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第60話 マザーとの再会
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通路を進んでいくと、アーツたちは少しだけ見覚えのある場所に出てきた。
「ここは……」
「アーツ、あれ!」
アーツが辺りを見回していると、クロノが口を押えて叫んでいる。
指差す方向を見ると、そこには白骨化した遺体が転がっていた。
そう、ニックが扉を開けている間に見て回っていた部屋のひとつのようだった。
あの時はすぐにニックが声をあげたのでよく確認できていなかったのだが、まさか奥に通路があるとは思ってもみなかった。
意外なことに、アーツたちと行動を一緒にしている少年少女は声をまったくあげなかった。おそらくは自分たちが目覚めたところで目撃していたのだろう。
二人は白骨化した遺体に近付き、跪いて両手を合わせて祈りを捧げていた。
「何をしていたんだ?」
レンクスが尋ねると二人は声をそろえて答える。
「安らかに眠れるように祈りを捧げていました。みなさんの時代ですと、そのような習慣はもう残っていないのですか?」
「知らないな」
「初めて見ました」
二人の問い掛けに、アーツたちは揃って首を横に振っていた。
実にジェネレーションギャップである。
二百年の間に、いろいろと廃れてしまっているようだった。
祈りをささげ終わると、アーツたちは再び歩き始める。
「そうだ。僕たちの名前を言っていませんでしたね。ここで自己紹介させてもらいます」
このタイミングでの自己紹介に、アーツたちはちょっと戸惑う。
だが、お互いをまったく知らないで一緒に行動するのもいい加減に限界だった。なので、自己紹介には賛成のようだった。
「僕はテレップ。双子の兄になります。能力は先程見せたように物を瞬間移動させる能力です」
「私はラネッツァです。テレップの双子の妹になります。私は植物を操る能力ですが、ここにこれだけの植物を生やしたのは私じゃないですよ」
ラネッツァは地下空間の植物の状態を見て、苦笑いをしながら弁解をしていた。
コールドスリープがどのくらいの期間だったのかは分からないが、状態を見ればそのくらいの想像はつくので、アーツたちはラネッツァの言い訳を信じた。
アーツたちも自己紹介を終えると、いよいよマザーコンピュータとの再会だ。
部屋に入ると自動で照明がつく。
目の前には、この惑星には似つかわしくない、巨大な機械の塊が現れる。
これが二百年前に着陸した人類が作り上げた大きなコンピュータなのだ。
「この大きな機械がマザーコンピュータですか。両親からは伺っていましたが、これほどのものとは……」
テレップが呟いた次の瞬間、ブゥンという奇妙な音が鳴り響く。
「な、なんですか、今の音は!」
「マザー、起きたみたいだな」
慌てる二人に対して、アーツが冷静に呼び掛ける。
―その声は先日の侵入者ですね。おはようございます―
マザーコンピュータから挨拶が返ってくる。
それにしても、侵入者呼びとはなんとも穏やかではないものだ。
「侵入者呼びはちょっとやめてもらいたいな。無理に名前で呼べとは言わないけどさ」
―ここに住んでいた人類以外は、何者であろうと侵入者です。そこはご理解下さい―
なんとも頭の固いことを言うマザーコンピュータである。
―おや、この気配は……―
その最中、マザーコンピュータは何かを感じ取ったようである。
「ああ、どうやら二百年前にやって来た人類の一部がコールドスリープで生き延びていたらしい。ただ、残念なことにこの二人だけらしいんだ」
―なんと……。この未開の地でコールドスリープの装置を作り上げるとは……―
さすがのマザーコンピュータでも驚きを隠せないようだった。
―マスターたちに再び会える時が来ようとは……。私、感動しております―
機械だというのにやっぱり感情があったようだ。嗚咽のような声まで聞こえてくるんだから、当時の技術もなかなかにすごいものである。
それにしても、言葉遣いがすっかり変わっていることにも驚かされた。
「それで感動の再会はいいんだが、マザー。ちょっと残念な報告がある」
―なんでしょうか―
少しぐらいは感傷に浸らしてもいいのだろうが、アーツたちはそうもいかないのでさっさと話を始めることにした。
「航宙船なんだが、どうやら地面の隆起によって船首部分がひしゃげちまってるみたいなんだ」
―な、なんですって。計算を、すぐに計算をしなければ!―
アーツの第一声にマザーコンピュータは慌てて何か計算を始める。
―なんてこと、四メートルは最低でも隆起していますね。寝ている間に大地震でもあったのでしょうか―
マザーコンピュータは混乱している。
―なんてことですか。これでは私たちの期間は叶わない夢になってしまいます。どうにかして修繕する手立てを……―
話そっちのけで航宙船のことにかかりきってしまっている。どれだけ航宙船を気にしているのか。
「落ち着け! 航宙船も大事だが、まずは周辺をうろつく恐竜どもをどうにかしないといけないだろ!」
―はっ、そうでした!―
アーツが大声で叫ぶと、ようやくマザーコンピュータは我に返ったようだった。本当に人間じみたコンピュータである。
―少なくともまだ十体ほどがうろついていますね。それで、作戦はおありですか?―
「航宙船にあった武器を使ってみたが、まったく通じる気配がなかった。ロボットとは新しく主従関係を結んだが、今は手立てなしってところだな」
―そうですか……。分かりました。我で何かないか検索をしてみましょう―
