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第五章 2年目前半
第236話 拡張版、最初のイベント
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表面上、サーロイン王国、ミール王国、ベジタリウス王国の三国の関係は良好である。
だが、それはあくまでも王家レベルの話であって、少し下の貴族のあたりになると少々空気が違う。国内の貴族たちも一枚岩というわけではなかった。王家と歩調を合わせる者が多いのだが、中には昔の考えを引きずる者も存在する。いわゆる過激派といわれる派閥だって存在するわけで、サーロイン王国では警戒が強まっているわけだった。
それに伴って、私の父親も忙しく動いていた。国の大臣を務める父親は、防衛に対しても責任を負っているのである。洗礼式で受けた私の恩恵というものに強く反応したのもそのためだった。普段から国を守るために腐心しているのなら、まあそうなるのも仕方ないわよね。小さい頃の私はそんな事知らなかったけど。
「お父様、仕事も体調も大丈夫ですか?」
先日のサクラと話をした帰りに街の中の警備を改めて確認してみたのだけれど、やっぱり巡回している兵士の数が増えていた。
それを踏まえた上で、父親の顔色を見てちょっと心配になってしまった私なのである。
思った以上に父親の顔色が悪い。せっかく痩せてきているというのに、このままじゃ過労で倒れかねない。まったくどうしたらいいものだろうか。
「ああ悪いね、マリー。大丈夫だよ、誕生祭を乗り越えられれば仕事は減るはずだから」
「いけません。それだけ顔色が悪いと心配になります。食べたらすぐに寝て下さい、お父様」
バンとテーブルを叩く私。令嬢としての振る舞いとしてはよくないのだろうが、さすがに父親のやつれた姿を見るわけにはいかない。私は強く父親に意見した。
私の唐突の行動に、モモもエスカもびっくりしている。ここまで強く言うのも滅多にないから仕方がないかな。
「むぅ、しかしだな。少なくとも王城内の警備計画を仕上げておかねば、当日何かあっては困るだろう?」
「いいえ、お父様。もう今の段階で計画しても遅いくらいです。もし不穏な輩が居たとしたら、すでに潜入していると見てもよろしいかと思います」
言い訳をして仕事をしようとする父親に、私は鋭く意見する。魔法という力があるこの世界なら、人員を割いての警戒など限界があるし簡単に突破されてしまう。ならば、ここは魔法の強力な人物が当たるのが一番ではないだろうか。
「お父様、明日、私とエスカ王女殿下を城に入れさせて頂けません? そこでミズーナ王女殿下と会わせて頂ければ、もう警備の心配は要りませんわよ」
私の意見に首を傾げる父親。一体娘は何を考えているのだろうと頭に疑問符が浮かんでいるのが見える。
「ファッティ伯爵、ここはアンマリアの言う通り、私たちにお任せ頂けませんでしょうか」
混乱する父親に、エスカが王女らしい態度で声を掛けている。いやぁ、普段の態度とだいぶ違わないかしらね、エスカ。
しかし、ここでは他国とはいえども、王女からの言葉となるとそれなりに意味が重かった。父親はものすごく悩んだものだが、王族からの申し出を断れるわけもなかった。
「しょ、承知致しました。では、王女殿下、お頼み申します」
どんと自信たっぷりに構えたエスカに、父親は完全に折れてしまったのであった。
そして、約束した翌日。私とエスカは学園が終わってから城へと出向いていた。もう4日くらいしかないので、もう急ぐべきだろう。
「分かりました。それは拡張版にある私のストーリーのイベントですね。実は三国の王子たちと私が協力して暗殺者と戦うというとんでもイベントなんですよ、これが」
ミズーナ王女の言葉に、私とエスカはぽかんとするばかりである。エスカは夢で拡張版の話を少し知っていたとはいえど、まさかそんなイベントがあるとは思っていなかった。
「まあ、1年目のイベントですので、難易度は簡単なんですけれどね。ですが、ゲームと同じような感覚でいると痛い目に遭いますからね。油断はできません」
ミズーナ王女は実に真剣な表情をしていた。私同様にゲームと現実の違いにしっかりと地に足をつけているのだろう。実に頼りがいのある表情だった。
ただ、痩せているエスカ、ちょっとぽっちゃりの私、かなり太っているミズーナ王女と、絵面としてはかなりきついものがある。でも、私たちだけだからなんとか耐えられるようなものだった。
「暗殺者たちを排除するというのなら、私たちの魔法を使えば可能でしょうね。防護壁を張る魔法を使えますか? アンマリア」
ミズーナ王女が私に話を振ってくる。
「ええ、張れるわよ。というか、ヒロインなら普通に持っている補助魔法よね?」
私が聞き返すと、ミズーナ王女もエスカもこくりと頷いていた。さすが二人ともやり込んでいるだけの事はある。
「ですから、城全体を覆うようにその魔法を張り巡らせるんです。悪意や害意を持っていれば、その領域の外に弾き出されるような機能を持たせてね」
「うう、闇と水の魔法しか使えない私じゃ無理じゃないのよ……」
エスカは非常に悔しそうな顔をしていた。まあ、この魔法は光と土でしか習得できないものね。対極の属性の魔法だけにエスカには扱えるものではなかったのだ。
