰していいのか議論がなされて、その場に居た者だけの胸三寸で事は収まったようだった。
「ん? 議論がされた……?」
ふと私は思ってしまった。父親の説明には、明らかな時間の経過が読み取れる言い回しがあったのだ。だからこそ、私は恐る恐る聞いてみる事にした。
「お、お父様」
「ん、なんだい?」
「今日は、あれからどれくらい経っておりますか?」
「そうだね、丸二日といったところだろうかな」
父親が顎に触れながら話した言葉に、私は愕然とした。謁見の間で王子たちを見て鼻血を噴いた挙句、丸二日間眠っていたのである。薄れいく意識の中で無理に魔法を使ったから、その反動が出たのではないかというのが医者の診断だった。オーマイガッ!
「残念だけど、マリーはあと数日は安静にしていてもらうよ。2日間も寝ていたんだ、体を急に動かして何かあっては困るからね」
父親はそう言うと、スーラの方を見る。
「スーラ、マリーの事を頼むよ」
「畏まりました、旦那様。このスーラ、精一杯アンマリア様の世話をさせて頂きますので、ご安心下さい」
胸をとんと叩いて答えるスーラはやる気に満ちあふれていた。
というわけで、私は更に2日ほどベッドの上で安静を余儀なくされたのだった。動けるのはトイレの時だけとか、もうやだやだだわ。
結果、2日間寝ていた&食事制限が出ていたにもかかわらず、私の体重はさらに増えていた。いや、54kgとか何なんですかね!
「ふっかーつっ!」
謁見の間に呼ばれてから4日後、私は無事にベッドを出て動けるようになった。医者の診察でも問題なし。ああ、健康っていいわぁ。……これで太ってなければなぁ。私は自分の体形を見て、とにかく大きなため息を吐いた。
早速ステータスを確認する私だけど、体重の項目の54kgを見るたびに気が滅入る。今の私8歳なんですけれど、なんで中学生以降並みに体重があるんですかね? 前世の私が一番太ってた時よりも重いんですけどぉ?!
変な目で見られるのを避けるために心の中で叫んだ私は、気を取り直して洗礼式以降の日課にしている庭いじりへと向かう。出向いた先では、今日もセンマイが元気に庭の手入れをしていた。
「おお、お嬢様。やっと出てこられましたか」
「心配掛けましたね、センマイ。もう大丈夫ですよ」
私は腰を捻ったり軽く跳んだりして健康アピールをする。しかし、跳んだ時の着地音がどすっていうのは正直頂けない。
「ふむ、それだけ動ければ、確かに問題なさそうですな。では、今日は久しぶりに頼みましたぞ」
センマイのその言葉を受けて、私は庭の手入れを始める。貴族の令嬢って思ったよりもやる事がない。淑女教育というのはあるけれど、結構お休みがあったりするのだ。しかも今の私は病み上がり。というわけで今は免除されているので、こうやって自由に動けるのだ。
そうやって、庭いじりをしている最中だった。何やらスーラが慌てたように走ってくる。
「お、お、お嬢様ーっ! た、た、た、大変でございます!」
「スーラ、どうしたの?」
スーラの血相がよくない。よっぽどとんでもない状況が起きたという事は容易に想像はついた。
「すぐに、すぐにお屋敷にお戻り下さい」
「いや、スーラ落ち着いて。とにかく何があって、屋敷に戻らなきゃいけないの?」
私はとにかく混乱するスーラを落ち着かせる。何が言いたいのまったく分からないからだ。
「で、殿下が……、フィレン殿下がお見えになっています!」
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