ドラゴニックプラネット

未羊

文字の大きさ
30 / 75

第30話 倒れた恐竜を探して

しおりを挟む
 計画は持ち上がったものの、レンクスとクロノは参加を拒否してきた。
 それというのも、怖い目に遭うのはしばらく勘弁してほしいとのことだった。
 ニックの行っている分析のこともあるので、アーツは二人の言い分をあっさりと認めていた。

「それじゃ、俺とブランで行ってくるからな」

「ああ、気を付けて行ってこいよ」

「ブラン、本当に大丈夫?」

「怖いけれど、私にしかできないことだから。アーツの能力もあるから、きっと大丈夫だと思いたいわ」

 クロノに声をかけられたブランは、眉をひそめながら笑顔で答えていた。
 あまりにも困った様子だっただけに、クロノはアーツの顔をじっと睨みつける。

「ブランを危険な目に遭わせないでよ?」

「もちろんだ。ようやく俺も力の使い方が分かってきたからな。必ず守ってやるぜ」

 出どころ不明の自信を見せつけるアーツだが、クロノたちからしたら不安しかなかった。
 少々ばかり不穏な空気に放っていたものの、アーツは予定通り昨日の現場へと向けて出発していった。

「本当に大丈夫かしらね」

「……信じるしかねえさ。ノワールとヴェールもいるし、あの二匹ならアーツよりは頭よさそうだからな」

 アーツはブランのしもべとなった虫たちよりも信用されていないようである。
 しかし、今となってはアーツたちを信じるしかない。
 二人は分析に熱中しているニックともども、アーツとブランが無事に戻ってくることを祈ることしかできなかった。

 お昼過ぎだった。
 アーツたちは昨日の森までやって来ていた。

「ひでぇな、この森の状況は……」

「こんな攻撃食らったら、私たちはひとたまりもないわね」

 恐竜のしっぽによってなぎ倒された木がそこら中に転がっている。
 何百本という木が、巨大なしっぽの一撃によって無残な姿をさらしているのである。
 さて、アーツたちは目的である恐竜の死骸を探しに来たのだが、驚いたことに昨日倒したはずの恐竜の姿がもうすでになかったのだ。骨すらも残っていないとはどういうことなのだろうか。

「嘘だろ……?」

「これだけ木が倒れているから、ここで間違いないはずなんだけど……。一日で跡形もなくなくなるなんてあるのかしら」

 アーツもブランも信じられない状況を目の当たりにして、目を逸らせずにいた。

『ありえない話だ。我のような者がいたとしても、骨まで片付けるなんていうのは不可能だ』

『俺にも無理だな。骨は堅くて食えない』

 ノワールとヴェールに聞いてみても、そんな答えが返ってくるだけだった。やっぱり骨は無理らしい。
 だが、せっかくここまで来たのだ。何か痕跡はないか、周囲に恐竜たちがいないか警戒しながら調べてみることにする。
 恐竜が倒れていた場所まで移動したアーツたちは、ノワールとヴェールから降りてじっくりと地面を見て回る。
 しっかりと調べて回った結果、恐竜が倒れていた場所は、その衝撃から地面が凹んでいることが確認できた。周りから最大で十数センチほど凹んでいる。

「ここに恐竜が倒れていたことは間違いないな」

「でも、アーツが確かに頭を撃ち抜いて倒したのよね?」

「ああ、普通なら死んでいるはず。だから、余計この状況が不可解なんだ」

 アーツはあごを抱えている。

「ノワールやヴェールみたいに生き返ったってことは考えられない?」

 ブランは自分の能力を例に出してみるが、これにはアーツが首を横に振って否定する。

「いや、ありえないだろう。理由としては、俺がしっぽを切り落としていることだ。それこそ、クロノみたいな治癒能力でもないことには説明がつかない。大体、閃光剣で斬られたところはくっつくわけがないんだしな」

「そっか……」

 アーツに自分の意見を否定されて、ブランは落ち込んでしまっていた。

「しょうがない。ないものはどうしようもないから、もう少しだけ調べて戻るとしようか」

「うん、そうだね」

 このまま恐竜がいなくなっていたという情報だけ持って帰るのも癪だったようで、アーツとブランは、恐竜が倒れていた場所をもう一度詳しく見てみることにする。
 ところが、恐ろしいまでに何もない状態になっていた。
 凹んだ地面と倒れた木々だけが、そこに巨大な生物がいたことを物語っているのだ。
 結局収穫なしかと思われた瞬間だった。

「アーツ、こっち!」

 ブランが何かを見つけたらしい。

「どうした、ブラン」

 アーツが駆け寄って地面を見てみると、何かが落ちているようだった。
 地面の色と混ざってよく目を凝らさないと見つけられないくらいだった。

『さすがは主。我らでも見つけられぬものをよく見つけたものです』

 ノワールに褒められて、ブランは照れているようだった。

「なんだろうかな。チップのようにも見えるが……。とりあえず拾って帰るか」

 アーツは壊さないように慎重に拾い上げて回収する。

「何も手掛かりなしかと思ったが、これでも来たかいがあったものだな」

「そうだね。恐竜が跡形もなくなっていたのは驚いたけれど、何事もなくてよかったわ」

 ブランはほっと安堵のため息をついていた。

「いや、航宙船に戻るまで油断は禁物だ。ノワール、ヴェール、航宙船まで頼んだぜ」

『承知した』

 ノワールたちは二人が乗りやすいように身をかがめる。
 背中に乗ったことを確認すると、立ち上がって航宙船へと向かって走り出した。

「そういや、虫ってかがめないはずだよな?」

「構造的に無理だと思うわ。でも、この子たちはしゃがんでるわよね」

「分かんねえことだらけだよなぁ、ここって」

 ふと思ってしまったノワールたちの何気ない行動の謎。
 この世界の謎に首を傾げながらも、アーツたちは無事に航宙船まで戻ることができたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...