430 / 500
第九章 拡張版ミズーナ編
第430話 怪しい魔力だまり
しおりを挟む
騒ぎのあった翌日、すでにミズーナ王女たちは兵士たちの案内で現場に向かっていた。早すぎる。
国王への許可も「聖女が二人いるなら大丈夫だろう」という、かなり安直なものだった。そんな判断で大丈夫か。
それでも、これまでも様々な問題を解決してきたアンマリアがいるのだから大丈夫だろうという判断が下ったものと考えれらる。
馬車で走ること8日間。問題の場所へとやってきた。
「ここが、例の布が落ちていた場所ですか」
馬車を降りたアンマリアが、辺りを見回しながら呟いている。
「はい、このだだっ広い場所に、ぽつんと落ちていました。これだけ風が吹いているのに飛ばされないという不思議な光景でしたが、拾い上げたらあっさりとその場から持ち運べたのです」
現場を調査した兵士からは、そのような答えが返ってきた。
「それは妙ですね」
訝しむミズーナ王女である。
「ここがそうですね。魔族の魔力の痕跡が残っています。ただ、みなさんは安易に近付かないで下さい。影響されます」
そう話すのはメチルである。聖女であるとはいっても今は魔族であるために、魔族の魔力には影響されないのだ。
「そう……。でしたら、メチルに任せます」
「お任せ下さい」
ミズーナ王女から任されたメチルは、両手を広げて魔法を使う。
今現在は魔族とはいっても、そもそもそういう系統の魔法しか使えないのでまったく問題ない。
魔族となったことで呪いの魔力との親和性がよく、するすると魔力に干渉できてしまうのだ。
「はい、終わりました」
「早いですね」
あっという間に呪いの魔力を浄化してしまい、ミズーナ王女は大声でツッコミを入れていた。
「原因が呪具だと分かれば、魔族にとっては造作もないですね」
「そういうものなのですね……」
えっへんと威張るメチルに、ミズーナ王女は苦笑いを浮かべている。だが、その時のメチルのドヤ顔は思いの外可愛かったようだ。
「ただ、ひとつ分かった事があります」
「何でしょうか」
メチルが話を続けようとするので、ミズーナ王女はその話を聞いてみる。
「この呪いの大元は、もうちょっと北側ですね。おそらくは収穫祭の夜に襲ってきた魔物によって、あの布切れはここまで運ばれてきたみたいです」
「そんな事も分かりますのね」
驚くミズーナ王女である。
「同族ゆえの特技といったところですかね。ほら、以前も申しましたが、テトロたちが動けば分かるといったことと同様だと思いますよ」
「なるほどですね」
メチルの説明に納得のいくミズーナ王女だった。
「それでは、アンマリア様たちもお呼びして、原因を断ち切りに行きましょうか。今はまだ魔力が足りずにくすぶっていますけれど、このまま放っておくとまた魔物たちが暴れかねませんから」
メチルの提案に頷くミズーナ王女。そして、アンマリアやサキと合流すると、バッサーシ辺境伯領の東の縁をさらに北上していった。
さらに1日進むと、誰にも分かるくらいに禍々しい魔力が漂い始めていた。
「酷い魔力だまりですね。これではいつ魔物が大量に発生してもおかしくです」
そう話すのはサキだった。聖女という立場もあって、そういった話はよく聞かされたらしい。
魔物氾濫が起きる原因の一つが、この魔力だまりにあるのだ。
アンマリアが過去に経験したクッケン湖の魔物氾濫もそれが原因である。
つまり、魔力だまりを放置すれば、それを元に魔物が生み出されてしまう。なので、見つけたら即浄化してしまう必要があるのだ。
「そうですね。近くに生物が居ないのは幸運でしたけれどね。いたらこの魔力に中てられて魔物化する場合もありますからね」
もう一つの原因が、アンマリアの言うパターンだ。
呪われた魔力が、時間をかけて動物や植物を侵食することで魔物化させるというものである。
この辺りは荒れ地のせいか近くに動植物の姿は見当たらない。おそらくは、王都に襲撃してきた魔物として消費され尽くしたのだろう。草木すらもほとんど見受けられないのだから。
「とにかく、この魔力だまりを浄化させて、危険のないものに変えるしかありませんね。準備はいいですか?」
メチルが魔力だまりを前に、ミズーナ王女たちに確認を取っている。
「もちろんですよ」
「さっさとやっちゃいましょう」
そういって、ミズーナ王女たち四人が魔力だまりを取り囲む。それを見守るように兵士たちは少し離れた場所で待機している。
ミズーナ王女たちは両手を左右に広げて、互いの魔力を結んでいく。取り囲むように魔力の結界を作るためだ。
そして、円を描ききると、今度はその円の中を光魔法の魔力で満たすように集中していく。転生者三人と聖女の四人による結界は、ものすごい速度ででき上がっていっていた。
これからいよいよ本格的な浄化だと思ったその瞬間だった。
「何か出てくる。みんな避けて!」
突如としてアルーが飛び出てきて、ミズーナ王女たちに向けて叫ぶ。
すると同時に、魔力だまりの中心に、おぞましいまでの魔力の塊が生まれようとしていたのだった。
次の瞬間、その魔力が一気に弾け飛んで、ミズーナ王女たちに襲い掛かってきたのだった。
