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第九章 拡張版ミズーナ編
第436話 暇を持て余す転生者たち
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大体のイベントは消化済みのため、ミズーナ王女の生活は何もなくてすごく淡々と過ぎていく。
さすがに去年までを思うと暇すぎである。
なので、何を思ったのか、ミズーナ王女はアンマリアやエスカたちを巻き込んでイベントを起こそうとしていた。
さすがは異世界転生者。何もない事がつまらないといった感じである。
「というわけで、何か考えます」
「いや、何がというわけなのよ」
アンマリアが苦言を呈する。メチルもどう反応していいのか困りながら紅茶を淹れている。
「この世界、今までは慣れるのに精一杯だったせいで気になりませんでしたけれど、娯楽が少なすぎるのです」
ミズーナ王女がいうと、あーっといった反応するアンマリアやエスカだった。
「娯楽と言われても、スマホゲームとかをこちらの世界に持ち込めませんよ、王女殿下」
ミズーナ王女の言葉に、真面目な表情でツッコミを入れるメチルである。
「何、そのすまほげーむって」
メチルの頭の上にアルーが姿を見せる。
「こういう小さい板で遊ぶゲームね」
そういって、エスカは自分が作り出したスマホもどきを取り出してアルーに見せている。
エスカが取り出した薄い板の魔道具を、興味津々にアルーは覗いている。
「ああ、スマホあるんですか……」
メチルが驚いている。
「もう6年くらい前に作ってたわ。サーロイン王国にもプレゼントさせてもらったし」
メール機能を実演しながら話すエスカである。その最中に突然音と光が出て、アンマリアはとても驚いていた。
「ちょっと、私のスマホにメールしないでちょうだい」
怒鳴るアンマリアにけらけらと笑うエスカである。まったく、エスカは相変わらずのようである。
「ああ、いいなあ。私も欲しいかも」
ちらちらとエスカの持つスマホを覗き込むメチルである。
「魔石さえあればいくらでも作れるわ。ただ、この世界だとオーパーツすぎるから、あんまり作りたくないのよね。魔力の消耗も激しいし」
自分で見せびらかしておきながら、どういうわけか渋るエスカである。だったらなぜ見せたのだろうか。
スマホゲームは諦めて、どんな娯楽がいいのか転生者四人が集まって唸り始める。
「こういう転生もののお話だと、大体出てくるのはリバーシとかトランプとかですよね」
唐突に声を上げたのはアンマリアだった。さすが作品のヒロインらしく一番最初に意見を言い始めた。
「そうでしょうね。特にリバーシは作るのはこれといって難しくありませんしね。トランプは絵が問題でしょう、ジャックとクイーンとキングとジョーカーの四種類のね」
「まぁそれは確かに……」
それに反応したのはミズーナ王女だった。トランプは絵を描かなければならない上に、数を作るとなると毎回その作業が待っている。とても量産は現実的ではなかった。
というわけで、最初に作るものとして、シンプルで分かりやすいリバーシとなったのである。
「リバーシって何かしら」
ただ一人まったく分からないアルーが質問してくる。
「こういう8×8のマス目の中に、黒と白に色分けされた石を並べていく遊びですよ」
アルーのために説明を始めるメチル。
二人は同じメチルという人物だったが、転生者がメチルの肉体に入ってしまったがために、記憶の共有ができていないのでこういう事態になっている。
「ふむふむ、すごく単純で分かりやすいルールですね。作り方も簡単ですから、これならあっという間に広げられるのではないでしょうか」
アルーから絶賛を受けるリバーシ。
すると、エスカがアンマリアの方を見て問い掛けていた。
「アンマリア、トレント木材はまだあるかしら」
「ちょっと、魔力を通せば変形できるからって、あれで見本を作る気なの?!」
驚くアンマリアにエスカはにっこりと微笑んでいる。本気のようだった。
「この世界に存在するのなら、作り方も分からないでしょう。見本があった方がいいに決まっているわ」
エスカがぐいぐいと迫ってくる。あまりにその圧が強すぎたために、アンマリアはつい折れてしまう。
「分かったわよ。まったく、忙しくて消耗する時がなかったからとはいえ、まさか娯楽品のために使うことになるなんてね……」
渋々収納魔法からトレント木材を取り出すアンマリア。それを受け取ったエスカはにこやかである。
そして、間髪入れずに魔法を使ってトレント木材の加工を始めていた。
闇魔法による重力魔法で器用に形を整えたり切り分けたりしていくエスカ。柑橘を搾りまくったアロマキャンドルの一件で、すっかり魔法の腕を上達させているようだった。
「こんなもんでどうかな」
しばらく眺めていると、もうでき上がったかのような言いっぷりだった。
おそるおそるエスカへと近付いていくと、そこには8×8のマス目が描かれた板と、白と黒にしっかり色分けされた丸い板がマス目の両側にびっしりと収められていた。
「どうやって色を塗り分けたのよ……」
「水魔法でちょちょいっとね」
「わけが分かりません!」
アンマリアたちから総ツッコミをされると、エスカは不満げな表情を浮かべていた。
まったくもって、二属性しか使えないというのにエスカの魔法はすっかり規格外となってしまっていたようだ。
「とりあえず、これを持って誰かに宣伝しに行きましょう」
気持ちを切り替えたエスカがそう提案するも、一体誰に売り込むというのか。
その時、部屋の扉が唐突にノックされたのだった。
さすがに去年までを思うと暇すぎである。
なので、何を思ったのか、ミズーナ王女はアンマリアやエスカたちを巻き込んでイベントを起こそうとしていた。
さすがは異世界転生者。何もない事がつまらないといった感じである。
「というわけで、何か考えます」
「いや、何がというわけなのよ」
アンマリアが苦言を呈する。メチルもどう反応していいのか困りながら紅茶を淹れている。
「この世界、今までは慣れるのに精一杯だったせいで気になりませんでしたけれど、娯楽が少なすぎるのです」
ミズーナ王女がいうと、あーっといった反応するアンマリアやエスカだった。
「娯楽と言われても、スマホゲームとかをこちらの世界に持ち込めませんよ、王女殿下」
ミズーナ王女の言葉に、真面目な表情でツッコミを入れるメチルである。
「何、そのすまほげーむって」
メチルの頭の上にアルーが姿を見せる。
「こういう小さい板で遊ぶゲームね」
そういって、エスカは自分が作り出したスマホもどきを取り出してアルーに見せている。
エスカが取り出した薄い板の魔道具を、興味津々にアルーは覗いている。
「ああ、スマホあるんですか……」
メチルが驚いている。
「もう6年くらい前に作ってたわ。サーロイン王国にもプレゼントさせてもらったし」
メール機能を実演しながら話すエスカである。その最中に突然音と光が出て、アンマリアはとても驚いていた。
「ちょっと、私のスマホにメールしないでちょうだい」
怒鳴るアンマリアにけらけらと笑うエスカである。まったく、エスカは相変わらずのようである。
「ああ、いいなあ。私も欲しいかも」
ちらちらとエスカの持つスマホを覗き込むメチルである。
「魔石さえあればいくらでも作れるわ。ただ、この世界だとオーパーツすぎるから、あんまり作りたくないのよね。魔力の消耗も激しいし」
自分で見せびらかしておきながら、どういうわけか渋るエスカである。だったらなぜ見せたのだろうか。
スマホゲームは諦めて、どんな娯楽がいいのか転生者四人が集まって唸り始める。
「こういう転生もののお話だと、大体出てくるのはリバーシとかトランプとかですよね」
唐突に声を上げたのはアンマリアだった。さすが作品のヒロインらしく一番最初に意見を言い始めた。
「そうでしょうね。特にリバーシは作るのはこれといって難しくありませんしね。トランプは絵が問題でしょう、ジャックとクイーンとキングとジョーカーの四種類のね」
「まぁそれは確かに……」
それに反応したのはミズーナ王女だった。トランプは絵を描かなければならない上に、数を作るとなると毎回その作業が待っている。とても量産は現実的ではなかった。
というわけで、最初に作るものとして、シンプルで分かりやすいリバーシとなったのである。
「リバーシって何かしら」
ただ一人まったく分からないアルーが質問してくる。
「こういう8×8のマス目の中に、黒と白に色分けされた石を並べていく遊びですよ」
アルーのために説明を始めるメチル。
二人は同じメチルという人物だったが、転生者がメチルの肉体に入ってしまったがために、記憶の共有ができていないのでこういう事態になっている。
「ふむふむ、すごく単純で分かりやすいルールですね。作り方も簡単ですから、これならあっという間に広げられるのではないでしょうか」
アルーから絶賛を受けるリバーシ。
すると、エスカがアンマリアの方を見て問い掛けていた。
「アンマリア、トレント木材はまだあるかしら」
「ちょっと、魔力を通せば変形できるからって、あれで見本を作る気なの?!」
驚くアンマリアにエスカはにっこりと微笑んでいる。本気のようだった。
「この世界に存在するのなら、作り方も分からないでしょう。見本があった方がいいに決まっているわ」
エスカがぐいぐいと迫ってくる。あまりにその圧が強すぎたために、アンマリアはつい折れてしまう。
「分かったわよ。まったく、忙しくて消耗する時がなかったからとはいえ、まさか娯楽品のために使うことになるなんてね……」
渋々収納魔法からトレント木材を取り出すアンマリア。それを受け取ったエスカはにこやかである。
そして、間髪入れずに魔法を使ってトレント木材の加工を始めていた。
闇魔法による重力魔法で器用に形を整えたり切り分けたりしていくエスカ。柑橘を搾りまくったアロマキャンドルの一件で、すっかり魔法の腕を上達させているようだった。
「こんなもんでどうかな」
しばらく眺めていると、もうでき上がったかのような言いっぷりだった。
おそるおそるエスカへと近付いていくと、そこには8×8のマス目が描かれた板と、白と黒にしっかり色分けされた丸い板がマス目の両側にびっしりと収められていた。
「どうやって色を塗り分けたのよ……」
「水魔法でちょちょいっとね」
「わけが分かりません!」
アンマリアたちから総ツッコミをされると、エスカは不満げな表情を浮かべていた。
まったくもって、二属性しか使えないというのにエスカの魔法はすっかり規格外となってしまっていたようだ。
「とりあえず、これを持って誰かに宣伝しに行きましょう」
気持ちを切り替えたエスカがそう提案するも、一体誰に売り込むというのか。
その時、部屋の扉が唐突にノックされたのだった。
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