「それじゃアンマリア、張りましょうか」
「ええ、分かったわ」
私とミズーナ王女は手を取り合うと、目を閉じて集中する。そして、しばらくすると私たちから光があふれて城全体を不思議な光が包み込んだのだった。
だが、それはあくまでも王家レベルの話であって、少し下の貴族のあたりになると少々空気が違う。国内の貴族たちも一枚岩というわけではなかった。王家と歩調を合わせる者が多いのだが、中には昔の考えを引きずる者も存在する。いわゆる過激派といわれる派閥だって存在するわけで、サーロイン王国では警戒が強まっているわけだった。
それに伴って、私の父親も忙しく動いていた。国の大臣を務める父親は、防衛に対しても責任を負っているのである。洗礼式で受けた私の恩恵というものに強く反応したのもそのためだった。普段から国を守るために腐心しているのなら、まあそうなるのも仕方ないわよね。小さい頃の私はそんな事知らなかったけど。
「お父様、仕事も体調も大丈夫ですか?」
先日のサクラと話をした帰りに街の中の警備を改めて確認してみたのだけれど、やっぱり巡回している兵士の数が増えていた。
それを踏まえた上で、父親の顔色を見てちょっと心配になってしまった私なのである。
思った以上に父親の顔色が悪い。せっかく痩せてきているというのに、このままじゃ過労で倒れかねない。まったくどうしたらいいものだろうか。
「ああ悪いね、マリー。大丈夫だよ、誕生祭を乗り越えられれば仕事は減るはずだから」
「いけません。それだけ顔色が悪いと心配になります。食べたらすぐに寝て下さい、お父様」
バンとテーブルを叩く私。令嬢としての振る舞いとしてはよくないのだろうが、さすがに父親のやつれた姿を見るわけにはいかない。私は強く父親に意見した。
私の唐突の行動に、モモもエスカもびっくりしている。ここまで強く言うのも滅多にないから仕方がないかな。
「むぅ、しかしだな。少なくとも王城内の警備計画を仕上げておかねば、当日何かあっては困るだろう?」
「いいえ、お父様。もう今の段階で計画しても遅いくらいです。もし不穏な輩が居たとしたら、すでに潜入していると見てもよろしいかと思います」
言い訳をして仕事をしようとする父親に、私は鋭く意見する。魔法という力があるこの世界なら、人員を割いての警戒など限界があるし簡単に突破されてしまう。ならば、ここは魔法の強力な人物が当たるのが一番ではないだろうか。
「お父様、明日、私とエスカ王女殿下を城に入れさせて頂けません? そこでミズーナ王女殿下と会わせて頂ければ、もう警備の心配は要りませんわよ」
私の意見に首を傾げる父親。一体娘は何を考えているのだろうと頭に疑問符が浮かんでいるのが見える。
「ファッティ伯爵、ここはアンマリアの言う通り、私たちにお任せ頂けませんでしょうか」
混乱する父親に、エスカが王女らしい態度で声を掛けている。いやぁ、普段の態度とだいぶ違わないかしらね、エスカ。
しかし、ここでは他国とはいえども、王女からの言葉となるとそれなりに意味が重かった。父親はものすごく悩んだものだが、王族からの申し出を断れるわけもなかった。
「しょ、承知致しました。では、王女殿下、お頼み申します」
どんと自信たっぷりに構えたエスカに、父親は完全に折れてしまったのであった。
そして、約束した翌日。私とエスカは学園が終わってから城へと出向いていた。もう4日くらいしかないので、もう急ぐべきだろう。
「分かりました。それは拡張版にある私のストーリーのイベントですね。実は三国の王子たちと私が協力して暗殺者と戦うというとんでもイベントなんですよ、これが」
ミズーナ王女の言葉に、私とエスカはぽかんとするばかりである。エスカは夢で拡張版の話を少し知っていたとはいえど、まさかそんなイベントがあるとは思っていなかった。
「まあ、1年目のイベントですので、難易度は簡単なんですけれどね。ですが、ゲームと同じような感覚でいると痛い目に遭いますからね。油断はできません」
ミズーナ王女は実に真剣な表情をしていた。私同様にゲームと現実の違いにしっかりと地に足をつけているのだろう。実に頼りがいのある表情だった。
ただ、痩せているエスカ、ちょっとぽっちゃりの私、かなり太っているミズーナ王女と、絵面としてはかなりきついものがある。でも、私たちだけだからなんとか耐えられるようなものだった。
「暗殺者たちを排除するというのなら、私たちの魔法を使えば可能でしょうね。防護壁を張る魔法を使えますか? アンマリア」
ミズーナ王女が私に話を振ってくる。
「ええ、張れるわよ。というか、ヒロインなら普通に持っている補助魔法よね?」
私が聞き返すと、ミズーナ王女もエスカもこくりと頷いていた。さすが二人ともやり込んでいるだけの事はある。
「ですから、城全体を覆うようにその魔法を張り巡らせるんです。悪意や害意を持っていれば、その領域の外に弾き出されるような機能を持たせてね」
「うう、闇と水の魔法しか使えない私じゃ無理じゃないのよ……」
エスカは非常に悔しそうな顔をしていた。まあ、この魔法は光と土でしか習得できないものね。対極の属性の魔法だけにエスカには扱えるものではなかったのだ。
「それじゃアンマリア、張りましょうか」
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