ドラゴニックプラネット

未羊

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第58話 不意の訪問者

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 翌朝のことだった。
 アーツたちが目を覚ますと、なにやら騒ぐ声が聞こえている。

「やめろ! なんだこれは」

「ちょっと離しなさいよ」

 ちょっと若い感じの男女の声だった。

「は? 人間の声?!」

 予想外なことにアーツは全員を起こす。
 声のした方をじっと見つめていると、そこにはノワールたちとたたか……じゃれ合っている若い男女の姿が見えた。

「あっ、人間だ!」

「本当だ、人間だわ!」

 アーツたちの姿を見つけて、ノワールたちを蹴り飛ばして距離を取っていた。
 まさか虫たちに勝てるとは思ってなかったので、アーツたちはぽかんとしている。

「えっと、君たちは一体?」

 ニックが眼鏡を触りながら前へと出ていく。
 昨日のことで航宙船でやって来た人間が全員死んだことを知ったアーツたちだけに、目の前にいる人間たちのことは不思議でならなかった。
 どこでどう過ごしていて、どうやってここにやって来たのか。とっ捕まえて聞き出したいところだ。

「おい、どうしてこいつらの侵入を止められなかったんだ」

 アーツは警戒にあたらせていたロボットたちに怒鳴っている。

―申し訳ございません。なにやら懐かしいものを感じましたゆえ、敵とみなせませんでした―

 ロボットはこんなことを言っている。

「懐かしい……? まさか、こいつら二百年ほど前にここに降り立ったっていう人類と関係があるのか?」

 アーツは首を捻っている。

『主、こいつらすぐに処しましょう。この我を蹴飛ばしました』

 その横では不意に蹴り飛ばされて不覚を取ったノワールが怒り狂っている。

「ノワール落ち着いて。とりあえず話ができるみたいだから、話を……ね?」

『むむむ……、主が、そういわれるのでしたら……』

 ブランに言われて、ノワールたち三匹は仕方なくおとなしくすることにした。
 それにしても、アーツたちの目の前にいる二人の子どもは一体何者なのだろうか。

「ねえ、お兄ちゃんたち」

「なんだよ」

 アーツたちのことをお兄ちゃんと呼んでいる。見た目が変わらないだけに、年上か年下か分からないのでなんとも妙な気分になってしまう。

「お兄ちゃんたちはここの下にある地下空間に、昨日来たよね?」

「ああ、確かに入ったな」

「そっか。それじゃ、僕たちが送ったメッセージは受け取ってもらえたんだ」

 目の前の少年の言葉に、アーツは首を傾げている。

「あ、もしかして、僕たちの航宙船の下に落ちていた金属のことですか?」

「ピンポーン、正解」

 ニックが答えると、少年は人差し指を立ててウィンクをし、少女の方は笑顔で拍手をしている。
 一体何なのだろうかと、ますます警戒を強めてしまう。

「お察しの通り、僕たちは二百年前にこの地に降り立った人間の子孫だよ」

「この世界の魔素を使ってコールドスリープをする機械の開発に成功して、私たち二人は誰かがやって来るのを、ずっと眠って待っていたんです」

 なんとも驚きの証言である。
 こんな場所でコールドスリープをする機械を開発しているとは、二百年前の人類の技術力もバカにできたものではなかった。
 それに加えて、自分たち以外の人間がいたことが驚きである。
 あの地下空間を見て、二百年前に降り立った人間は全滅していたと思っていただけに、衝撃の新事実である。

「二人も、何かしら特殊な能力というのはあるのかな。今こいつが虫と話をしていたような感じのやつが」

 アーツがブランの後ろに回って肩をつかむ。その瞬間、ブランは驚いただけだったが、クロノがちょっと頬を膨らましたことをレンクスは見逃さなかった。

「その金属片を飛ばしたのは僕の能力ですね。瞬間移動の能力です、距離は知れていますけれど」

 少年は何かを取り出すと、早速能力を使ってみせる。
 ぱっと手の中のものは消え、一番遠くにいたクロノの背中に落ちていた。

「ひゃっ!」

 突然響いたカランコロンという音に、クロノがものすごくびびっていた。

「ただの金属の板じゃないの、驚かせないでよね」

 拾ってぷんすかと怒るくらいである。

「私の方もお見せしますね」

 手を前に出して、少女は能力を使う。
 昨日ロボットが草を生やしていた畑の隣に、別の植物を成長させていた。

「私の能力は植物を操る能力です。時間とはまた違いますので、ペナルティは特にないようですね」

「うっ、いいなぁ……」

 クロノが露骨に羨ましがっている。

「でも、君たちは一体どこから来たんだよ。出入口のようなものはなかったと思うんだが?」

「ああ、それならここですよ」

 少年がアーツたちを案内し始める。
 向かった先は横穴の入口からそこそこ左にずれた場所だった。

「ここをこうして……それでパスワードを入れると……」

 少年が操作を行うと、岩の壁が移動して入口が現れた。

「なんと!?」

 何度かやって来ていた場所だというのに、まったく気が付かなかった。
 見つけていたとしても、パスワードが分からずに入れなかっただろうが、それでも悔しいというものである。

「僕たちが眠っていた場所に案内しましょう。せっかく知り合った縁なのですからね」

 いまいち信用はできないものだが、興味の方がそれを上回る。
 アーツたちはロボットを待機させたまま、ブランの連れている三匹の虫を護衛に、少年少女に続いて扉の中へと入っていったのだった。
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