国王への許可も「聖女が二人いるなら大丈夫だろう」という、かなり安直なものだった。そんな判断で大丈夫か。
それでも、これまでも様々な問題を解決してきたアンマリアがいるのだから大丈夫だろうという判断が下ったものと考えれらる。
馬車で走ること8日間。問題の場所へとやってきた。
「ここが、例の布が落ちていた場所ですか」
馬車を降りたアンマリアが、辺りを見回しながら呟いている。
「はい、このだだっ広い場所に、ぽつんと落ちていました。これだけ風が吹いているのに飛ばされないという不思議な光景でしたが、拾い上げたらあっさりとその場から持ち運べたのです」
現場を調査した兵士からは、そのような答えが返ってきた。
「それは妙ですね」
訝しむミズーナ王女である。
「ここがそうですね。魔族の魔力の痕跡が残っています。ただ、みなさんは安易に近付かないで下さい。影響されます」
そう話すのはメチルである。聖女であるとはいっても今は魔族であるために、魔族の魔力には影響されないのだ。
「そう……。でしたら、メチルに任せます」
「お任せ下さい」
ミズーナ王女から任されたメチルは、両手を広げて魔法を使う。
今現在は魔族とはいっても、そもそもそういう系統の魔法しか使えないのでまったく問題ない。
魔族となったことで呪いの魔力との親和性がよく、するすると魔力に干渉できてしまうのだ。
「はい、終わりました」
「早いですね」
あっという間に呪いの魔力を浄化してしまい、ミズーナ王女は大声でツッコミを入れていた。
「原因が呪具だと分かれば、魔族にとっては造作もないですね」
「そういうものなのですね……」
えっへんと威張るメチルに、ミズーナ王女は苦笑いを浮かべている。だが、その時のメチルのドヤ顔は思いの外可愛かったようだ。
「ただ、ひとつ分かった事があります」
「何でしょうか」
メチルが話を続けようとするので、ミズーナ王女はその話を聞いてみる。
「この呪いの大元は、もうちょっと北側ですね。おそらくは収穫祭の夜に襲ってきた魔物によって、あの布切れはここまで運ばれてきたみたいです」
「そんな事も分かりますのね」
驚くミズーナ王女である。
「同族ゆえの特技といったところですかね。ほら、以前も申しましたが、テトロたちが動けば分かるといったことと同様だと思いますよ」
「なるほどですね」
メチルの説明に納得のいくミズーナ王女だった。
「それでは、アンマリア様たちもお呼びして、原因を断ち切りに行きましょうか。今はまだ魔力が足りずにくすぶっていますけれど、このまま放っておくとまた魔物たちが暴れかねませんから」
メチルの提案に頷くミズーナ王女。そして、アンマリアやサキと合流すると、バッサーシ辺境伯領の東の縁をさらに北上していった。
さらに1日進むと、誰にも分かるくらいに禍々しい魔力が漂い始めていた。
「酷い魔力だまりですね。これではいつ魔物が大量に発生してもおかしくです」
そう話すのはサキだった。聖女という立場もあって、そういった話はよく聞かされたらしい。
魔物氾濫が起きる原因の一つが、この魔力だまりにあるのだ。
アンマリアが過去に経験したクッケン湖の魔物氾濫もそれが原因である。
つまり、魔力だまりを放置すれば、それを元に魔物が生み出されてしまう。なので、見つけたら即浄化してしまう必要があるのだ。
「そうですね。近くに生物が居ないのは幸運でしたけれどね。いたらこの魔力に中てられて魔物化する場合もありますからね」
もう一つの原因が、アンマリアの言うパターンだ。
呪われた魔力が、時間をかけて動物や植物を侵食することで魔物化させるというものである。
この辺りは荒れ地のせいか近くに動植物の姿は見当たらない。おそらくは、王都に襲撃してきた魔物として消費され尽くしたのだろう。草木すらもほとんど見受けられないのだから。
「とにかく、この魔力だまりを浄化させて、危険のないものに変えるしかありませんね。準備はいいですか?」
メチルが魔力だまりを前に、ミズーナ王女たちに確認を取っている。
「もちろんですよ」
「さっさとやっちゃいましょう」
そういって、ミズーナ王女たち四人が魔力だまりを取り囲む。それを見守るように兵士たちは少し離れた場所で待機している。
ミズーナ王女たちは両手を左右に広げて、互いの魔力を結んでいく。取り囲むように魔力の結界を作るためだ。
そして、円を描ききると、今度はその円の中を光魔法の魔力で満たすように集中していく。転生者三人と聖女の四人による結界は、ものすごい速度ででき上がっていっていた。
これからいよいよ本格的な浄化だと思ったその瞬間だった。
「何か出てくる。みんな避けて!」
突如としてアルーが飛び出てきて、ミズーナ王女たちに向けて叫ぶ。
すると同時に、魔力だまりの中心に、おぞましいまでの魔力の塊が生まれようとしていたのだった。
次の瞬間、その魔力が一気に弾け飛んで、ミズーナ王女たちに襲い掛かってきたのだった。
22
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる