ドラゴニックプラネット

未羊

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第54話 二百年前がもたらしたもの

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 アーツは慎重に外の様子を窺いながら、横穴から顔を出して外を見る。
 外には相変わらず多くの恐竜たちがうろついており、とてもではないが移動できる状況ではなかった。
 だが、たまたまなのか意図的なのかは分からないが、恐竜たちは横穴の存在には気が付いていないようである。そのため、アーツが顔を出してもまったく感知する様子はなかったのである。

(これならもう少し出られるか?)

 まったく気が付かない恐竜たちを見て、アーツは少し身を乗り出してしまう。
 その瞬間だった。

 ぎょろり……。

 恐竜たちの視線が一斉に自分の方へと向いたのだ。
 これに驚いて、アーツは一気に身を穴へと引っ込める。
 するとどうしたことか。恐竜たちは再び不意と顔を背けてしまった。

「どういうことだ? もしかしてこの穴が原因なのか?」

 アーツは首を傾げている。
 だが、気にしていたところで状況は変わらない。外の状況を確認したアーツはみんなのところに戻ってきた。

「よかった無事なのね」

「ああ、この通りな」

 クロノが安心した表情を浮かべていると、アーツは力こぶを作って安心させている。
 だが、笑顔を見せたのも束の間。アーツの表情は厳しくなる。

「外は相変わらず恐竜どもがうろついていやがる」

「それじゃ、出るに出られないのね」

 クロノが確認すれば、アーツはこくりと頷く。

「だが、不思議に思わないか?」

「何がですか?」

 次に口にした言葉にニックがきょとんとした表情をアーツへと向ける。
 何が言いたいのか、この時点は分からなかったからだ。

「恐竜たちがここを襲わない理由だよ」

「ああ、確かにそうだな」

 アーツがはっきりと言えば、レンクスが同調する。
 そう。今アーツたちがいる横穴の中へは、恐竜たちはどういうわけか襲撃をかけないのである。

「俺が横穴から少しでも身を乗り出したら、一斉に視線を向けてきた。だが、引っ込めた瞬間、奴らは顔を背けて見ていないふりをしている。おそらく、この横穴の中は何らかの理由で奴らが感知できないスペースになっているんだろう」

「なるほど……。ここにいる限りは安全というわけですか」

「現状ではな」

 ニックの結論を肯定はするものの、アーツは気を引き締めている。
 それというのも、何のきっかけでアーツたちが今滞在している横穴に恐竜たちがアタックを仕掛けてくるか分からないからだ。完全に安全と言える状況ではないので、アーツは気を緩めるなというような物言いをしているのだ。

―それならば、思い当たる節があります―

 これに反応したのは、航宙船の防衛ロボットだった。

「どういうことだ?」

―実はですね。以前のマスターたちは、ここに降りるなり、航宙船を岩山にカモフラージュしたのですが、同時に電磁波を発して、この中を遮蔽してしまったのです。おそらく、その影響で恐竜たちはこの中を感知できないのだと思われます―

「そういうことなのね。つまり、恐竜たちには得体の知れない近づきたくないものになっているというわけなのね」

―おそらく……―

 なんということだろうか。
 二百年前の人たちが念のために施した対策が、今なお効果を発揮しているのである。
 この現実には、アーツたちは驚かされるばかりである。
 そんなわけで、現状ではこの岩山の中は安全地帯ということになる。だが、いつこの防御が突破されるか分からないだけに、早急に対策を講じる必要がある。
 最低限、岩山の周りをうろつくすべての恐竜を撃退する必要があるのだ。

「食事の問題があるからな。このまま長引けば、地下空間の人たちの二の舞だ。なんとしても、生きて元の場所に帰らねえとな」

「まったくだわ。旅行に来たら突如発生した宇宙嵐に巻き込まれた上に恐竜の惑星に連れてこられて、そのままサバイバル生活だなんて、いつまでも耐えられるわけがないわ」

 アーツもクロノも不満がどんどん出てくるばかりだった。

―水でしたら、いつでも生成できますのでお気軽にお申し付けください―

「それは本当か?」

―はい。我々は魔素を自由に扱うことができますゆえ、その程度でしたら造作もございません。試しに手を出して下さい―

「こうか?」

 ロボットに言われるがままに、アーツは両手を受け皿にする。
 次の瞬間、ロボットの目が光り、アーツの手の中に水が出現したのだ。

―さあ、お飲み下さい―

 勧めてくるので、そのまま口に運んで一気に流し込む。

「うめぇっ!」

 思わず叫んでしまうアーツである。

―大気中にある魔素は、どんな物質にでも変質します。我らの解析の結果、自由に扱う能力を得ました―

「そいつは心強えな」

「すごい。ロボットですらこんなことができるだなんて……」

 レンクスたちも驚きを隠せなかった。
 二百年前の人たちはとんでもない事故を起こしてくれたものだが、こんな便利なこともできるようになっていた。
 まったく皮肉ともいえる状態である。
 とはいえ、恐竜という脅威がいる以上は、この恩恵に喜んでばかりもいられない。
 アーツが見た恐竜の位置を確認すると、どのように攻撃を仕掛けて恐竜を倒すかの作戦会議が、本格的に始まったのだった。
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