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第八章 3年生後半
第418話 急務ゆえに
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メチルへの打診についてはエスカに任せておいて、私は王妃教育の真っ只中だった。
急な事で驚いたものの、プロポーズを受け入れてしまった以上もう逃れられない。第二王子であるリブロの婚約者に正式決定したサキも、相変わらず王妃教育を受けに来ていた。
第一王子であるフィレンが王位を順当に引き継ぐだろうから、サキには本当は必要ないことのはずなのだが、受けておいて損はないのは事実よね。公爵夫人になるのは間違いないけど、まぁこの先何があるか分からないものね。
それにしても、正式に王子と婚約者の組み合わせ決まったとあってか、王妃教育の先生が本気を出していた。
もう学園の卒業まで3か月を切っているとあって、急いで仕上げる必要が出ていたからだ。
なにせ、学園の卒業式の場で、そのまま婚約者の正式発表が行われる運びになっているからだ。
今年の学園の卒業生には、サーロイン王国の第一王子であるフィレン王子とミール王国の王子であるアーサリーの二人が含まれている。そのために、卒業式はなんと城で行われることが決まっているのだ。
この事は既に学園には伝わっていて、学生たちにも順次伝えられていくことになっている。
直後に迎えた週末のこと、エスカは朝早くに瞬間移動魔法でベジタリウス王国へと出かけていった。
そして、その日の夕方にはメチルを連れて戻ってきていた。行動が早い。
「もう戻ってきていたのね。王妃様にはなんて伝えてメチルを連れてきたのよ、エスカ」
淡々とエスカに状況の説明を求める私。するとエスカはなぜか胸を張っていた。
よくは分からないのだけれど、私は事情を知りたいのでエスカを問い詰める。
「私のお兄様のことをちらっと話をして、ミズーナの世話役にどうかしらって言っただけよ。そしたら、王妃様から連れてくる許可が下りただけよ」
呆れて言葉も出ない私。力なく肩はだらりと垂れてしまうくらいである。
「ちなみにメチルは城に置いてきたわ。今頃ミズーナと話をしているはずよ」
それに対して、ドヤ顔で話をするエスカ。うん、行動が……早いわ。
「お兄様も3か月でミール王国に帰っちゃうからね。少しくらい進展があるといいのだけれどね」
そんな事を言うエスカだが、まったく面識のない二人にとってそれはなかなかに酷な気もするわね。
「メチルは王妃様の侍女をしてるでしょ。そうなるといくら魔族だからといっても、色恋沙汰は遠い話だと思うのよ。うちのバカ兄の場合は論外ね。ミズーナからはまったく興味持たれてないし、お兄様自身も周りの令嬢に興味がないんだもの。そりゃ学業が優先とはいえ、一国の王子としてそれはどうなのかって思うのよ」
エスカはなかなかに怒っているようである。
確かに、この3年間、まったく浮いた話のひとつもないんだものね。フィレン王子から話を聞いたことはあるけれど、ミール王国へのスカウトばかりで恋愛関係はまったく皆無だったらしい。脳筋だわね。
今回エスカに頼んでメチルを連れてきてもらったけれど、これで進展があれば御の字だわね。
エスカから詳しく事情を聞いた私は、腕を組んで相槌を打つように頷いたのだった。
―――
城では、到着したばかりのメチルはミズーナ王女と合流していた。
「お、王女様。お久しゅうございます」
ガッチガチに固まっているメチルの姿に、ミズーナ王女はくすくすと笑っている。
「大丈夫よ、ため口で話してもらっていいわ。同じ転生者だし、今は誰もいないからね」
ミズーナ王女に言われて、きょろきょろと辺りを見回すメチル。確かに誰もいないらしく、その状況を見てほっと胸を撫で下ろしていた。
「ああ、びっくりしました。急にエスカ王女殿下が現れて、私を連れ去るんですもの」
「エスカも結構思いつきで行動するものね。それで、今回連れてこられた理由は聞いているかしら」
「あっ、はい。アーサリー殿下のお相手の件ですよね?」
ミズーナ王女に聞かれたメチルは、落ち着いた様子で答えていた。
「ええ。私とお兄様もですけれど、アーサリー殿下もお相手がいない状態なんですよね。それで、どうしようかと悩んだ結果、あなたがいいんじゃないかと白羽の矢を立てられたわけなのよ」
「うーん……。よく知らない方との結婚はちょっとですね……」
ミズーナ王女から事情を聞かされて、苦々しい顔をするメチル。
もともと日本人で恋愛結婚を望んでいたらしいので、こういう政略結婚というものにはどうしても抵抗を感じてしまうのだ。
「私も無理にとは言わないわ。最悪はお兄様もいらっしゃいますし、メチルの判断に任せますよ」
気持ちは分からなくはないが、ミズーナ王女は冷静にメチルを説得している。自身も王族ゆえに、エスカの気持ちが理解できるからである。
「とりあえず今日から3か月間、私の侍女の一人として付き合って頂きます。その間に、お二人の事を見極めて下さいな」
「ええ~……」
露骨に嫌な反応をするメチル。しかし、ベジタリウス王国で王命を受けた上に、王女からも直々にお願いされた現状では断るに断れなかった。
