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第48話 二百年で変わるもの変わらないもの
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迷路のような場所は、一定の方向に進み続けていればいずれは正解にたどり着ける。
そういう知識があるのだろうか。アーツたちはハッチから入るとひたすら船首があると推測される左側を目指して移動していく。
だが、ここは船底である。多くは倉庫となっているので、階層自体はあまり広くないようだった。
「思った以上にこの階は狭いな」
「そりゃそうですよ。船底は基本的には倉庫が揃います。そうなると、この辺りにおそらく階段があるでしょう」
左に沿って進んでいたアーツたちは、結構あるかないうちに壁にぶち当たっていた。
拍子抜けみたいなことを言うアーツではあるが、ニックは航宙船の基本的な構造をしっかりとつかんでいるようだった。
壁に当たって右に折れ曲がると、しばらく進むと左に進む分岐が見つかった。右側には何か扉が見えるが、まったく文字は読めなかった。
「転移装置ってわけでもなさそうだな」
「おそらくは倉庫の入口でしょう。調べるのは後回しにして、まずは操舵室です」
ニックの言葉に賛成したアーツたちは、左に曲がって通路を進んでいく。だが、そこは階段ではなく転送装置が置かれていた。
「広い空間に円形の床と天井。ダメですね、転送装置です」
なんとなく見覚えがあったからすぐに分かった。
どうやら転送装置の基本的な形は二百年前から変わっていないらしい。
「でも、ここにあるということは、頭上には大事な場所があるはずです。この上が操舵室で間違いないでしょうね」
「でもよう。どうやって上に上がるんだよ」
「それは階段を探すしかないですね。文字が読めない以上、起動させてしまってはどこに飛ぶか分かりません。そもそも起動させられるか分かりませんしね。さあ、引き返しますよ」
ニックがアーツたちを押して引き返そうとした時だった。
ブゥン……。
突如として転送装置が起動したのである。
照明が勝手に着くように、どうやらこの航宙船のシステムはほとんどが生きているようである。
「おいおいおい、なんで動いてるんだよ」
レンクスが驚いているとブランの叫ぶ声が聞こえる。
「ヴェール?!」
転送装置にはカマキリであるヴェールが乗っていたのだ。
『あの愚か者が!』
オランジュが連れ戻しに向かうが、同時にニックも向かい始めていた。
「に、ニック?」
クロノがびっくりしている。
「すごい……。さっきまで読めなかった文字がすべて読めるようになってる……」
「はあ?!」
どんなご都合主義だと言わんばかりのアーツの声である。
「そうか。この航宙船の中でしばらく滞在したことで、僕の能力が進化したというわけですね。これはありがたい」
「なるほど、ニックの力は機械に作用するってわけなのね。それで、この航宙船にしばらく滞在したことで、航宙船になじんだというわけなんだわ」
クロノはそのように分析している。
「いや、だったら地下空間でも……」
「いえ、それはないわ。私たちの乗ってきた航宙船の中に長く滞在していたニックが能力の発露が遅れてたんだから、それと同等のことがあの地下空間で起きていたと考えられるわ」
「そういうことなのね」
クロノの推測に、ブランは納得しているようだった。だが、アーツとレンクスはいまいち納得がいかないのか首を捻っている。
だが、今はそれに構っている時ではない。
「ニック、ちゃんと操作できそうかしら」
「待ってて下さい、クロノ。すぐに使えるようにしますので」
ニックは転送装置の中のパネルを操作していく。
初めて触る二百年前の機械とはいっても、アーツの買ってもらった航宙船が似たような仕様だったので、初見というわけではなさそうである。
文字も自動翻訳ですらすらと読めるので、何の迷いもなく操作していっている。
「設定が終わりました。みんな、円の中に立って下さい」
ニックがにこにことした笑顔で呼ぶので、アーツたちは仕方なく転送装置の中に集まってくる。
ブランの眷属である虫たちも含めて、全員がしっかりと転移装置に乗っている。ちなみにスズメバチのオランジュはブランの方に捕まっている。
「それでは行きますよ。操舵室へ転送!」
操作パネルの転移ボタンをポチッと押す。
ブゥンという音が再び響き渡り、ニックたちがいる空間が光の壁に包まれる。
次の瞬間、ぐにゃりと視界が歪み、あっという間に目の前の景色が変わってしまった。
「……真っ暗だな」
「とりあえず転移は成功したみたいだけど、ここはどこかしら」
アーツが呟いた通り、前後左右のどこの目の前も真っ暗である。唯一見えるのは、転移装置だけだった。
「とりあえず降りましょう。人を感知すれば明かりがともるはずですから」
「まあ、そうだな」
ニックの呼び掛けに応じて、アーツたちは転移装置から降りていく。
転移装置の光の壁に足が触れると、転移装置の光の壁が消えると同時に、部屋の中に一斉に光がともった。
「うわぁ……」
アーツたちの目の前には信じられない空間が広がっていた。
ガラス張りの展望はすべてが割れてしまい、操舵室にはたくさんの岩が落ちていたのである。
「そっか……。地面が隆起したから、衝撃に耐えられなかったんだ……」
