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第59話 二百年ぶりの遭遇
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横穴の中に突如と開いた入口を通って、アーツたちは中へと降りていく。
「まさかこんな空間があるなんてな……」
「さすがの僕も気付けませんでしたね」
階段を降りながら、アーツたちは話をしている。
知られざる空間の中は思った以上に暗く、足元がよく見えない。踏み外せば大惨事は免れないので、とても慎重に足を運んでいる。
アーツたちを先導して歩く少年少女はまったく何も喋らない。
静かにただ案内しているのみである。
長い階段を下り、ようやく平らな場所に出る。
よくは見えないものの、そこそこ広さのある空間のようだ。
「ノワール、ヴェール、オランジュ。問題はなさそう?」
『はい、危険はなさそうでございます、主』
『俺も同じように思う』
『問題ございません』
揃って同じ答えが返ってきた。
「みんな、大丈夫だって」
ブランが告げると、アーツたちは警戒を解いた。
「ここは、マザーコンピュータのいた地下空間と同じ場所か?」
「そうだよ」
アーツがぽつりと呟くと、少年がすぐさま反応していた。
「僕たちは地下空間拡張のために作業をしていた者たちの子孫です」
「地下空間の拡張?」
アーツが聞き返すと、少年少女が顔を見合わせてこくりと頷いて話を始める。
「はい。食糧を確保するという目的を達するために、地下空間に広大な農園を作るつもりでいました」
「それと、乗ってきた航宙船への道を作るという目的もあったんです」
「ですが、いざ航宙船に戻ってくると、地盤隆起によって航宙船に乗れる状況ではなくなってしまっていたんです」
二人は話していた内容はなんともつらいものだった。
さらに不幸だったのは、その地盤隆起の影響で、マザーコンピュータと自分たちが引き離されてしまったこと。
二か所をつないでいた通路が崩落で塞がれてしまったのだという。
「それで閉じ込められた私たちの祖先は、また誰か来るかもしれないと一抹の望みを信じ、コールドスリープの装置を作りました」
「それで、僕たちが一番若いということで、いつか人が来ると信じて眠ることになったのです」
二人は、今までの経緯をすべて話してくれていた。
二人の表情からは読み取れないくらい、重くて悲しい過去の話だった。
降り立った空間に光がともる。
「うわぁ……」
目の前には荒れ放題の畑が見える。手入れをする人物がいなくなったためだろう。
それでも、二人は食べる分には困らないようだった。
「こちらに案内しますね」
二人が連れて来た場所は、コールドスリープをしていた場所である。
ただ、なんとも言えない腐臭が漂っており、おそらくここでみんな亡くなったのだろう。
「もっと作れていれば、みんな生き残ることができたでしょうに……。当時の技術ではこれが限界でした」
「いや、この何もなさそうな状態からここまで作れただけでもすごいと思うぜ」
「まったくね」
「すごい……。このコールドスリープマシン、いずれじっくり調べさせてもらいたいですね」
アーツとクロノが感心する中、ニックだけが平常運転である。
目の前の装置を見て、興味がそそられないわけがなかった。
アーツやレンクスたちが呆れるくらい、ニックはコールドスリープマシンにべたべたと手を触れて眺めていた。
「あの、あのまま放っておいていいんですかね」
「大丈夫です。ただ、今はマザーとつながっていますから、向こうからこっちのことは感知されていると思いますよ」
「うへっ、マジかよ」
アーツが驚いていると、ニックもぴたりと触る動きを止めていた。
「そろそろここを出ましょうよ。もう、我慢できないわ……」
「分かった、移動しよう。分断された通路に連れていってもらえるか?」
「分かりました。こちらです」
クロノが臭気に耐え切れなくなったので、アーツたちは部屋を出て昨日入った地下空間へとつながる場所へとやって来た。
確かにそこは土砂で完全に埋まってしまっていて、とても通れる状態にはなかった。
「ノワール、頼めるかしら」
『承知した』
ブランの能力でノワールに土砂の撤去を依頼する。
『我らも手伝おう。ヴェール、行くわよ』
『あたぼうよ』
虫たち三匹が協力して、土砂を少しずつ取り除いてく。
ブランの眷属となった三匹の能力は高く、あっという間にどんどんと土砂を取り除いていっていた。
ただ、手が鎌になっているヴェールは非常に苦労していたようだ。
『主、このくらいで大丈夫でしょうか』
「すごいわ、三匹とも。ありがとう、これで通れるわね」
全体の八割くらいを取り除き終わり、十分通れるほどの隙間を確保した。
できれば全部を取り除きたいところが、とりあえず通れれば問題なしである。
三匹とも、ブランに褒められて頭を撫でられたら嬉しそうにしている。すっかり、眷属として懐柔されているようだ。
何はともあれ、約二百年ぶりに二つの地下空間が行き来できるようになった。
コールドスリープによる生き残りがいると知ったマザーコンピュータは、一体どのような反応をするのだろうか。
それもあるし、航宙船の状態も教えなければならない。
アーツたちは昨日ぶりとなるマザーコンピュータとの対面に、今までにない緊張を覚えたのだった。
「まさかこんな空間があるなんてな……」
「さすがの僕も気付けませんでしたね」
階段を降りながら、アーツたちは話をしている。
知られざる空間の中は思った以上に暗く、足元がよく見えない。踏み外せば大惨事は免れないので、とても慎重に足を運んでいる。
アーツたちを先導して歩く少年少女はまったく何も喋らない。
静かにただ案内しているのみである。
長い階段を下り、ようやく平らな場所に出る。
よくは見えないものの、そこそこ広さのある空間のようだ。
「ノワール、ヴェール、オランジュ。問題はなさそう?」
『はい、危険はなさそうでございます、主』
『俺も同じように思う』
『問題ございません』
揃って同じ答えが返ってきた。
「みんな、大丈夫だって」
ブランが告げると、アーツたちは警戒を解いた。
「ここは、マザーコンピュータのいた地下空間と同じ場所か?」
「そうだよ」
アーツがぽつりと呟くと、少年がすぐさま反応していた。
「僕たちは地下空間拡張のために作業をしていた者たちの子孫です」
「地下空間の拡張?」
アーツが聞き返すと、少年少女が顔を見合わせてこくりと頷いて話を始める。
「はい。食糧を確保するという目的を達するために、地下空間に広大な農園を作るつもりでいました」
「それと、乗ってきた航宙船への道を作るという目的もあったんです」
「ですが、いざ航宙船に戻ってくると、地盤隆起によって航宙船に乗れる状況ではなくなってしまっていたんです」
二人は話していた内容はなんともつらいものだった。
さらに不幸だったのは、その地盤隆起の影響で、マザーコンピュータと自分たちが引き離されてしまったこと。
二か所をつないでいた通路が崩落で塞がれてしまったのだという。
「それで閉じ込められた私たちの祖先は、また誰か来るかもしれないと一抹の望みを信じ、コールドスリープの装置を作りました」
「それで、僕たちが一番若いということで、いつか人が来ると信じて眠ることになったのです」
二人は、今までの経緯をすべて話してくれていた。
二人の表情からは読み取れないくらい、重くて悲しい過去の話だった。
降り立った空間に光がともる。
「うわぁ……」
目の前には荒れ放題の畑が見える。手入れをする人物がいなくなったためだろう。
それでも、二人は食べる分には困らないようだった。
「こちらに案内しますね」
二人が連れて来た場所は、コールドスリープをしていた場所である。
ただ、なんとも言えない腐臭が漂っており、おそらくここでみんな亡くなったのだろう。
「もっと作れていれば、みんな生き残ることができたでしょうに……。当時の技術ではこれが限界でした」
「いや、この何もなさそうな状態からここまで作れただけでもすごいと思うぜ」
「まったくね」
「すごい……。このコールドスリープマシン、いずれじっくり調べさせてもらいたいですね」
アーツとクロノが感心する中、ニックだけが平常運転である。
目の前の装置を見て、興味がそそられないわけがなかった。
アーツやレンクスたちが呆れるくらい、ニックはコールドスリープマシンにべたべたと手を触れて眺めていた。
「あの、あのまま放っておいていいんですかね」
「大丈夫です。ただ、今はマザーとつながっていますから、向こうからこっちのことは感知されていると思いますよ」
「うへっ、マジかよ」
アーツが驚いていると、ニックもぴたりと触る動きを止めていた。
「そろそろここを出ましょうよ。もう、我慢できないわ……」
「分かった、移動しよう。分断された通路に連れていってもらえるか?」
「分かりました。こちらです」
クロノが臭気に耐え切れなくなったので、アーツたちは部屋を出て昨日入った地下空間へとつながる場所へとやって来た。
確かにそこは土砂で完全に埋まってしまっていて、とても通れる状態にはなかった。
「ノワール、頼めるかしら」
『承知した』
ブランの能力でノワールに土砂の撤去を依頼する。
『我らも手伝おう。ヴェール、行くわよ』
『あたぼうよ』
虫たち三匹が協力して、土砂を少しずつ取り除いてく。
ブランの眷属となった三匹の能力は高く、あっという間にどんどんと土砂を取り除いていっていた。
ただ、手が鎌になっているヴェールは非常に苦労していたようだ。
『主、このくらいで大丈夫でしょうか』
「すごいわ、三匹とも。ありがとう、これで通れるわね」
全体の八割くらいを取り除き終わり、十分通れるほどの隙間を確保した。
できれば全部を取り除きたいところが、とりあえず通れれば問題なしである。
三匹とも、ブランに褒められて頭を撫でられたら嬉しそうにしている。すっかり、眷属として懐柔されているようだ。
何はともあれ、約二百年ぶりに二つの地下空間が行き来できるようになった。
コールドスリープによる生き残りがいると知ったマザーコンピュータは、一体どのような反応をするのだろうか。
それもあるし、航宙船の状態も教えなければならない。
アーツたちは昨日ぶりとなるマザーコンピュータとの対面に、今までにない緊張を覚えたのだった。
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