33 / 75
第33話 新たな能力、新たな仲間
しおりを挟む
夕方になるとアーツたちが航宙船に戻ってくる。
「戻ったぞ、ニック」
「お帰りなさい。どうでしたか、探索」
出迎えたニックは、アーツたちに結果を早速尋ねている。
アーツやレンクスはあまり芳しくない顔をしていたので、結果はどうもよろしくないようだ。
「これといった新しい情報はなしだったぜ」
「そっかぁ……」
レンクスの報告に、ニックは残念そうな表情を浮かべている。
「ニック」
ブランから声をかけられると、ニックは声に反応して振り向く。
「どうしたのですか、ブラン」
「ノワールが見つけたんだけど、こういうのでいいのかしら」
「これは……」
ブランが差し出したのは、小さいけれど間違いなく金属片だった。これにはニックは嬉しそうな顔をしている。
「うん、ありがとう。これで僕もみんなの役に立てますよ」
「えっ?」
ブランだけではなく、隣にいたクロノも驚いている。
「ちょっと見てて下さいね」
ニックは手に持った小さな金属に向かって、何か念のようなものを込めている。
これにはなにごとかとアーツたちも視線を向けている。
ニックがより一層力を込めた時だった。
ポンッ!
音を立てて金属が何かに変化した。
「なに、この四角い板は……」
「てか、どこから出したよ、それ」
アーツたちが驚いている。
その様子を見たニックは満足げに笑みを浮かべている。
「僕の能力ですよ。僕はどうやら、金属を好きな形に変えられるようなんです」
「な、なんだって?!」
「てことは何か? この航宙船の部品も好きなようにいじれるのか?」
「それはやめてくれ」
レンクスが興奮気味にニックに言うと、アーツがすかさず止めていた。
さすがに航宙船を壊されるのはたまったものではないからだ。
だが、ニックは首を横に振っていた。
「僕が変形できるのは、魔素のこもった金属限定ですね。航宙船の変形は既に試しましたが、うんともすんとも起こりませんでした」
ニックが答えれば、アーツはほっと胸を撫で下ろしていた。航宙船を壊されると思ったからだろう。
「それじゃ、先日の金属片も変形できるのか?」
「いえ、あれは無理ですね。もう魔素がありませんし、変えちゃいけない気がするんです」
「そうか……」
ちょっとがっくりするレンクスである。
「でも、魔素のこもった金属があれば、この航宙船を動かせるようになるかもしれませんね」
「壊さないでくれよ?」
「壊しませんよ。繋げて何か不具合が起きても困ります。ただ、この下の部分に車輪のついた台座を加えれば、動かすことは可能だと思うんです」
「……俺の能力か」
ニックの話を聞いて、アーツは何かピンときたようである。
その答えに、ニックはこくりと頷いていた。
「あの小さな金属片でもこれだけの盾に変形できるのなら、そんなに量は要らないかもしれないわね」
「でも、この航宙船、思ったより大きいわよ? この楯の何枚分が必要だと思うのよ」
「そ、そうね……」
希望が出てきたものの、すぐに現実が追い打ちをかけてくる。
現状、この星に転がっている金属はノワールたちにしか見つけられていない。見つけてくるだけでもひと苦労といったところなのだ。
「でもまあ、ニックも能力に目覚めたんだ。少しは前進してるってことで喜ぼうぜ」
「そ、そうね」
アーツは楽観的に叫ぶものの、みんなはどうもそうではないようである。いまいち反応が悪い。
『いや、前進しているのは間違いない。この世界では魔素を操れるのは重要な要素だ。我らのこの念話も、主の魔素あってこそなのだ』
「そうなんだ。ノワールたちは魔素は操れるの?」
『無理だな。感じることはできるが、扱えない。それが俺たち虫とあのデカブツたちの差なんだよ』
ブランの質問に、ヴェールはこのように答えている。隣のノワールも頷いているので、これはどうやら事実のようだった。
「ブラン、そいつらはなんて?」
「ノワールとヴェールは、魔素は感じられるけど扱えないんだって。だから、恐竜たちから隠れるようにして生活しているそうよ」
「なるほどな。それでこいつらは金属片を拾ってこれたってわけか」
納得がいくアーツである。
こうして、アーツたちには当面の目標ができた。
この世界の探索範囲を広げるために、航宙船を自由に動けるように改良することだ。
そのためにはノワールやヴェールの探索能力と、ニックの魔素金属を変形させる能力は不可欠だった。
計画の上でニックは重要な立ち位置となったため、今まで通り航宙船で留守番をしてもらう。下手に外に出て恐竜の餌食にでもなれば、それは目も当てられた状況ではないからだ。
その代わり、ノワールとヴェールを使役できるブランは探索においては主力。アーツとレンクスが護衛について近隣の探索を行う。
計画が実行されて、一週間が経過する。
ノワールたちには新たな仲間が加わった。どうやらスズメバチっぽく、オランジュと名付けられた。
素早く飛び回り、強力な毒針を持つオランジュは、倒すことには苦戦した。だが、それが味方になれば、なんとも心強いものである。
探索範囲も広がったので、アーツたちにはかなり多くの金属片が集まることになった。
「さあ、ニックに届けようぜ」
「おう!」
ほくほくとした笑顔を浮かべ、アーツたちは航宙船へと戻っていったのだった。
「戻ったぞ、ニック」
「お帰りなさい。どうでしたか、探索」
出迎えたニックは、アーツたちに結果を早速尋ねている。
アーツやレンクスはあまり芳しくない顔をしていたので、結果はどうもよろしくないようだ。
「これといった新しい情報はなしだったぜ」
「そっかぁ……」
レンクスの報告に、ニックは残念そうな表情を浮かべている。
「ニック」
ブランから声をかけられると、ニックは声に反応して振り向く。
「どうしたのですか、ブラン」
「ノワールが見つけたんだけど、こういうのでいいのかしら」
「これは……」
ブランが差し出したのは、小さいけれど間違いなく金属片だった。これにはニックは嬉しそうな顔をしている。
「うん、ありがとう。これで僕もみんなの役に立てますよ」
「えっ?」
ブランだけではなく、隣にいたクロノも驚いている。
「ちょっと見てて下さいね」
ニックは手に持った小さな金属に向かって、何か念のようなものを込めている。
これにはなにごとかとアーツたちも視線を向けている。
ニックがより一層力を込めた時だった。
ポンッ!