そう、地面の隆起によって、操舵室は完全に破壊されてしまっていたのだった。
目の前の光景に、アーツたちはしばらく呆然と立ち尽くすのだった。
そういう知識があるのだろうか。アーツたちはハッチから入るとひたすら船首があると推測される左側を目指して移動していく。
だが、ここは船底である。多くは倉庫となっているので、階層自体はあまり広くないようだった。
「思った以上にこの階は狭いな」
「そりゃそうですよ。船底は基本的には倉庫が揃います。そうなると、この辺りにおそらく階段があるでしょう」
左に沿って進んでいたアーツたちは、結構あるかないうちに壁にぶち当たっていた。
拍子抜けみたいなことを言うアーツではあるが、ニックは航宙船の基本的な構造をしっかりとつかんでいるようだった。
壁に当たって右に折れ曲がると、しばらく進むと左に進む分岐が見つかった。右側には何か扉が見えるが、まったく文字は読めなかった。
「転移装置ってわけでもなさそうだな」
「おそらくは倉庫の入口でしょう。調べるのは後回しにして、まずは操舵室です」
ニックの言葉に賛成したアーツたちは、左に曲がって通路を進んでいく。だが、そこは階段ではなく転送装置が置かれていた。
「広い空間に円形の床と天井。ダメですね、転送装置です」
なんとなく見覚えがあったからすぐに分かった。
どうやら転送装置の基本的な形は二百年前から変わっていないらしい。
「でも、ここにあるということは、頭上には大事な場所があるはずです。この上が操舵室で間違いないでしょうね」
「でもよう。どうやって上に上がるんだよ」
「それは階段を探すしかないですね。文字が読めない以上、起動させてしまってはどこに飛ぶか分かりません。そもそも起動させられるか分かりませんしね。さあ、引き返しますよ」
ニックがアーツたちを押して引き返そうとした時だった。
ブゥン……。
突如として転送装置が起動したのである。
照明が勝手に着くように、どうやらこの航宙船のシステムはほとんどが生きているようである。
「おいおいおい、なんで動いてるんだよ」
レンクスが驚いているとブランの叫ぶ声が聞こえる。
「ヴェール?!」
転送装置にはカマキリであるヴェールが乗っていたのだ。
『あの愚か者が!』
オランジュが連れ戻しに向かうが、同時にニックも向かい始めていた。
「に、ニック?」
クロノがびっくりしている。
「すごい……。さっきまで読めなかった文字がすべて読めるようになってる……」
「はあ?!」
どんなご都合主義だと言わんばかりのアーツの声である。
「そうか。この航宙船の中でしばらく滞在したことで、僕の能力が進化したというわけですね。これはありがたい」
「なるほど、ニックの力は機械に作用するってわけなのね。それで、この航宙船にしばらく滞在したことで、航宙船になじんだというわけなんだわ」
クロノはそのように分析している。
「いや、だったら地下空間でも……」
「いえ、それはないわ。私たちの乗ってきた航宙船の中に長く滞在していたニックが能力の発露が遅れてたんだから、それと同等のことがあの地下空間で起きていたと考えられるわ」
「そういうことなのね」
クロノの推測に、ブランは納得しているようだった。だが、アーツとレンクスはいまいち納得がいかないのか首を捻っている。
だが、今はそれに構っている時ではない。
「ニック、ちゃんと操作できそうかしら」
「待ってて下さい、クロノ。すぐに使えるようにしますので」
ニックは転送装置の中のパネルを操作していく。
初めて触る二百年前の機械とはいっても、アーツの買ってもらった航宙船が似たような仕様だったので、初見というわけではなさそうである。
文字も自動翻訳ですらすらと読めるので、何の迷いもなく操作していっている。
「設定が終わりました。みんな、円の中に立って下さい」
ニックがにこにことした笑顔で呼ぶので、アーツたちは仕方なく転送装置の中に集まってくる。
ブランの眷属である虫たちも含めて、全員がしっかりと転移装置に乗っている。ちなみにスズメバチのオランジュはブランの方に捕まっている。
「それでは行きますよ。操舵室へ転送!」
操作パネルの転移ボタンをポチッと押す。
ブゥンという音が再び響き渡り、ニックたちがいる空間が光の壁に包まれる。
次の瞬間、ぐにゃりと視界が歪み、あっという間に目の前の景色が変わってしまった。
「……真っ暗だな」
「とりあえず転移は成功したみたいだけど、ここはどこかしら」
アーツが呟いた通り、前後左右のどこの目の前も真っ暗である。唯一見えるのは、転移装置だけだった。
「とりあえず降りましょう。人を感知すれば明かりがともるはずですから」
「まあ、そうだな」
ニックの呼び掛けに応じて、アーツたちは転移装置から降りていく。
転移装置の光の壁に足が触れると、転移装置の光の壁が消えると同時に、部屋の中に一斉に光がともった。
「うわぁ……」
アーツたちの目の前には信じられない空間が広がっていた。
ガラス張りの展望はすべてが割れてしまい、操舵室にはたくさんの岩が落ちていたのである。
「そっか……。地面が隆起したから、衝撃に耐えられなかったんだ……」
そう、地面の隆起によって、操舵室は完全に破壊されてしまっていたのだった。
目の前の光景に、アーツたちはしばらく呆然と立ち尽くすのだった。
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