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第七章 3年目前半
第333話 全部吸っておしまい
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エスカたちがアロマキャンドル作りに熱中している頃、私は伯父と領地の話をしていた。せっかく父親の領地に来たのだから、少しくらいは細かく実情を把握しておきたいのよ。
そんなわけで、私は伯父にひたすら先日の視察の事も含めて、領地の事を根掘り葉掘りと伯父から聞き出していた。
「やけに細かく聞いてくるな」
「そりゃ、自分の親の領地の事ですからね。どちらかの殿下に嫁ぐとはいっても、自分の家の事くらいはしっかり把握しておきたいんです」
質問に対して私が答えると、感心したように唸る伯父だった。
私がここまでファッティ領の事を知りたがるのは、実のところわけがあった。
エスカがやりたがっているハーブやアロマ。これらの情報を押さえるためだった。私としても少しかじっていたので興味があるんだもの。だから、そのあたりの情報も気になるというわけよ。
実際にこの伯爵邸の庭にもハーブは何種類かあった。これの生産量を増やせば、エスカが満足できるだけの量を確保できるはずだもの。
私は伯父といろいろと話を進めていく。とりあえずは、庭にある分を収穫してから乾燥させて、王都まで時々運ぶというような形に決まった。
それというのも、私たちは学園での授業があるからだ。瞬間移動魔法があるからその気になればいつでも来れるとはいえ、魔力の消費量が大きいので現実的ではない。余裕を持って来れるのも次の夏休みまでないわけなので、そういう形に落ち着いたのだった。
効果が実証できれば生産は増やせるわけだし、やってみる価値はあるはずだもの。
エスカたちがアロマキャンドルを完成させる頃には、私も伯父との間で話を完全に詰めに入っていたのだった。
夕食の時間になると食堂に向かう私と伯父。
食堂に入った瞬間、まあこれでもかという柑橘のにおいに思わず顔をしかめてしまう。
「エスカってば、ここでアロマキャンドルを作ったのね?」
もうこれは酷いとしか言いようのない部屋の状態だった。これは食堂のセッティングをする使用人も大変だったでしょうね。私は使用人に対して心の中で謝罪をしながら労っておく。
「この領地は柑橘であふれているとはいっても、さすがにこれは厳しいな……」
伯父にまでこう言われる始末である。
さすがに見てられないなと、私は収納魔法から魔石を1個取り出すと、そこに魔法を使って柑橘の香りを集めてしまう。
エスカが使う闇魔法の応用に風魔法を加えた特殊な魔法である。八属性全部使える私だからできる荒業である。
私が魔法を使うと、食堂に漂っていた強烈な柑橘香りがすっかり消え去ってしまっていた。
「アンマリア、今のは?」
「私の魔法ですね。この魔石に柑橘の香りを集めたんです。その方法は秘密ですよ」
人差し指を唇に当てながら、意地悪そうに笑う私。その姿に伯父はどう反応していいのか分からない感じに戸惑っていた。
そこへ、香りをどうにかしてきたエスカたちがやって来た。
「あれ?」
食堂に入るや否や、エスカが顔をしかめている。
「アンマリアが居るじゃないの。という事は香りが消えているのはあなたのせいね?」
そう言いながら私に詰め寄ってくる。なんでそこまで怒った顔をしているのかしらね。
「エスカってば、なんでそんなに怒っているのよ」
質問に答えないで質問を返す私。この様子だと、まともに答えたってちゃんとした反応が返ってくるとは思えないものね。
「私の質問に答えなさいよ!」
当然ながら、怒っているエスカから返ってきた言葉はそれだった。思った通りの反応でつい笑ってしまう。
「エスカの魔法を応用してみたのよ。においはここにあるわ」
そう言いながら、私はさっきの魔石をエスカに見せつける。それを見たエスカが目を丸くしながら、魔石を持つ私の手をがしっと勢いよく掴んだ。
「こ、これは!」
顔を近付けて凝視するエスカ。そして、顔を上げて今度は私の顔をじっと見てくる。
「なによ、この反則的な物体は!」
魔石を指差して大声を出すエスカ。そういう反応になるのも分かるけど、予想通りの反応過ぎてかえって笑いそうになってしまう。
「簡単に言うと、吸着剤のような感じにして、魔法で魔石ににおいを吸わせたって感じよ」
「何それ。そんな事ができるわけ?!」
簡単に説明すると、エスカがさらに食いついてきた。あっ、これはちょっと予想外。
「ほら、エスカがブラックホールの話をしたじゃないの。それを応用して、闇魔法で吸い付けるようにして、風魔法でその範囲を広めたっていう……」
「素晴らしいわ!」
まだ説明の途中なのに、エスカが大声を上げる。やばい、これは何かスイッチが入っちゃったわね。
とりあえず、私の肩を掴みながら前後に揺らすのはやめてほしい。酔いそうだわ……。
「エスカ王女殿下、お姉様を揺らし過ぎです」
モモが止めに入る。さすがモモ、私の事をよく分かってるじゃないの。
「ああ、ごめんなさい、アンマリア」
モモが止めに入った事でようやくエスカの動きが止まる。どういうわけか、サクラと伯母はその様子を見ながら笑いっぱなしだった。いや、止めてほしかったんだけどね。