そんなわけで、ひとまずの作戦についてはマザーに任せ、アーツたちは一度休憩を取ることにしたのだった。
「ここは……」
「アーツ、あれ!」
アーツが辺りを見回していると、クロノが口を押えて叫んでいる。
指差す方向を見ると、そこには白骨化した遺体が転がっていた。
そう、ニックが扉を開けている間に見て回っていた部屋のひとつのようだった。
あの時はすぐにニックが声をあげたのでよく確認できていなかったのだが、まさか奥に通路があるとは思ってもみなかった。
意外なことに、アーツたちと行動を一緒にしている少年少女は声をまったくあげなかった。おそらくは自分たちが目覚めたところで目撃していたのだろう。
二人は白骨化した遺体に近付き、跪いて両手を合わせて祈りを捧げていた。
「何をしていたんだ?」
レンクスが尋ねると二人は声をそろえて答える。
「安らかに眠れるように祈りを捧げていました。みなさんの時代ですと、そのような習慣はもう残っていないのですか?」
「知らないな」
「初めて見ました」
二人の問い掛けに、アーツたちは揃って首を横に振っていた。
実にジェネレーションギャップである。
二百年の間に、いろいろと廃れてしまっているようだった。
祈りをささげ終わると、アーツたちは再び歩き始める。
「そうだ。僕たちの名前を言っていませんでしたね。ここで自己紹介させてもらいます」
このタイミングでの自己紹介に、アーツたちはちょっと戸惑う。
だが、お互いをまったく知らないで一緒に行動するのもいい加減に限界だった。なので、自己紹介には賛成のようだった。
「僕はテレップ。双子の兄になります。能力は先程見せたように物を瞬間移動させる能力です」
「私はラネッツァです。テレップの双子の妹になります。私は植物を操る能力ですが、ここにこれだけの植物を生やしたのは私じゃないですよ」
ラネッツァは地下空間の植物の状態を見て、苦笑いをしながら弁解をしていた。
コールドスリープがどのくらいの期間だったのかは分からないが、状態を見ればそのくらいの想像はつくので、アーツたちはラネッツァの言い訳を信じた。
アーツたちも自己紹介を終えると、いよいよマザーコンピュータとの再会だ。
部屋に入ると自動で照明がつく。
目の前には、この惑星には似つかわしくない、巨大な機械の塊が現れる。
これが二百年前に着陸した人類が作り上げた大きなコンピュータなのだ。
「この大きな機械がマザーコンピュータですか。両親からは伺っていましたが、これほどのものとは……」
テレップが呟いた次の瞬間、ブゥンという奇妙な音が鳴り響く。
「な、なんですか、今の音は!」
「マザー、起きたみたいだな」
慌てる二人に対して、アーツが冷静に呼び掛ける。
―その声は先日の侵入者ですね。おはようございます―
マザーコンピュータから挨拶が返ってくる。
それにしても、侵入者呼びとはなんとも穏やかではないものだ。
「侵入者呼びはちょっとやめてもらいたいな。無理に名前で呼べとは言わないけどさ」
―ここに住んでいた人類以外は、何者であろうと侵入者です。そこはご理解下さい―
なんとも頭の固いことを言うマザーコンピュータである。
―おや、この気配は……―
その最中、マザーコンピュータは何かを感じ取ったようである。
「ああ、どうやら二百年前にやって来た人類の一部がコールドスリープで生き延びていたらしい。ただ、残念なことにこの二人だけらしいんだ」
―なんと……。この未開の地でコールドスリープの装置を作り上げるとは……―
さすがのマザーコンピュータでも驚きを隠せないようだった。
―マスターたちに再び会える時が来ようとは……。私、感動しております―
機械だというのにやっぱり感情があったようだ。嗚咽のような声まで聞こえてくるんだから、当時の技術もなかなかにすごいものである。
それにしても、言葉遣いがすっかり変わっていることにも驚かされた。
「それで感動の再会はいいんだが、マザー。ちょっと残念な報告がある」
―なんでしょうか―
少しぐらいは感傷に浸らしてもいいのだろうが、アーツたちはそうもいかないのでさっさと話を始めることにした。
「航宙船なんだが、どうやら地面の隆起によって船首部分がひしゃげちまってるみたいなんだ」
―な、なんですって。計算を、すぐに計算をしなければ!―
アーツの第一声にマザーコンピュータは慌てて何か計算を始める。
―なんてこと、四メートルは最低でも隆起していますね。寝ている間に大地震でもあったのでしょうか―
マザーコンピュータは混乱している。
―なんてことですか。これでは私たちの期間は叶わない夢になってしまいます。どうにかして修繕する手立てを……―
話そっちのけで航宙船のことにかかりきってしまっている。どれだけ航宙船を気にしているのか。
「落ち着け! 航宙船も大事だが、まずは周辺をうろつく恐竜どもをどうにかしないといけないだろ!」
―はっ、そうでした!―
アーツが大声で叫ぶと、ようやくマザーコンピュータは我に返ったようだった。本当に人間じみたコンピュータである。
―少なくともまだ十体ほどがうろついていますね。それで、作戦はおありですか?―
「航宙船にあった武器を使ってみたが、まったく通じる気配がなかった。ロボットとは新しく主従関係を結んだが、今は手立てなしってところだな」
―そうですか……。分かりました。我で何かないか検索をしてみましょう―
そんなわけで、ひとまずの作戦についてはマザーに任せ、アーツたちは一度休憩を取ることにしたのだった。
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