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第49話 操舵室にて
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目の前の光景に、アーツたちは呆然と立ち尽くしている。
なんと、操舵室自体がひしゃげてしまっていたのだ。
この原因は、おそらく地面の隆起だろう。さすがの航宙船も、隆起による地形の変化には耐え切れず、操舵室の一部がその影響で潰れてしまっていたのだ。
ガラスが割れたり、岩が落ちていたりするのはそのせいである。
おそらく、システムの警告に何も反応しなかったのは、これの影響があると推測される。
とはいえ、見て回る分には影響がなさそうだ。数メートルも盛り上がる地形の変化で、むしろこの程度の損傷で済んでいる方が奇跡だろう。
「展望部分が壊れちまっているが、システムは……生きてそうか?」
「どうでしょうね。警告が作動していた現状から考えるに、システム自体は生きているでしょうね。ただ、一部に支障が出ているのは間違いないみたいです」
アーツが質問している中で、ニックは近くにあったパネルを操作して調べ物をしている。
さっきから航宙船の中の文字が全部読めるようになったせいか、ニックの動作は実にスムーズである。
「すげぇな、全部読めるのか」
「はい。航宙船の中でしばらく滞在していたせいでしょうかね。中に溜まった魔素の影響で突然読めるようになりました」
「翻訳機能もあるってことから」
「単純にニックの能力を強化したんだと思うわよ」
あちこち見て回っているアーツを除いて、ニックの作業をこぞって覗き込んでいる。
だが、誰一人としてニックが触っているパネルに表示されている文字を読むことはできなかった。
「航宙船って思ったより頑丈だな」
「アーツ」
操舵室の様子を見て回っていたアーツが、ニックたちのところにやって来た。
「まったくもってすげえぜ。ガラスは割れて、多少の歪みがあるっていうのによ、設備にはあまりダメージがないんだからな。普通こんなことがあれば電気系統が切れてショートから出火ってことになりかねないんだがな」
「そういえばそうね」
「壊れている個所は見るけれど、ショートしてるような場所はないものね」
そう、見れば見るほど全体的に不思議なのである。被害ははっきりいって展望のガラス部分だけなのだ。
とはいえ、宇宙空間に出ても無事でいられるだけの強度を持ったガラスが割れているのだから、隆起によって航宙船にかかった力は相当なものだと思われる。
「あっ、損傷個所が出せそうですね。ちょっと小さいですけれど、すぐ隣のモニタに出しますね」
「ニック、そのまま出されても、あたしたち読めないわよ?」
「大丈夫です、翻訳にかけてますから」
さすがニックである。
ブランの出した問題点も無事に解決しているようである。
そんなわけで、アーツたちはニックがモニタに表示してくれるのを静かに待つことにした。
ちなみにノワールたちは周囲の警戒を続けている。
「それでは出しますね」
ニックの声に、アーツたちはごくりと息を飲む。
表示された結果に、アーツたちは驚かされる。
「この辺りだけじゃねえか」
「ほぼ損傷なしじゃねえかよ」
「二百年前の技術とはいえ侮れないわね」
「強度だけなら、今の方が負けてないかしら」
口々に結果に対する感想が出てくる。ほぼすべてが驚きのようだ。
「ですけれど、システムが言っていた通り、防衛システムが全滅しています。原因はここの真下にあるマシンの収納スペースが潰れてしまったことでしょうね。圧迫されてしまって、脱出しようにも船を壊さないと出られなくなっているのだと思います」
「そっか、船を壊せないってわけか」
「そういうことですね。船を壊せば、人間たちに被害が及ぶと考えたからです。おそらく、それが防衛機能が動作しなかったエラーの原因でしょう」
ニックは推測ではあるものの、自信たっぷりに防衛機能が動作しなかった理由を話している。
その根本にあるのは、古くに提唱されたロボット三原則だろう。
人を傷つけてはならない。
人の命令に従わなければならない。
自分を守らなければならない。
上記の三項目である。
まず、命令を出したのは航宙船のシステムだ。これは航宙船内の人間を守るために出された命令だ。
しかし、防衛システムのいた場所が問題だった。隆起によって狭められてしまい、身動きが取れなくなってしまった。これによって航宙船を破壊しなければならない事態になったわけだが、それが原因で人が傷ついたり自分が損傷したりしないかという事態が想定された。
そして、最終的に、命令を出したのは人間ではないため、周囲に及ぶ被害を想定して命令を聞かなかったのである。
なんとも皮肉めいた話である。
「ニック、何をしているんだ?」
「さっきのことを踏まえて、僕たちが危険ではないことをこの航宙船に覚えさせるんですよ。乗組員として僕たちの情報を登録します」
「そんなことができるのかよ!」
「大体解析できましたからね。今の僕なら不可能じゃないですよ」
なんとも頼もしいかぎりである。
―ピピッ、登録を確認。乗組員として承認します―
無事にニックによる書き換えが終了し、ニックたちはこの航宙船の乗組員として認識されるようになった。
「ふぅ、これで安心して航宙船の中を探索できます。ですが、ここは一度休憩を入れましょうか」
「賛成。さすがに疲れちゃったわ」
ブランとクロノたちが参っているようなので、アーツたちはやむなく一度休憩を入れることにしたのだった。
