ドラゴニックプラネット

未羊

文字の大きさ
45 / 75

第45話 隠された航宙船

しおりを挟む
 マザーコンピュータは、地下空間の近くにある山に航宙船が隠されていると言っていた。
 その山というのは、先日一度休むために入った空間がある場所であり、今現在いる場所である。
 どうやらこの山、航宙船を隠すために生成されたものらしいのだ。
 二百年以上前の技術とはいえ、そんなことが可能とは驚きの事実である。

「航宙船を隠すために作られた山ですけれど、出入り口のハッチというものが必ずあるはずです。おそらくこの空間は、そのハッチの開閉スペースを確保するために作られたのでしょう」

「ああ、なるほど、そういうことなのか」

 マザーコンピュータから得た情報とニックの分析力が加わると、また新たな可能性が見えてきたというものだ。
 この空洞がなぜあったのかという謎が解き明かされたのである。
 しかし、約一名だけはずっと違うことを考えているようだった。

「私の能力が時間を操るというのなら、私ってば……」

 そう、クロノだ。
 先程の一件で自分が時間を操る能力に目覚めたということに気が付いて、すっかり気が動転してしまっている。
 それもマザーコンピュータの話があったからだ。
 同じように時間を操る能力を得た人物は、時間を巻き戻そうとして一瞬で年老いて死んでしまったというのだから。
 自分も同じように急激に年老いて死んでしまうのではないか。その恐怖がクロノを襲い続けているのである。

「クロノ、いつまで悩んでいるんだ」

「あ、アーツ……」

 急に声をかけられて、声の方向へと勢いよく顔を向ける。
 アーツに向けられたクロノの表情は、今にも泣き出しそうなくらいに怯え切っている。

「お前が悩むのは分かるが、その力のおかげで俺は何度となく助けられているんだ。マザーが言っていたようなことをしなければ、そう簡単には老け込まないだろうよ」

「アーツ……」

 クロノを落ち着かせようとして声をかけるアーツではあるが、やはりこの程度ではクロノの不安はぬぐいされないようだ。
 そこへ、ノワールがゆっくりと近付いていく。

「ノワール、どうしたの?」

 ゆっくり近づいていったノワールは、何を思ったかクロノにかみついている。

「おい、何やってるんだ!」

 さすがにノワールの突然の行為に、怒鳴らずにはいられなかった。

「もう、ノワールってばいきなり何をしているのよ。もう少し説明してちょうだい」

 ブランが駆け寄ってくる。

「おい、ブラン、これはどういうことなんだよ」

「自分が進んだ時間を回収してみせるとか言い始めたのよ。どんなことか分からなかったけれど、いきなりかみつくのはやめてあげて」

『すまない。これで大丈夫だろう』

 ようやくクロノから離れていた。

「クロノ、大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫だよ。あまがみだったから」

 クロノはいきなりかまれてびっくりしていたが、何もなかったことでほっとしているようだった。

「まったく、ノワールは何をしたのよ」

『我らは一度死んだ身だ。ゆえに、時間など関係ないからな』

「ああ、そういうことなのね。理解はしたけど、分からないわね」

 ブランは困惑した顔をしている。

「でも、さっきに比べればだいぶ落ち着いた気がする。ありがとう、ノワール」

『いいってことだ。主を悲しませることだけはしたくないからな』

 クロノが嬉しくて抱きついていると、ノワールは照れたような態度を取っている。

「おーい、お前たちも入口を探すのを手伝え」

「この横穴のどこかに、航宙船のハッチがあるのは間違いないんです。探して下さい!」

 レンクスとニックが大声で叫んでいる。横穴の中なので、声がよく響いている。

「分かった。今から探す」

 二人の声に、アーツが返事をする。

「それじゃ、俺たちも探そうぜ」

「そうね。何か今の状況を打破できるだけのものがあるといいんだけど」

「期待はできないかもな。なにせ二百年以上前のことだしな」

 クロノは期待している節はあるものの、アーツはどちらかといえば否定的だ。
 とはいえ、もしかしたら今の自分たちに役に立つ情報もあるかもしれないと、ちょっとした期待を持ってしまうというものである。

「とはいえ、ここに航宙船が残されているということは、乗組員たちはみんなあの地下に降りたってことなんだろうな。一人でも残っていれば、脱出しそうなものなんだがな」

「それは確かにそうかも知れないわね」

 クロノはアーツと一緒に壁を調べていっている。さっきまでの沈んでいた気持ちからすっかり立ち直っているようだ。
 しばらく探していたアーツたちだったが、ある地点にやって来た時、クロノが何かを感じ取ったようだ。

「あそこ! なにか感じるわ」

 クロノが天井を指差しながら叫んでいる。

「クロノ、本当か?」

「分からない。分からないけど、何かを感じるの」

 クロノの言葉に、アーツはブランを通してオランジュに頼み込む。
 こくりと頷いたオランジュが、天井へと飛び上がり、クロノが指摘したあたりへと毒針攻撃を仕掛ける。
 バラバラと岩石片が地面へと落ちていくので、アーツたちは真下から離れる。
 やがて、オランジュの針が「ガンッ」という鈍い音を立てて跳ね返された。

「見つけたぜ」

 閃光剣を光らせて天井を確認する。
 間違いなく、そこに露出していたのは金属だった。
 アーツたちは、二百年前にやって来た人物たちの航宙船を発見したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...