75 / 500
第三章 学園編
第75話 不可解な謎
しおりを挟む
私は学園が休みの日を使って、父親の職場見学のついでにリブロ王子に会うつもりでお城へやって来た。一応婚約者なんだから問題ないでしょ?
ただ、予想外だったのはモモもついて来た事くらいかしらね。まあ、父親の仕事っぷりを見に来たわけだから問題はないんだけど。
「スーラ、モモの事をお願いね。私はフィレン殿下にお会いしてくるから」
「畏まりました、アンマリアお嬢様。ですが、おひとりで大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ。そのために案内役も呼んであるんだから」
私がスーラに説明すると、父親の働く部署の入口に居る男性へと視線を移した。フィレン王子の側近であるスーペアである。それならばと、スーラは安心したようである。
というわけで、私はこっそりとスーペアの案内でフィレン王子との面会に臨んだ。
「お久しぶりでございます、フィレン殿下」
カーテシーで挨拶をする私。私の姿を見たフィレン王子は、安心したような表情を見せていた。いや、世の中のデブには失礼だとは思うけれど、デブを見て安心されるとは正直思ってもみなかった。なんて言ってもフィレン王子の攻略可能体重は40~55kgなんだから、120kgある私はその視野にすら入れないはずなんだもの。
確かに私はデブだとはいっても、スーラの協力もあってそれなりに見られるデブにはなっている。脂ぎってはいないし、瞳だってつぶらだ。髪の毛も痛まないようには手入れを気を付けているし、とにかくきれいでいるための努力は惜しんでいなかった。だからといっても、フィレン王子に優しい微笑みを向けられるなんて、ちーっとも思っていなかったのだ。
……予想に反して、目の前のフィレン王子が私を見る目は優しかった。惚れてるのかと尋ねてもいいくらいの優しい微笑みである。嬉しい誤算ではあるけれども、今日の用事はとりあえずそれじゃない。
「フィレン殿下、質問よろしいでしょうか」
「なんだい、アンマリア」
「殿下の弟のリブロ殿下の事でございます」
私がこう言葉を発すると、フィレン王子の表情が曇ったようにも見えた。しかし、私とサキは、フィレン王子とリブロ王子の婚約者。まだどちらがどちらとは決定されていないのである。それに、サキはゲームと同じようにちゃんとフィレン王子の攻略対象となる体重をキープしている。私の方からだって、お世話かも知れないけれど、きれいに体を整えるための石けんを送っておいた。
ええ、そうなのよ。魔道具は作っていないとは言ったけれど、それ以外のものを作っていないとは言ってないわ。材料こそ集めるのは大変だったけれど、私の魔法を使えばそんなの余裕よ。これがあるからこそ、私はこれだけ太っていながらも美貌を保っていられるのよ。ちなみにサキだって学園で見かけるたびにきれいになっていた気がするわ。素材がいいものね。
っと、話が脱線してしまったわね。
「フィレン殿下の誕生パーティーは行われているというのに、リブロ殿下の誕生パーティはどういうわけか開かれたという話を聞いた事がございません。第二王子だからといってもこれはあまりにも不自然ですし、婚約者である私やサキにもそういった案内がない事は、さすがにおかしいと思います」
私は、フィレン王子に半ば愚痴のような言葉をぶつけた。
これに対して、フィレン王子は黙り込んでいる。答えられないのか、答えると不都合があるのかは分からない。それでも一言も発する事がないのだ。
だけれでも、これに関してははっきりさせなければならないと私は思っている。だって、婚約者を決める時などにはリブロ王子は顔を出していたのだ。誕生パーティーを開かないというのは不自然極まりない話なのだ。これはまるで、ゲームで学園2年目になるまで一切顔を出す事がなかった状況の再現のようで気持ちが悪いのである。しかも、2年目になっても登場するのは確率なのだから、それこそ現実世界となれば最悪の事すら想定せざるを得ない。そのせいで私は必死になってしまっていた。
「アンマリア!」
フィレン王子が突然叫ぶ。その大声に、私は体をびくっと震わせた。
「君はそんなにあいつの事が気になるのかい?」
「当たり前ではありませんか。私たちはまだどちらがどちらというのではなく、2対2という浮動的な婚約者の状態です。でしたら、そのお相手を気に掛けるというのは当然ではございませんか?」
フィレン王子の剣幕が鋭いものの、私だって負けてはいない。このままではリブロ王子は秘匿された王子扱いとなってしまうのだ。私はとにかくフィレン王子の脅しには屈しなかった。
それにしても、ここまで感情的になったフィレン王子というのは初めて見る。普段は温厚なフィレン王子がここまで豹変する、リブロ王子を取り巻く環境とは一体どういうものなのだろうか。こうなってくると、怖いというよりもなんかこう、正義感じみた何かといった感じである。