そんなこんなで、フィレン王子たちの卒業式の行われる年末までの、メチルはミズーナ王女付きの侍女として過ごすことになった。
はてさて、隣国の王子たちはサーロインの王子兄弟に負けじと、自分の婚約者を見つける事ができるのだろうか。
急な事で驚いたものの、プロポーズを受け入れてしまった以上もう逃れられない。第二王子であるリブロの婚約者に正式決定したサキも、相変わらず王妃教育を受けに来ていた。
第一王子であるフィレンが王位を順当に引き継ぐだろうから、サキには本当は必要ないことのはずなのだが、受けておいて損はないのは事実よね。公爵夫人になるのは間違いないけど、まぁこの先何があるか分からないものね。
それにしても、正式に王子と婚約者の組み合わせ決まったとあってか、王妃教育の先生が本気を出していた。
もう学園の卒業まで3か月を切っているとあって、急いで仕上げる必要が出ていたからだ。
なにせ、学園の卒業式の場で、そのまま婚約者の正式発表が行われる運びになっているからだ。
今年の学園の卒業生には、サーロイン王国の第一王子であるフィレン王子とミール王国の王子であるアーサリーの二人が含まれている。そのために、卒業式はなんと城で行われることが決まっているのだ。
この事は既に学園には伝わっていて、学生たちにも順次伝えられていくことになっている。
直後に迎えた週末のこと、エスカは朝早くに瞬間移動魔法でベジタリウス王国へと出かけていった。
そして、その日の夕方にはメチルを連れて戻ってきていた。行動が早い。
「もう戻ってきていたのね。王妃様にはなんて伝えてメチルを連れてきたのよ、エスカ」
淡々とエスカに状況の説明を求める私。するとエスカはなぜか胸を張っていた。
よくは分からないのだけれど、私は事情を知りたいのでエスカを問い詰める。
「私のお兄様のことをちらっと話をして、ミズーナの世話役にどうかしらって言っただけよ。そしたら、王妃様から連れてくる許可が下りただけよ」
呆れて言葉も出ない私。力なく肩はだらりと垂れてしまうくらいである。
「ちなみにメチルは城に置いてきたわ。今頃ミズーナと話をしているはずよ」
それに対して、ドヤ顔で話をするエスカ。うん、行動が……早いわ。
「お兄様も3か月でミール王国に帰っちゃうからね。少しくらい進展があるといいのだけれどね」
そんな事を言うエスカだが、まったく面識のない二人にとってそれはなかなかに酷な気もするわね。
「メチルは王妃様の侍女をしてるでしょ。そうなるといくら魔族だからといっても、色恋沙汰は遠い話だと思うのよ。うちのバカ兄の場合は論外ね。ミズーナからはまったく興味持たれてないし、お兄様自身も周りの令嬢に興味がないんだもの。そりゃ学業が優先とはいえ、一国の王子としてそれはどうなのかって思うのよ」
エスカはなかなかに怒っているようである。
確かに、この3年間、まったく浮いた話のひとつもないんだものね。フィレン王子から話を聞いたことはあるけれど、ミール王国へのスカウトばかりで恋愛関係はまったく皆無だったらしい。脳筋だわね。
今回エスカに頼んでメチルを連れてきてもらったけれど、これで進展があれば御の字だわね。
エスカから詳しく事情を聞いた私は、腕を組んで相槌を打つように頷いたのだった。
―――
城では、到着したばかりのメチルはミズーナ王女と合流していた。
「お、王女様。お久しゅうございます」
ガッチガチに固まっているメチルの姿に、ミズーナ王女はくすくすと笑っている。
「大丈夫よ、ため口で話してもらっていいわ。同じ転生者だし、今は誰もいないからね」
ミズーナ王女に言われて、きょろきょろと辺りを見回すメチル。確かに誰もいないらしく、その状況を見てほっと胸を撫で下ろしていた。
「ああ、びっくりしました。急にエスカ王女殿下が現れて、私を連れ去るんですもの」
「エスカも結構思いつきで行動するものね。それで、今回連れてこられた理由は聞いているかしら」
「あっ、はい。アーサリー殿下のお相手の件ですよね?」
ミズーナ王女に聞かれたメチルは、落ち着いた様子で答えていた。
「ええ。私とお兄様もですけれど、アーサリー殿下もお相手がいない状態なんですよね。それで、どうしようかと悩んだ結果、あなたがいいんじゃないかと白羽の矢を立てられたわけなのよ」
「うーん……。よく知らない方との結婚はちょっとですね……」
ミズーナ王女から事情を聞かされて、苦々しい顔をするメチル。
もともと日本人で恋愛結婚を望んでいたらしいので、こういう政略結婚というものにはどうしても抵抗を感じてしまうのだ。
「私も無理にとは言わないわ。最悪はお兄様もいらっしゃいますし、メチルの判断に任せますよ」
気持ちは分からなくはないが、ミズーナ王女は冷静にメチルを説得している。自身も王族ゆえに、エスカの気持ちが理解できるからである。
「とりあえず今日から3か月間、私の侍女の一人として付き合って頂きます。その間に、お二人の事を見極めて下さいな」
「ええ~……」
露骨に嫌な反応をするメチル。しかし、ベジタリウス王国で王命を受けた上に、王女からも直々にお願いされた現状では断るに断れなかった。
そんなこんなで、フィレン王子たちの卒業式の行われる年末までの、メチルはミズーナ王女付きの侍女として過ごすことになった。
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