この大きな航宙船。一体どんなものが眠っているのかという期待を持ちながら。
なんと、操舵室自体がひしゃげてしまっていたのだ。
この原因は、おそらく地面の隆起だろう。さすがの航宙船も、隆起による地形の変化には耐え切れず、操舵室の一部がその影響で潰れてしまっていたのだ。
ガラスが割れたり、岩が落ちていたりするのはそのせいである。
おそらく、システムの警告に何も反応しなかったのは、これの影響があると推測される。
とはいえ、見て回る分には影響がなさそうだ。数メートルも盛り上がる地形の変化で、むしろこの程度の損傷で済んでいる方が奇跡だろう。
「展望部分が壊れちまっているが、システムは……生きてそうか?」
「どうでしょうね。警告が作動していた現状から考えるに、システム自体は生きているでしょうね。ただ、一部に支障が出ているのは間違いないみたいです」
アーツが質問している中で、ニックは近くにあったパネルを操作して調べ物をしている。
さっきから航宙船の中の文字が全部読めるようになったせいか、ニックの動作は実にスムーズである。
「すげぇな、全部読めるのか」
「はい。航宙船の中でしばらく滞在していたせいでしょうかね。中に溜まった魔素の影響で突然読めるようになりました」
「翻訳機能もあるってことから」
「単純にニックの能力を強化したんだと思うわよ」
あちこち見て回っているアーツを除いて、ニックの作業をこぞって覗き込んでいる。
だが、誰一人としてニックが触っているパネルに表示されている文字を読むことはできなかった。
「航宙船って思ったより頑丈だな」
「アーツ」
操舵室の様子を見て回っていたアーツが、ニックたちのところにやって来た。
「まったくもってすげえぜ。ガラスは割れて、多少の歪みがあるっていうのによ、設備にはあまりダメージがないんだからな。普通こんなことがあれば電気系統が切れてショートから出火ってことになりかねないんだがな」
「そういえばそうね」
「壊れている個所は見るけれど、ショートしてるような場所はないものね」
そう、見れば見るほど全体的に不思議なのである。被害ははっきりいって展望のガラス部分だけなのだ。
とはいえ、宇宙空間に出ても無事でいられるだけの強度を持ったガラスが割れているのだから、隆起によって航宙船にかかった力は相当なものだと思われる。
「あっ、損傷個所が出せそうですね。ちょっと小さいですけれど、すぐ隣のモニタに出しますね」
「ニック、そのまま出されても、あたしたち読めないわよ?」
「大丈夫です、翻訳にかけてますから」
さすがニックである。
ブランの出した問題点も無事に解決しているようである。
そんなわけで、アーツたちはニックがモニタに表示してくれるのを静かに待つことにした。
ちなみにノワールたちは周囲の警戒を続けている。
「それでは出しますね」
ニックの声に、アーツたちはごくりと息を飲む。
表示された結果に、アーツたちは驚かされる。
「この辺りだけじゃねえか」
「ほぼ損傷なしじゃねえかよ」
「二百年前の技術とはいえ侮れないわね」
「強度だけなら、今の方が負けてないかしら」
口々に結果に対する感想が出てくる。ほぼすべてが驚きのようだ。
「ですけれど、システムが言っていた通り、防衛システムが全滅しています。原因はここの真下にあるマシンの収納スペースが潰れてしまったことでしょうね。圧迫されてしまって、脱出しようにも船を壊さないと出られなくなっているのだと思います」
「そっか、船を壊せないってわけか」
「そういうことですね。船を壊せば、人間たちに被害が及ぶと考えたからです。おそらく、それが防衛機能が動作しなかったエラーの原因でしょう」
ニックは推測ではあるものの、自信たっぷりに防衛機能が動作しなかった理由を話している。
その根本にあるのは、古くに提唱されたロボット三原則だろう。
人を傷つけてはならない。
人の命令に従わなければならない。
自分を守らなければならない。
上記の三項目である。
まず、命令を出したのは航宙船のシステムだ。これは航宙船内の人間を守るために出された命令だ。
しかし、防衛システムのいた場所が問題だった。隆起によって狭められてしまい、身動きが取れなくなってしまった。これによって航宙船を破壊しなければならない事態になったわけだが、それが原因で人が傷ついたり自分が損傷したりしないかという事態が想定された。
そして、最終的に、命令を出したのは人間ではないため、周囲に及ぶ被害を想定して命令を聞かなかったのである。
なんとも皮肉めいた話である。
「ニック、何をしているんだ?」
「さっきのことを踏まえて、僕たちが危険ではないことをこの航宙船に覚えさせるんですよ。乗組員として僕たちの情報を登録します」
「そんなことができるのかよ!」
「大体解析できましたからね。今の僕なら不可能じゃないですよ」
なんとも頼もしいかぎりである。
―ピピッ、登録を確認。乗組員として承認します―
無事にニックによる書き換えが終了し、ニックたちはこの航宙船の乗組員として認識されるようになった。
「ふぅ、これで安心して航宙船の中を探索できます。ですが、ここは一度休憩を入れましょうか」
「賛成。さすがに疲れちゃったわ」
ブランとクロノたちが参っているようなので、アーツたちはやむなく一度休憩を入れることにしたのだった。
この大きな航宙船。一体どんなものが眠っているのかという期待を持ちながら。
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