こうして始まった私とフィレン王子との間の会話である。
ただ、予想外だったのはモモもついて来た事くらいかしらね。まあ、父親の仕事っぷりを見に来たわけだから問題はないんだけど。
「スーラ、モモの事をお願いね。私はフィレン殿下にお会いしてくるから」
「畏まりました、アンマリアお嬢様。ですが、おひとりで大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ。そのために案内役も呼んであるんだから」
私がスーラに説明すると、父親の働く部署の入口に居る男性へと視線を移した。フィレン王子の側近であるスーペアである。それならばと、スーラは安心したようである。
というわけで、私はこっそりとスーペアの案内でフィレン王子との面会に臨んだ。
「お久しぶりでございます、フィレン殿下」
カーテシーで挨拶をする私。私の姿を見たフィレン王子は、安心したような表情を見せていた。いや、世の中のデブには失礼だとは思うけれど、デブを見て安心されるとは正直思ってもみなかった。なんて言ってもフィレン王子の攻略可能体重は40~55kgなんだから、120kgある私はその視野にすら入れないはずなんだもの。
確かに私はデブだとはいっても、スーラの協力もあってそれなりに見られるデブにはなっている。脂ぎってはいないし、瞳だってつぶらだ。髪の毛も痛まないようには手入れを気を付けているし、とにかくきれいでいるための努力は惜しんでいなかった。だからといっても、フィレン王子に優しい微笑みを向けられるなんて、ちーっとも思っていなかったのだ。
……予想に反して、目の前のフィレン王子が私を見る目は優しかった。惚れてるのかと尋ねてもいいくらいの優しい微笑みである。嬉しい誤算ではあるけれども、今日の用事はとりあえずそれじゃない。
「フィレン殿下、質問よろしいでしょうか」
「なんだい、アンマリア」
「殿下の弟のリブロ殿下の事でございます」
私がこう言葉を発すると、フィレン王子の表情が曇ったようにも見えた。しかし、私とサキは、フィレン王子とリブロ王子の婚約者。まだどちらがどちらとは決定されていないのである。それに、サキはゲームと同じようにちゃんとフィレン王子の攻略対象となる体重をキープしている。私の方からだって、お世話かも知れないけれど、きれいに体を整えるための石けんを送っておいた。
ええ、そうなのよ。魔道具は作っていないとは言ったけれど、それ以外のものを作っていないとは言ってないわ。材料こそ集めるのは大変だったけれど、私の魔法を使えばそんなの余裕よ。これがあるからこそ、私はこれだけ太っていながらも美貌を保っていられるのよ。ちなみにサキだって学園で見かけるたびにきれいになっていた気がするわ。素材がいいものね。
っと、話が脱線してしまったわね。
「フィレン殿下の誕生パーティーは行われているというのに、リブロ殿下の誕生パーティはどういうわけか開かれたという話を聞いた事がございません。第二王子だからといってもこれはあまりにも不自然ですし、婚約者である私やサキにもそういった案内がない事は、さすがにおかしいと思います」
私は、フィレン王子に半ば愚痴のような言葉をぶつけた。
これに対して、フィレン王子は黙り込んでいる。答えられないのか、答えると不都合があるのかは分からない。それでも一言も発する事がないのだ。
だけれでも、これに関してははっきりさせなければならないと私は思っている。だって、婚約者を決める時などにはリブロ王子は顔を出していたのだ。誕生パーティーを開かないというのは不自然極まりない話なのだ。これはまるで、ゲームで学園2年目になるまで一切顔を出す事がなかった状況の再現のようで気持ちが悪いのである。しかも、2年目になっても登場するのは確率なのだから、それこそ現実世界となれば最悪の事すら想定せざるを得ない。そのせいで私は必死になってしまっていた。
「アンマリア!」
フィレン王子が突然叫ぶ。その大声に、私は体をびくっと震わせた。
「君はそんなにあいつの事が気になるのかい?」
「当たり前ではありませんか。私たちはまだどちらがどちらというのではなく、2対2という浮動的な婚約者の状態です。でしたら、そのお相手を気に掛けるというのは当然ではございませんか?」
フィレン王子の剣幕が鋭いものの、私だって負けてはいない。このままではリブロ王子は秘匿された王子扱いとなってしまうのだ。私はとにかくフィレン王子の脅しには屈しなかった。
それにしても、ここまで感情的になったフィレン王子というのは初めて見る。普段は温厚なフィレン王子がここまで豹変する、リブロ王子を取り巻く環境とは一体どういうものなのだろうか。こうなってくると、怖いというよりもなんかこう、正義感じみた何かといった感じである。
こうして始まった私とフィレン王子との間の会話である。
7
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる