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第18話 まだ戦えない
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カマキリの名前は『ヴェール』という名前になった。
ブランの能力によって戦力が二体増えたとはいえ、アーツたちの状況が変わったということは何一つなかった。
相変わらず外部との通信はできないし、航宙船の飛行能力は発動できないでいる。音声ガイダンスも使えない状況が続いている。
「だぁーっ! どうやったらここから元の世界に帰れるんだよ」
アーツは自室で騒いでいる。
「うるせえな、アーツ。黙ってろよ」
同室で寝ていたレンクスが怒鳴っている。
「わりぃ、レンクス」
ひとまずレンクスに謝っていく。
だが、いつまでもこの世界にいるわけにはいかない。
食べ物のあてができたとはいえ、なんといっても草が苦くてまずい。
普段食べている食事の方が断然マシといったところだった。
「まぁ元の場所に帰りたいってのは俺も同じだ。なんだあの草は、まずくて食えねえぞ」
レンクスもアーツが思っていたことと同じことを言っていた。
「とはいえ、あれがあるだけでもずいぶんと違う。おいしく食べる方法はニックとクロノにでも探してもらおうぜ」
「……まあ、そうだな」
話もほどほどに、アーツとレンクスは起き上がって食堂へと向かっていった。
食事を終えると、ニックとクロノは食事の改善を約束して、アーツたちを送り出す。
二人はまだ特殊な能力に目覚めていないために、今日も留守番なのである。食料を手に入れてくる三人の代わりに、今日は調理法の改善に全力を投じると意気込んでいた。
張り切る二人ではあるものの、あまり期待はせずに、アーツたちは今日も周辺の調査へと向かっていった。
外に出たアーツたちは、周りを警戒しながら歩いていく。
ノワールとヴェールも同じように警戒している。
今日は時折虫が近付いてはくるものの、ヴェールの威嚇でほとんどの虫は退散していっていた。
『ふん、根性なしどもが』
『追うなよ、ヴェール』
『分かっている』
ノワールたちが何か会話をしているようだが、相変わらずアーツたちにはまったく不可能なようだ。
「ブラン、なんて言ってるんだ?」
「あくまでも自分たちの任務は主たちを守ること。決して深追いするなというようなことを話しているわ」
「そうか……。すっかり俺たちの護衛だな」
虫に守られているというのは、アーツもレンクスもちょっと落ち着かない感じだった。
どのくらい歩いただろうか。
突然、ぴくりとノワールが立ち止まった。
「お、おい。どうしたんだ?」
あまりにも急だったので、アーツとレンクスが慌てふためいている。
『奴の気配がする。隠れるぞ』
「何か危険を察知したみたい。隠れるそうよ」
「わ、分かった。誘導してくれ」
ノワールの言葉をブランが通訳する。
あまりにも鬼気迫った様子だったので、アーツたちは慌ててノワールの後を追いかける。
何事かと思っていると、徐々にズシンという音が近付いてきていた。
「ガアアアアッ!!」
一瞬止まったかと思うと、巨大な咆哮がこだましていた。
そう、恐竜もどきが姿を見せたのである。
(くそっ、何度見てもでけえぜ……)
アーツは冷や汗を流している。
「あ、あれが火を噴いたっていう恐竜?」
ブランは初めて見たのだろうか、以前に話したアーツたちの言葉を使って質問している。
「ああ、あいつが口から火を吐いて、戦っていた相手を丸焼きにしたんだよ。終わった後はしばらく焦げ臭かったな……」
アーツは当時のことを思い出して、思わず歯を食いしばってしまう。
自分たちも能力に目覚めたとはいえ、とても立ち向かえるとは思えない。
学習プログラムの中で見た戦闘ロボットよりもはるかにでかい恐竜が相手では、勝てるイメージがまったくできないのである。
(くそう……。悔しいが今はまだ見ていることしかできない。でも、いずれはきっと勝てるようになってやるからな)
そう思いながら、ただただ今は、恐竜が去っていくのをじっと見守ることしかできないのだった。
結局、これといったこともなく、恐竜はその場から去っていった。
これでようやくひと安心というものである。
『あれの去った後ろ側を調査するといい。あいつらは図体がでかいので、急な旋回は不可能なのだ。奴らもこけることが分かっているから、急旋回はしてこない』
ノワールが言うには、急旋回というのが恐竜たちの弱点なのだという。
しかし、今の自分たちにそれを誘発できるだけの実力があるかといえば、それはノーだった。
まず、体格差にびびってしまって飛び出していけない。
飛び出したところで、すぐに恐竜たちが振り向くとは限らない。
そう、アーツたちに実現するだけの実力がないのが現実なのだ。
持っている閃光剣や閃光銃も、恐竜たちに通じるかというの点においては疑問符がついてしまう。
いろいろな観点から見てみても、現状では恐竜たちと出くわしたら、おとなしくやり過ごすしか手段はないのだった。
悔しがるアーツたちだったが、今はひとまずノワールの言われた通り、恐竜が通り過ぎた場所を一気に移動していく。
ノワールの告げた通り、恐竜は後ろを振り返ってくることなく、そのまま歩き去ってしまった。
『奴らは単独行動をする。去ったばかりゆえに、当分はやってこまい。今のうちのこの先の調査を進めてしまうぞ』
アーツたちは、現状から脱出するためのヒントを求めて、さらに奥地へと進んでいったのだった。
ブランの能力によって戦力が二体増えたとはいえ、アーツたちの状況が変わったということは何一つなかった。
相変わらず外部との通信はできないし、航宙船の飛行能力は発動できないでいる。音声ガイダンスも使えない状況が続いている。
「だぁーっ! どうやったらここから元の世界に帰れるんだよ」
アーツは自室で騒いでいる。
「うるせえな、アーツ。黙ってろよ」
同室で寝ていたレンクスが怒鳴っている。
「わりぃ、レンクス」
ひとまずレンクスに謝っていく。
だが、いつまでもこの世界にいるわけにはいかない。
食べ物のあてができたとはいえ、なんといっても草が苦くてまずい。
普段食べている食事の方が断然マシといったところだった。
「まぁ元の場所に帰りたいってのは俺も同じだ。なんだあの草は、まずくて食えねえぞ」
レンクスもアーツが思っていたことと同じことを言っていた。
「とはいえ、あれがあるだけでもずいぶんと違う。おいしく食べる方法はニックとクロノにでも探してもらおうぜ」
「……まあ、そうだな」
話もほどほどに、アーツとレンクスは起き上がって食堂へと向かっていった。
食事を終えると、ニックとクロノは食事の改善を約束して、アーツたちを送り出す。
二人はまだ特殊な能力に目覚めていないために、今日も留守番なのである。食料を手に入れてくる三人の代わりに、今日は調理法の改善に全力を投じると意気込んでいた。
張り切る二人ではあるものの、あまり期待はせずに、アーツたちは今日も周辺の調査へと向かっていった。
外に出たアーツたちは、周りを警戒しながら歩いていく。
ノワールとヴェールも同じように警戒している。
今日は時折虫が近付いてはくるものの、ヴェールの威嚇でほとんどの虫は退散していっていた。
『ふん、根性なしどもが』
『追うなよ、ヴェール』
『分かっている』
ノワールたちが何か会話をしているようだが、相変わらずアーツたちにはまったく不可能なようだ。
「ブラン、なんて言ってるんだ?」
「あくまでも自分たちの任務は主たちを守ること。決して深追いするなというようなことを話しているわ」
「そうか……。すっかり俺たちの護衛だな」
虫に守られているというのは、アーツもレンクスもちょっと落ち着かない感じだった。
どのくらい歩いただろうか。
突然、ぴくりとノワールが立ち止まった。
「お、おい。どうしたんだ?」
あまりにも急だったので、アーツとレンクスが慌てふためいている。
『奴の気配がする。隠れるぞ』
「何か危険を察知したみたい。隠れるそうよ」
「わ、分かった。誘導してくれ」
ノワールの言葉をブランが通訳する。
あまりにも鬼気迫った様子だったので、アーツたちは慌ててノワールの後を追いかける。
何事かと思っていると、徐々にズシンという音が近付いてきていた。
「ガアアアアッ!!」
一瞬止まったかと思うと、巨大な咆哮がこだましていた。
そう、恐竜もどきが姿を見せたのである。
(くそっ、何度見てもでけえぜ……)
アーツは冷や汗を流している。
「あ、あれが火を噴いたっていう恐竜?」
ブランは初めて見たのだろうか、以前に話したアーツたちの言葉を使って質問している。
「ああ、あいつが口から火を吐いて、戦っていた相手を丸焼きにしたんだよ。終わった後はしばらく焦げ臭かったな……」
アーツは当時のことを思い出して、思わず歯を食いしばってしまう。
自分たちも能力に目覚めたとはいえ、とても立ち向かえるとは思えない。
学習プログラムの中で見た戦闘ロボットよりもはるかにでかい恐竜が相手では、勝てるイメージがまったくできないのである。
(くそう……。悔しいが今はまだ見ていることしかできない。でも、いずれはきっと勝てるようになってやるからな)
そう思いながら、ただただ今は、恐竜が去っていくのをじっと見守ることしかできないのだった。
結局、これといったこともなく、恐竜はその場から去っていった。
これでようやくひと安心というものである。
『あれの去った後ろ側を調査するといい。あいつらは図体がでかいので、急な旋回は不可能なのだ。奴らもこけることが分かっているから、急旋回はしてこない』
ノワールが言うには、急旋回というのが恐竜たちの弱点なのだという。
しかし、今の自分たちにそれを誘発できるだけの実力があるかといえば、それはノーだった。
まず、体格差にびびってしまって飛び出していけない。
飛び出したところで、すぐに恐竜たちが振り向くとは限らない。
そう、アーツたちに実現するだけの実力がないのが現実なのだ。
持っている閃光剣や閃光銃も、恐竜たちに通じるかというの点においては疑問符がついてしまう。
いろいろな観点から見てみても、現状では恐竜たちと出くわしたら、おとなしくやり過ごすしか手段はないのだった。
悔しがるアーツたちだったが、今はひとまずノワールの言われた通り、恐竜が通り過ぎた場所を一気に移動していく。
ノワールの告げた通り、恐竜は後ろを振り返ってくることなく、そのまま歩き去ってしまった。
『奴らは単独行動をする。去ったばかりゆえに、当分はやってこまい。今のうちのこの先の調査を進めてしまうぞ』
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