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第47話 古き航宙船
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アーツたちは二百年前の航宙船の中へと入る。
足を踏み入れた瞬間、明かりがともったので、どうやらシステムは生きているようである。
「すげぇ、二百年経ってもちゃんと動いてるぜ」
「全体的なシステム自体は、僕たちが乗ってきた航宙船と変わらないと思いますね。ちょっと型が古いですけれど」
航宙船の中をぱっと見た感じ、ニックはそのような印象を持ったようだ。
ただ、内装の文字はまったく読めないものばかりだ。そのせいで、なにがなんだかまったく分からないといった感じである。
「ひでぇ……。学習プログラムで勉強した俺たちがまったく読めねえぞ」
「言語は昔に比べて減ったというような話はあったものね。この航宙船の文字は、その失われた言語のひとつなんだわ」
クロノがじっと文字を見ている。
「うん? これは言語が違うわ。もしかしたら読めるかも……」
「どうしたよ」
しゃがみ込んだクロノに、アーツが反応する。
だが、その時けたたましい音が航宙船に鳴り響く。
―侵入者、侵入者、直ちに排除せよ―
航宙船のシステムによる警告だった。
どうやらアーツたちは、航宙船にとって侵入者とみなされたようである。
身構えるアーツたちだったが、しばらく経ってもまったく何も起きなかった。
―エラー、エラー。システムに異常が発見されました。修理致しますか?―
よく分からないが、エラーが起きたらしい。
防衛機能が起動できない深刻な状況にあるようだ。
「どうやら、現在の状態では防衛機能がちゃんと働かないようですね」
「なんだよ、びっくりさせやがって」
警報が鳴りやむ。
一定時間の間に命令がなかったために守る対象がないと判断したようだ。こうして航宙船はスリープモードへと移行したため、アーツたちにとっての深刻な状況は脱せたようである。
「一時はどうなることかと思ったぜ」
「でも、この航宙船からすれば、私たちが侵入者であることには変わりないわ。油断しないでおきましょう」
「そうですね。何がきっかけできちんと動き始めるのか分かりません。用心に越したことはないと思います」
ブランとニックの言葉に全員がこくりと頷き、航宙船の中の探索が再開される。
通常の航宙船は操舵室の方向から見て左側に出入口のハッチがあることが多い。
さらに、状況からするに、これは航宙船の最下部付近にある出入口だと思われる。
航宙船内の移動は複数個所あるワープポータルか、階段を使って移動する。
あまり移動に時間をかけたくないアーツたちではあるものの、航宙船の大きさが分からない以上は、ワープポータルに頼るわけにはいかなかった。
なぜなら、航宙船の中で迷子となって、外へと出られなくなる可能性があるからだ。
それを防ぐには、入口から順番に移動して、現在地をしっかりと立体的には把握しておく方がいいのである。
「一般的な航宙船の作りであるなら、入口から左側の上部を目指せば操舵室に到着するはずです。この航宙船は岩山に偽装していますので、どちらが船首かということがはっきりと分かりません。なので、まずは一般論で船首を目指します」
「よし、分かった」
『内部構造の把握なら、我にお任せを。なにせ我は、地中に大きな巣穴を掘るのですからな』
「お願いね、ノワール」
『はっ!』
アーツたちが行動方針を確認すると、そこに便乗するような形でノワールが意気込んでいる。
「ノワールは何だって?」
「構造の把握は任せなさいって。アリは地中に巣穴を掘るから、そういうことは得意みたいよ」
「そいつは心強いな」
「でかいだけの虫かと思ったが、三匹とも頼りになるよな」
レンクスがぽそりと呟けば、ノワールたちは聞こえたのか胸を張っているようだった。ブランに使えるようになったからか、自慢げにする動作が時々見られるようになっていた。
まったく妙に人間臭い行動だけに、アーツたちはつい笑ってしまっている。
『まったく、笑うとは失敬な』
ノワールが怒っていることがブランの通訳で伝えられると、アーツたちは言い訳をしていた。
航宙船のシステムによる警戒が空振りに終わり、改めてアーツたちは航宙船の中の調査を進める。
操舵室を目指す理由は、航宙船のシステムのメインが操舵室に集中しているからである。
なので、操舵室に到着できれば、この航宙船の全容の把握もたやすいだろうと考えたからだ。
その一方で懸念もある。
システム音声自体はアーツたちに聞き取れたものの、文字の方は見たことがないものばかりだ。
ノワールとニックが二人でいた時に拾った金属に書かれていた文字くらいしか、アーツたちには読むことはできない。
言語の壁から、航宙船のことが何も分からない可能性があるというわけなのだ。
ただ、ニックに言わせれば、航宙船には自動翻訳機能があるとのこと。いろんな言語を使う人物が同時に乗り込むことがあるので、そのコミュニケーションがスムーズに行えるようにと航宙船が備えている機能のひとつなのである。
この航宙船にも備わっていることを祈りながら、航宙船の入口から左手に沿いながら進むアーツたち。
無事にこの二百年前の航宙船から情報を得ることができるのであろうか。アーツたちは祈るような気持ちだった。
足を踏み入れた瞬間、明かりがともったので、どうやらシステムは生きているようである。
「すげぇ、二百年経ってもちゃんと動いてるぜ」
「全体的なシステム自体は、僕たちが乗ってきた航宙船と変わらないと思いますね。ちょっと型が古いですけれど」
航宙船の中をぱっと見た感じ、ニックはそのような印象を持ったようだ。
ただ、内装の文字はまったく読めないものばかりだ。そのせいで、なにがなんだかまったく分からないといった感じである。
「ひでぇ……。学習プログラムで勉強した俺たちがまったく読めねえぞ」
「言語は昔に比べて減ったというような話はあったものね。この航宙船の文字は、その失われた言語のひとつなんだわ」
クロノがじっと文字を見ている。
「うん? これは言語が違うわ。もしかしたら読めるかも……」
「どうしたよ」
しゃがみ込んだクロノに、アーツが反応する。
だが、その時けたたましい音が航宙船に鳴り響く。
―侵入者、侵入者、直ちに排除せよ―
航宙船のシステムによる警告だった。
どうやらアーツたちは、航宙船にとって侵入者とみなされたようである。
身構えるアーツたちだったが、しばらく経ってもまったく何も起きなかった。
―エラー、エラー。システムに異常が発見されました。修理致しますか?―
よく分からないが、エラーが起きたらしい。
防衛機能が起動できない深刻な状況にあるようだ。
「どうやら、現在の状態では防衛機能がちゃんと働かないようですね」
「なんだよ、びっくりさせやがって」
警報が鳴りやむ。
一定時間の間に命令がなかったために守る対象がないと判断したようだ。こうして航宙船はスリープモードへと移行したため、アーツたちにとっての深刻な状況は脱せたようである。
「一時はどうなることかと思ったぜ」
「でも、この航宙船からすれば、私たちが侵入者であることには変わりないわ。油断しないでおきましょう」
「そうですね。何がきっかけできちんと動き始めるのか分かりません。用心に越したことはないと思います」
ブランとニックの言葉に全員がこくりと頷き、航宙船の中の探索が再開される。
通常の航宙船は操舵室の方向から見て左側に出入口のハッチがあることが多い。
さらに、状況からするに、これは航宙船の最下部付近にある出入口だと思われる。
航宙船内の移動は複数個所あるワープポータルか、階段を使って移動する。
あまり移動に時間をかけたくないアーツたちではあるものの、航宙船の大きさが分からない以上は、ワープポータルに頼るわけにはいかなかった。
なぜなら、航宙船の中で迷子となって、外へと出られなくなる可能性があるからだ。
それを防ぐには、入口から順番に移動して、現在地をしっかりと立体的には把握しておく方がいいのである。
「一般的な航宙船の作りであるなら、入口から左側の上部を目指せば操舵室に到着するはずです。この航宙船は岩山に偽装していますので、どちらが船首かということがはっきりと分かりません。なので、まずは一般論で船首を目指します」
「よし、分かった」
『内部構造の把握なら、我にお任せを。なにせ我は、地中に大きな巣穴を掘るのですからな』
「お願いね、ノワール」
『はっ!』
アーツたちが行動方針を確認すると、そこに便乗するような形でノワールが意気込んでいる。
「ノワールは何だって?」
「構造の把握は任せなさいって。アリは地中に巣穴を掘るから、そういうことは得意みたいよ」
「そいつは心強いな」
「でかいだけの虫かと思ったが、三匹とも頼りになるよな」
レンクスがぽそりと呟けば、ノワールたちは聞こえたのか胸を張っているようだった。ブランに使えるようになったからか、自慢げにする動作が時々見られるようになっていた。
まったく妙に人間臭い行動だけに、アーツたちはつい笑ってしまっている。
『まったく、笑うとは失敬な』
ノワールが怒っていることがブランの通訳で伝えられると、アーツたちは言い訳をしていた。
航宙船のシステムによる警戒が空振りに終わり、改めてアーツたちは航宙船の中の調査を進める。
操舵室を目指す理由は、航宙船のシステムのメインが操舵室に集中しているからである。
なので、操舵室に到着できれば、この航宙船の全容の把握もたやすいだろうと考えたからだ。
その一方で懸念もある。
システム音声自体はアーツたちに聞き取れたものの、文字の方は見たことがないものばかりだ。
ノワールとニックが二人でいた時に拾った金属に書かれていた文字くらいしか、アーツたちには読むことはできない。
言語の壁から、航宙船のことが何も分からない可能性があるというわけなのだ。
ただ、ニックに言わせれば、航宙船には自動翻訳機能があるとのこと。いろんな言語を使う人物が同時に乗り込むことがあるので、そのコミュニケーションがスムーズに行えるようにと航宙船が備えている機能のひとつなのである。
この航宙船にも備わっていることを祈りながら、航宙船の入口から左手に沿いながら進むアーツたち。
無事にこの二百年前の航宙船から情報を得ることができるのであろうか。アーツたちは祈るような気持ちだった。
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