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第一章 転生アンマリア
第29話 イベントの先取りでした
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その日のテッテイの街では、私が倒したスタンピードの魔物の素材が解体されていた。もやが魔物に変わり切る前に対処したので、数はそれほど多くはなかったのだけど、テッポウギョやサハギン、アクアシューターといった魚系や水鳥の魔物に紛れて、なんと恐ろしい事にケルピーまで混ざっていた。ケルピーというのは上半身というか前半分が馬で、後ろ足に当たる部分が魚という水棲の魔物である。水辺にやって来た獲物を水中に引き込んでむさぼるという凶暴な魔物である。ちなみに陸に居るからといって安心はできない。なにせ後ろ足も馬になって追いかけ回してくるのだから。早めに対処できてよかった。
まあ、私たちがスタンピードの魔物の構成を聞いたのは夕食の席だったわけだけれども、自領の魔物をよく知るサクラの表情は青ざめていた。
「なあ、ケルピーって強いのか?」
「強いも何も、わたくしたちなどまともに相手ができる魔物ではありません。水中どころか陸上でも動きが速いですし、その蹴りは一発で致命傷です。今回は運良く冒険者が倒して下さいましたが、普通ならわたくしたち全員が死んでいたはずですからね」
タンの疑問に、サクラは半分怒りながら答えていた。もう半分は呆れである。
「はっ、それほどまでに強いというのなら、それは戦ってみたかったな。俺様の目標は、王国、いや世界一の騎士となる事だからな。うわっはっはっはっ!」
ところがどっこい、タンは逆に燃えていたようである。正直言って、タンの残念なところはその頭の弱さなのよね。筋肉がすべて解決してくれるような考え方で、魔法だって無意識の身体強化しか使えないんだもの。サクラも脳筋だけど、それ以上に脳筋の極みみたいなところがある。
「はあ、そんなに言うのでしたら、お父様に掛け合って、体験入隊でもされてみるとよろしいかと思います。言っておきますけれど、我がバッサーシ家の鍛錬は王都の騎士団とは比べ物になりませんので、ご了承下さい」
「望むところだ!」
サクラが脅すように言うと、タンは間髪入れずに乗ってきた。さすがにこれにはサクラもびびって目を丸くしていた。さすが脳筋。
とまぁ、サクラとタンがメインになって喋っていた夕食は、あの件について特にツッコミがされる事なく終わったので、私は安心して客室に戻っていた。
客室に戻ると、私はサクラと部屋の中でくつろぐ。かと思いきや、鍛錬は欠かせないという事で、二人してふくよかな肉体でストレッチをしていた。サクラから教えられた鍛錬法を実行しているのである。うーんさすがにこのまん丸な体形でストレッチはきついわね。
「アンマリア様」
「何でございますでしょうか、ラム様」
ラムが話し掛けてきたので、反応する私。アキレス腱を伸ばしてる最中で話すのはやめた方がいいとは思うんだけど、まぁ、格上の公爵令嬢から話し掛けられたら反応せざるを得ない。
「わたくしにも魔法を教えて頂けませんか?」
ラムの目が輝いている。私が放った雷魔法が相当に印象に残ったらしい。しかし、洗礼式の記憶が確かなら、ラムの適性は風と水。雷魔法は使えたとしてもしょぼいものにしかならないはずである。とはいえ、魔法の根本は属性が違っても同じなので、せっかく興味を持っているのなら私が手伝ってもいいかなと思った。
「承知致しました。私でよろしければそうさせて頂きます」
さすがにアキレス腱伸ばしの体勢での会話はきつかったので、私は姿勢を直立に戻した上で話をする。いや、マジでキツイ。
しかし、私たちの間で話がついても、父親たちを説得できなければ実行に移す事はできない。なにせ私たちはデビュタントを終えたとはいえ、まだ8歳の子どもだからだ。
ところが、今はもうさすがに夕食後で時間が遅い。この話は明日にでもする事にしよう。スタンピードのせいで滞在が一日延びてしまったので、その気になればいつでも話ができるはずだ。帰りの馬車だってある。
そう思って楽観視していた私だったけれど、よく思えばバッサーシ辺境伯領に私の両親がついて来ていなかったのである。なにせ父親は城で要職に就いているのだ。私は正直頭を抱えた。
(まっ、公爵様を説得できれば、お父様たちはなし崩し的に了承してくれるわよね!)
悩みに悩んだものだが、最終的にもうどうにでもなれと考える事を放棄したのだった。一人でころころと動く私を見ていたラムがこらえきれずに笑っていたのに気が付いて、私はかあっと顔を真っ赤にしたのはみんなに内緒だよ!
そうして、寝床に入った私は、夕方のスタンピードについてちょっと思い出していた。
(聞いた構成を思い出してみたけれど、よくよく思えば夏合宿のタンルートのイベントよね、あのスタンピード)
そう、出現した魔物の構成が、スタンピードイベントの構成そのものだったのだ。戦闘シーンではタンとサクラとパーティーを組んで、魔物の群れとの10連戦をこなすというものだった。そのボスとして君臨したのが話題に出たケルピーなのである。高い素早さと攻撃力でごり押ししてくる魔物で、育成が中途半端ならじり貧となって好感度を大幅に下げるかゲームオーバーとなる魔のイベントだった。敵の構成のせいで魔法と物理の両方を育てないと対処できないので、多くのプレイヤーが初見で沈んだものである。
(それを雷魔法一発で沈めちゃったのかあ、私ったら……)
なんともやっちゃった感が残る私だったけど、終わった事なので気にしない事にしたのだった。
まあ、私たちがスタンピードの魔物の構成を聞いたのは夕食の席だったわけだけれども、自領の魔物をよく知るサクラの表情は青ざめていた。
「なあ、ケルピーって強いのか?」
「強いも何も、わたくしたちなどまともに相手ができる魔物ではありません。水中どころか陸上でも動きが速いですし、その蹴りは一発で致命傷です。今回は運良く冒険者が倒して下さいましたが、普通ならわたくしたち全員が死んでいたはずですからね」
タンの疑問に、サクラは半分怒りながら答えていた。もう半分は呆れである。
「はっ、それほどまでに強いというのなら、それは戦ってみたかったな。俺様の目標は、王国、いや世界一の騎士となる事だからな。うわっはっはっはっ!」
ところがどっこい、タンは逆に燃えていたようである。正直言って、タンの残念なところはその頭の弱さなのよね。筋肉がすべて解決してくれるような考え方で、魔法だって無意識の身体強化しか使えないんだもの。サクラも脳筋だけど、それ以上に脳筋の極みみたいなところがある。
「はあ、そんなに言うのでしたら、お父様に掛け合って、体験入隊でもされてみるとよろしいかと思います。言っておきますけれど、我がバッサーシ家の鍛錬は王都の騎士団とは比べ物になりませんので、ご了承下さい」
「望むところだ!」
サクラが脅すように言うと、タンは間髪入れずに乗ってきた。さすがにこれにはサクラもびびって目を丸くしていた。さすが脳筋。
とまぁ、サクラとタンがメインになって喋っていた夕食は、あの件について特にツッコミがされる事なく終わったので、私は安心して客室に戻っていた。
客室に戻ると、私はサクラと部屋の中でくつろぐ。かと思いきや、鍛錬は欠かせないという事で、二人してふくよかな肉体でストレッチをしていた。サクラから教えられた鍛錬法を実行しているのである。うーんさすがにこのまん丸な体形でストレッチはきついわね。
「アンマリア様」
「何でございますでしょうか、ラム様」
ラムが話し掛けてきたので、反応する私。アキレス腱を伸ばしてる最中で話すのはやめた方がいいとは思うんだけど、まぁ、格上の公爵令嬢から話し掛けられたら反応せざるを得ない。
「わたくしにも魔法を教えて頂けませんか?」
ラムの目が輝いている。私が放った雷魔法が相当に印象に残ったらしい。しかし、洗礼式の記憶が確かなら、ラムの適性は風と水。雷魔法は使えたとしてもしょぼいものにしかならないはずである。とはいえ、魔法の根本は属性が違っても同じなので、せっかく興味を持っているのなら私が手伝ってもいいかなと思った。
「承知致しました。私でよろしければそうさせて頂きます」
さすがにアキレス腱伸ばしの体勢での会話はきつかったので、私は姿勢を直立に戻した上で話をする。いや、マジでキツイ。
しかし、私たちの間で話がついても、父親たちを説得できなければ実行に移す事はできない。なにせ私たちはデビュタントを終えたとはいえ、まだ8歳の子どもだからだ。
ところが、今はもうさすがに夕食後で時間が遅い。この話は明日にでもする事にしよう。スタンピードのせいで滞在が一日延びてしまったので、その気になればいつでも話ができるはずだ。帰りの馬車だってある。
そう思って楽観視していた私だったけれど、よく思えばバッサーシ辺境伯領に私の両親がついて来ていなかったのである。なにせ父親は城で要職に就いているのだ。私は正直頭を抱えた。
(まっ、公爵様を説得できれば、お父様たちはなし崩し的に了承してくれるわよね!)
悩みに悩んだものだが、最終的にもうどうにでもなれと考える事を放棄したのだった。一人でころころと動く私を見ていたラムがこらえきれずに笑っていたのに気が付いて、私はかあっと顔を真っ赤にしたのはみんなに内緒だよ!
そうして、寝床に入った私は、夕方のスタンピードについてちょっと思い出していた。
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そう、出現した魔物の構成が、スタンピードイベントの構成そのものだったのだ。戦闘シーンではタンとサクラとパーティーを組んで、魔物の群れとの10連戦をこなすというものだった。そのボスとして君臨したのが話題に出たケルピーなのである。高い素早さと攻撃力でごり押ししてくる魔物で、育成が中途半端ならじり貧となって好感度を大幅に下げるかゲームオーバーとなる魔のイベントだった。敵の構成のせいで魔法と物理の両方を育てないと対処できないので、多くのプレイヤーが初見で沈んだものである。
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