音を立てて金属が何かに変化した。
「なに、この四角い板は……」
「てか、どこから出したよ、それ」
アーツたちが驚いている。
その様子を見たニックは満足げに笑みを浮かべている。
「僕の能力ですよ。僕はどうやら、金属を好きな形に変えられるようなんです」
「な、なんだって?!」
「てことは何か? この航宙船の部品も好きなようにいじれるのか?」
「それはやめてくれ」
レンクスが興奮気味にニックに言うと、アーツがすかさず止めていた。
さすがに航宙船を壊されるのはたまったものではないからだ。
だが、ニックは首を横に振っていた。
「僕が変形できるのは、魔素のこもった金属限定ですね。航宙船の変形は既に試しましたが、うんともすんとも起こりませんでした」
ニックが答えれば、アーツはほっと胸を撫で下ろしていた。航宙船を壊されると思ったからだろう。
「それじゃ、先日の金属片も変形できるのか?」
「いえ、あれは無理ですね。もう魔素がありませんし、変えちゃいけない気がするんです」
「そうか……」
ちょっとがっくりするレンクスである。
「でも、魔素のこもった金属があれば、この航宙船を動かせるようになるかもしれませんね」
「壊さないでくれよ?」
「壊しませんよ。繋げて何か不具合が起きても困ります。ただ、この下の部分に車輪のついた台座を加えれば、動かすことは可能だと思うんです」
「……俺の能力か」
ニックの話を聞いて、アーツは何かピンときたようである。
その答えに、ニックはこくりと頷いていた。
「あの小さな金属片でもこれだけの盾に変形できるのなら、そんなに量は要らないかもしれないわね」
「でも、この航宙船、思ったより大きいわよ? この楯の何枚分が必要だと思うのよ」
「そ、そうね……」
希望が出てきたものの、すぐに現実が追い打ちをかけてくる。
現状、この星に転がっている金属はノワールたちにしか見つけられていない。見つけてくるだけでもひと苦労といったところなのだ。
「でもまあ、ニックも能力に目覚めたんだ。少しは前進してるってことで喜ぼうぜ」
「そ、そうね」
アーツは楽観的に叫ぶものの、みんなはどうもそうではないようである。いまいち反応が悪い。
『いや、前進しているのは間違いない。この世界では魔素を操れるのは重要な要素だ。我らのこの念話も、主の魔素あってこそなのだ』
「そうなんだ。ノワールたちは魔素は操れるの?」
『無理だな。感じることはできるが、扱えない。それが俺たち虫とあのデカブツたちの差なんだよ』
ブランの質問に、ヴェールはこのように答えている。隣のノワールも頷いているので、これはどうやら事実のようだった。
「ブラン、そいつらはなんて?」
「ノワールとヴェールは、魔素は感じられるけど扱えないんだって。だから、恐竜たちから隠れるようにして生活しているそうよ」
「なるほどな。それでこいつらは金属片を拾ってこれたってわけか」
納得がいくアーツである。
こうして、アーツたちには当面の目標ができた。
この世界の探索範囲を広げるために、航宙船を自由に動けるように改良することだ。
そのためにはノワールやヴェールの探索能力と、ニックの魔素金属を変形させる能力は不可欠だった。
計画の上でニックは重要な立ち位置となったため、今まで通り航宙船で留守番をしてもらう。下手に外に出て恐竜の餌食にでもなれば、それは目も当てられた状況ではないからだ。
その代わり、ノワールとヴェールを使役できるブランは探索においては主力。アーツとレンクスが護衛について近隣の探索を行う。
計画が実行されて、一週間が経過する。
ノワールたちには新たな仲間が加わった。どうやらスズメバチっぽく、オランジュと名付けられた。
素早く飛び回り、強力な毒針を持つオランジュは、倒すことには苦戦した。だが、それが味方になれば、なんとも心強いものである。
探索範囲も広がったので、アーツたちにはかなり多くの金属片が集まることになった。
「さあ、ニックに届けようぜ」
「おう!」
ほくほくとした笑顔を浮かべ、アーツたちは航宙船へと戻っていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる