ドラゴニックプラネット

未羊

文字の大きさ
57 / 75

第57話 大変な一日

しおりを挟む
 横穴の中から様子を窺っていると、本当に恐竜たちが集まってきてしまった。
 こうなってしまっては、今のアーツたちでは太刀打ちができるわけもなく、やむなく退散して正解だったようだ。

「くそっ、ふりだしかよ!」

 さすがにアーツは悔しそうだった。
 地面にガツンと拳をぶつけて、叫んでいた。

「アーツ! 何をしてるのよ。血が出てたらどうするの!」

 あまりにもイラついているアーツの姿を見て、クロノが怒りながら駆け寄ってくる。
 それもそうだ。万一ケガでもしていれば、その力を使わないといけないからだ。
 クロノの能力は時間を操るというもの。ケガをしていれば、ケガをする前まで時間を巻き戻すことになる。
 そして、その巻き戻した時間の分だけ、クロノの時間が進む。つまり、老化が起きてしまうのだ。
 その話をしたばかりだというのに、苛立ちのあまりアーツは忘れてしまっているようだった。

「……悪い。見ての通りケガはないから安心してくれ」

 アーツは自分の拳を広げて、クロノを安心させていた。
 何事もなかったことに、クロノはほっと胸を撫で下ろしていた。

 ところが、先程のできごとはニックにも衝撃を与えていた。

「う~ん、火を噴くようになったせいでしょうね。火に対する耐性ができているのかもしれません。それで、あれだけの爆発炎上をしながらも、恐竜にほとんどダメージを与えられなかったのでしょう」

「うへっ、マジかよそれ……」

 ニックの推測に、レンクスが嫌そうな表情を浮かべている。
 火に耐えられるということは、ロボットたちと持ってきた目の前にある装備がまったく役に立たないということになるからだ。

「そうなると、やっぱりこれで攻撃するしかないってわけか……」

 ニックたちの話を聞いていたアーツは、腰にぶら下げている閃光剣や閃光銃に手を触れている。
 そう、これならば恐竜たちの装甲を貫いてダメージを与えることができるからだ。実際に撃退もできている。

―参りましたね。我らの武器もこのロケットランチャーと似たようなものですから、これでは我らもお役に立てそうにありませんね―

 ロボットたちも困り果てたようだった。
 だが、問題はこれだけではない。

「恐竜たちへの対処は緊急課題だけど、まだ問題はあるわ」

「そうよ、食事とかどうするの? お風呂とかトイレとかは、この航宙勘の設備が使えるでしょうけれど、食事だけはどうしようもないわ」

 食糧の問題である。
 生きていく以上、食べなければならない。
 実際、食べるものを失った地下空間の人たちは全員が死に絶えてしまっている。
 すぐさま解決しなければならない問題だった。

―それでしたら、我らにお任せを―

「うん、どうするんだ?」

 ロボットたちの行動に、アーツたちが注目する。

―我らにも魔素を操る能力があります。それを応用すれば、どういったことでも可能にできるのです―

―我らの解析力の力をお見せしましょう―

 ロボットは横穴の中に、畑を作り出してしまった。

「いや、植物を育てるつもりか?」

―その通りでございます。大気中の魔素を栄養へと変換し、植物に与えます―

―ただ、初めて試すために、マスターたちに使うわけには参りません。食糧を確保するという目的で実験させて頂きます―

「あっ、そういえば」

 ニックは何かを思い出したらしく、ポケットを探っていた。

「探索でアーツたちが拾ってきたものの一部を持ったままにしていたのを忘れていました。これは使えますか?」

―はい、使えます―

―お渡し下さいませ―

 寄こせとうるさいので、ニックはロボットに引っ張り出したものを手渡していた。

「あれって、あのくそまずい葉っぱじゃねえか」

「でも、食べられるものです。ないよりはマシじゃないですか」

「確かにそうね……」

 目の前では、ロボットが葉っぱを地面において、なにやらごちゃごちゃと作業を行っている。
 大気中に漂う魔素を水へと変換し、葉っぱにかけているようである。
 こんなことでは普通は育つはずがない。
 ところが、目の前では不思議なことが起きていた。

「おいおい、マジかよ……」

「科学じゃないわね」

 アーツたちはただただ驚くしかなかった。
 葉っぱ一枚から、なんと植物が再生してしまったのだ。

「昔の人たちが書いていたっていうファンタジーとかいうものですかね」

「空想の世界じゃなかったのかよ……」

 目の前で起きている現実に、言葉を失っていくばかりのアーツたちだった。

―マスター方、あと一日ほど我慢を頂けますでしょうか―

―必ずや、食べられるものにしてみせます―

 どうやら、目の前の植物は食べられないらしい。
 アーツたちは目を見合わせながら、ロボットたちがやっていることを見守るしかないなと、彼らに任せるしかなかった。

「これで食べ物はどうにかなるのかしら……ね」

「ないよりはマシだろう。あとで料理ができるかどうか、航宙船内の設備を再確認しておこうぜ」

「そうですね」

 さすがに生のままでは苦みが強くて食べにくい。
 そのため、アーツは航宙船の中をチェックすることに決めた。

「もう疲れちゃったから、あたしは休むわね」

 ところが、ブランは疲れてしまったようで、土の上にもかかわらず眠ろうとしていた。
 そういえばこの日はいろいろと情報の大洪水だったのだ。
 アーツたちはつられるように疲れを感じたため、ひとまずしっかりと休むことにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...