こうしてようやく落ち着いて食事が取れるようになり、私たちは夕食を済ませたのだった。
この日続いた柑橘狂想曲は、これにて終了なのである。
そんなわけで、私は伯父にひたすら先日の視察の事も含めて、領地の事を根掘り葉掘りと伯父から聞き出していた。
「やけに細かく聞いてくるな」
「そりゃ、自分の親の領地の事ですからね。どちらかの殿下に嫁ぐとはいっても、自分の家の事くらいはしっかり把握しておきたいんです」
質問に対して私が答えると、感心したように唸る伯父だった。
私がここまでファッティ領の事を知りたがるのは、実のところわけがあった。
エスカがやりたがっているハーブやアロマ。これらの情報を押さえるためだった。私としても少しかじっていたので興味があるんだもの。だから、そのあたりの情報も気になるというわけよ。
実際にこの伯爵邸の庭にもハーブは何種類かあった。これの生産量を増やせば、エスカが満足できるだけの量を確保できるはずだもの。
私は伯父といろいろと話を進めていく。とりあえずは、庭にある分を収穫してから乾燥させて、王都まで時々運ぶというような形に決まった。
それというのも、私たちは学園での授業があるからだ。瞬間移動魔法があるからその気になればいつでも来れるとはいえ、魔力の消費量が大きいので現実的ではない。余裕を持って来れるのも次の夏休みまでないわけなので、そういう形に落ち着いたのだった。
効果が実証できれば生産は増やせるわけだし、やってみる価値はあるはずだもの。
エスカたちがアロマキャンドルを完成させる頃には、私も伯父との間で話を完全に詰めに入っていたのだった。
夕食の時間になると食堂に向かう私と伯父。
食堂に入った瞬間、まあこれでもかという柑橘のにおいに思わず顔をしかめてしまう。
「エスカってば、ここでアロマキャンドルを作ったのね?」
もうこれは酷いとしか言いようのない部屋の状態だった。これは食堂のセッティングをする使用人も大変だったでしょうね。私は使用人に対して心の中で謝罪をしながら労っておく。
「この領地は柑橘であふれているとはいっても、さすがにこれは厳しいな……」
伯父にまでこう言われる始末である。
さすがに見てられないなと、私は収納魔法から魔石を1個取り出すと、そこに魔法を使って柑橘の香りを集めてしまう。
エスカが使う闇魔法の応用に風魔法を加えた特殊な魔法である。八属性全部使える私だからできる荒業である。
私が魔法を使うと、食堂に漂っていた強烈な柑橘香りがすっかり消え去ってしまっていた。
「アンマリア、今のは?」
「私の魔法ですね。この魔石に柑橘の香りを集めたんです。その方法は秘密ですよ」
人差し指を唇に当てながら、意地悪そうに笑う私。その姿に伯父はどう反応していいのか分からない感じに戸惑っていた。
そこへ、香りをどうにかしてきたエスカたちがやって来た。
「あれ?」
食堂に入るや否や、エスカが顔をしかめている。
「アンマリアが居るじゃないの。という事は香りが消えているのはあなたのせいね?」
そう言いながら私に詰め寄ってくる。なんでそこまで怒った顔をしているのかしらね。
「エスカってば、なんでそんなに怒っているのよ」
質問に答えないで質問を返す私。この様子だと、まともに答えたってちゃんとした反応が返ってくるとは思えないものね。
「私の質問に答えなさいよ!」
当然ながら、怒っているエスカから返ってきた言葉はそれだった。思った通りの反応でつい笑ってしまう。
「エスカの魔法を応用してみたのよ。においはここにあるわ」
そう言いながら、私はさっきの魔石をエスカに見せつける。それを見たエスカが目を丸くしながら、魔石を持つ私の手をがしっと勢いよく掴んだ。
「こ、これは!」
顔を近付けて凝視するエスカ。そして、顔を上げて今度は私の顔をじっと見てくる。
「なによ、この反則的な物体は!」
魔石を指差して大声を出すエスカ。そういう反応になるのも分かるけど、予想通りの反応過ぎてかえって笑いそうになってしまう。
「簡単に言うと、吸着剤のような感じにして、魔法で魔石ににおいを吸わせたって感じよ」
「何それ。そんな事ができるわけ?!」
簡単に説明すると、エスカがさらに食いついてきた。あっ、これはちょっと予想外。
「ほら、エスカがブラックホールの話をしたじゃないの。それを応用して、闇魔法で吸い付けるようにして、風魔法でその範囲を広めたっていう……」
「素晴らしいわ!」
まだ説明の途中なのに、エスカが大声を上げる。やばい、これは何かスイッチが入っちゃったわね。
とりあえず、私の肩を掴みながら前後に揺らすのはやめてほしい。酔いそうだわ……。
「エスカ王女殿下、お姉様を揺らし過ぎです」
モモが止めに入る。さすがモモ、私の事をよく分かってるじゃないの。
「ああ、ごめんなさい、アンマリア」
モモが止めに入った事でようやくエスカの動きが止まる。どういうわけか、サクラと伯母はその様子を見ながら笑いっぱなしだった。いや、止めてほしかったんだけどね。
こうしてようやく落ち着いて食事が取れるようになり、私たちは夕食を済ませたのだった。
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