67 / 75
第67話 我慢の時
しおりを挟む
航宙船からの帰り道でも、アーツたちは警戒を怠らなかった。なにせ来る時に恐竜の姿をちらりと目撃していたからだ。
だが、幸いなことに遭遇することなく横穴へと戻って来ることができた。
穴の中へと入ると、ようやくアーツたちは安心した様子で大きく息を吐き出していた。
「ふぅ、今戻ったぜ」
「おかえり、アーツ」
「ただいま、ブラン。こっちは特に変わったことはなかったか?」
「ああ、問題なかったぜ」
護衛を兼ねて残っていたレンクスが代わりに答えている。
その後ろでは、テレップとラネッツァがロボットたちと話をしている。どうやら、畑についていろいろと話し合っているようだ。
「おう、お前らは何をしているんだ?」
「ああ、アーツさん。お帰りなさい。無事でなによりです」
「えっとですね、畑の植物についてロボットたちと話をしていたんです」
ラネッツァは足元の畑を見ながら答えている。
どうやら、ロボットが急成長させた畑について、ちょっと思うところがあるようなのだ。
「狭い、暗いって言っています。どうやら、横穴の中は十分な環境にないみたいなんです」
「ああ、そうか。地下の方が明るかったもんな。だとするなら、やはり圧倒的に足りないのは光か……」
アーツはすぐさま何が足りないか言い当てていた。
この横穴の中は、生活のための照明が備えられてはいるが、それは移動に困らない程度の明るさしかない。
つまり、植物が育つための光量にはとても足りないというわけだった。
それに比べて地下空間は、生活を第一としているために、畑のスペースには煌々とした明かりがともされていた。
「だが、ここでそれだけの明かりをつけるわけにはいかないな。下手に光が漏れ出ていると、恐竜どころか虫たちだって呼び寄せちまう」
「でも、虫ならこの子たちみたいに味方にできるんじゃないの?」
ブランがノワールたちを従えてやって来る。
確かに説得力のある姿ではあるが、アーツは首を横に振っていた。
「ブランの能力を疑うわけじゃないが、その詳細も限界も分かっちゃいない。過信するのもよくないだろう。何匹までなら従えさせられるのか、そこは要検証だぞ」
「た、確かにそうね……」
アーツの言い分に、ブランは納得させられてしまった。
「悪いけれど、テレップとラネッツァには、今まで通り地下で過ごしてもらうしかないな。畑の世話ができるというのが大きいし」
「えー……」
二人は不満そうである。
「能力の訓練だと思えばいいさ。畑を育てることでラネッツァは植物の力を、俺たちに野菜と届けるために転移させれば、テレップの能力だって訓練できるだろ」
「あっ、確かにそうですね」
「もちろん、二人を避けているわけじゃない。故郷に帰るっていう同じ目標がある限り、俺たちは仲間だ。食事の時くらいは合流して一緒に食べようぜ」
「はい、分かりました」
アーツの提案に、二人は素直に応じることにした。
本気で自分たちを気にかけてくれているのが伝わったようである。
「それで、そっちは何か収穫あったか?」
アーツたちの話が終わったところで、レンクスが成果を問い掛けてくる。
「ああ、残念ながら、ロボットたちが使えるような情報はなかった。二百年間の歴史の追加くらいだろうな」
「そうか……」
―いえ、必ずしも無駄だとは思えませんよ―
―はい、我々の帰るべき場所の現在の情報が手に入りましたので、それだけでも大収穫です―
ロボットたちはアーツの報告にフォローを入れていた。
まったく、こういった気遣いもできるあたり、ロボットなのにロボットらしくないロボットたちである。
「あっ、そうだ。困ったことがあったな」
「なにが困ったことなんだ?」
思い出したかのように言い始めるアーツに、レンクスが慌てたように聞き始める。
「ええ、実に困ったことです」
ニックも話に加わろうとする。
「俺の航宙船に傷がついちまったんだ」
「航宙船の近くまで恐竜が来てたんですよ」
「えっ?」
アーツとニックの言っている内容が食い違っている。思わず顔を見合わせてしまう二人である。
「ははっ、そりゃどっちも大変だな。てか、俺たちの乗ってきた航宙船に、恐竜が近付いてきたってことか」
「はい。ただ近くを通りかかっただけなのか、帰る時には遭遇しませんでした」
「そっか、それなら安心だな」
ニックの報告にほっとするレンクスである。
「本当にアーツってば、航宙船のことを気にしすぎてるわよね」
「当たり前だ。買ってもらったばかりなんだぞ?!」
クロノが指摘すると、アーツは本気で怒るように言い返している。どこまでも航宙船ファーストなのだ。
報告が終わったのはいいものの、恐竜対策にはこれといった進展はなかった。
今いる面々では、まだまだ二百年前の航宙船を修理できるだけの技術はないし、外の安全を完全に確保することもできない。
なにせ、航宙船を隠すために覆った岩山を、真っ先に除外しなければならないからだ。
航宙船の損害状況を完全に把握しなければ、修理のしようもないというわけなのである。
航宙船から持ち帰った備品によって少しだけ生活環境がよくなりはしたものの、望まれたような進展がなく、焦りを覚え始める。
はたして、アーツたちがこの惑星から脱出できる時はやって来るのか、少しずつ不安が大きくなるばかりだったのだ。
だが、幸いなことに遭遇することなく横穴へと戻って来ることができた。
穴の中へと入ると、ようやくアーツたちは安心した様子で大きく息を吐き出していた。
「ふぅ、今戻ったぜ」
「おかえり、アーツ」
「ただいま、ブラン。こっちは特に変わったことはなかったか?」
「ああ、問題なかったぜ」
護衛を兼ねて残っていたレンクスが代わりに答えている。
その後ろでは、テレップとラネッツァがロボットたちと話をしている。どうやら、畑についていろいろと話し合っているようだ。
「おう、お前らは何をしているんだ?」
「ああ、アーツさん。お帰りなさい。無事でなによりです」
「えっとですね、畑の植物についてロボットたちと話をしていたんです」
ラネッツァは足元の畑を見ながら答えている。
どうやら、ロボットが急成長させた畑について、ちょっと思うところがあるようなのだ。
「狭い、暗いって言っています。どうやら、横穴の中は十分な環境にないみたいなんです」
「ああ、そうか。地下の方が明るかったもんな。だとするなら、やはり圧倒的に足りないのは光か……」
アーツはすぐさま何が足りないか言い当てていた。
この横穴の中は、生活のための照明が備えられてはいるが、それは移動に困らない程度の明るさしかない。
つまり、植物が育つための光量にはとても足りないというわけだった。
それに比べて地下空間は、生活を第一としているために、畑のスペースには煌々とした明かりがともされていた。
「だが、ここでそれだけの明かりをつけるわけにはいかないな。下手に光が漏れ出ていると、恐竜どころか虫たちだって呼び寄せちまう」
「でも、虫ならこの子たちみたいに味方にできるんじゃないの?」
ブランがノワールたちを従えてやって来る。
確かに説得力のある姿ではあるが、アーツは首を横に振っていた。
「ブランの能力を疑うわけじゃないが、その詳細も限界も分かっちゃいない。過信するのもよくないだろう。何匹までなら従えさせられるのか、そこは要検証だぞ」
「た、確かにそうね……」
アーツの言い分に、ブランは納得させられてしまった。
「悪いけれど、テレップとラネッツァには、今まで通り地下で過ごしてもらうしかないな。畑の世話ができるというのが大きいし」
「えー……」
二人は不満そうである。
「能力の訓練だと思えばいいさ。畑を育てることでラネッツァは植物の力を、俺たちに野菜と届けるために転移させれば、テレップの能力だって訓練できるだろ」
「あっ、確かにそうですね」
「もちろん、二人を避けているわけじゃない。故郷に帰るっていう同じ目標がある限り、俺たちは仲間だ。食事の時くらいは合流して一緒に食べようぜ」
「はい、分かりました」
アーツの提案に、二人は素直に応じることにした。
本気で自分たちを気にかけてくれているのが伝わったようである。
「それで、そっちは何か収穫あったか?」
アーツたちの話が終わったところで、レンクスが成果を問い掛けてくる。
「ああ、残念ながら、ロボットたちが使えるような情報はなかった。二百年間の歴史の追加くらいだろうな」
「そうか……」
―いえ、必ずしも無駄だとは思えませんよ―
―はい、我々の帰るべき場所の現在の情報が手に入りましたので、それだけでも大収穫です―
ロボットたちはアーツの報告にフォローを入れていた。
まったく、こういった気遣いもできるあたり、ロボットなのにロボットらしくないロボットたちである。
「あっ、そうだ。困ったことがあったな」
「なにが困ったことなんだ?」
思い出したかのように言い始めるアーツに、レンクスが慌てたように聞き始める。
「ええ、実に困ったことです」
ニックも話に加わろうとする。
「俺の航宙船に傷がついちまったんだ」
「航宙船の近くまで恐竜が来てたんですよ」
「えっ?」
アーツとニックの言っている内容が食い違っている。思わず顔を見合わせてしまう二人である。
「ははっ、そりゃどっちも大変だな。てか、俺たちの乗ってきた航宙船に、恐竜が近付いてきたってことか」
「はい。ただ近くを通りかかっただけなのか、帰る時には遭遇しませんでした」
「そっか、それなら安心だな」
ニックの報告にほっとするレンクスである。
「本当にアーツってば、航宙船のことを気にしすぎてるわよね」
「当たり前だ。買ってもらったばかりなんだぞ?!」
クロノが指摘すると、アーツは本気で怒るように言い返している。どこまでも航宙船ファーストなのだ。
報告が終わったのはいいものの、恐竜対策にはこれといった進展はなかった。
今いる面々では、まだまだ二百年前の航宙船を修理できるだけの技術はないし、外の安全を完全に確保することもできない。
なにせ、航宙船を隠すために覆った岩山を、真っ先に除外しなければならないからだ。
航宙船の損害状況を完全に把握しなければ、修理のしようもないというわけなのである。
航宙船から持ち帰った備品によって少しだけ生活環境がよくなりはしたものの、望まれたような進展がなく、焦りを覚え始める。
はたして、アーツたちがこの惑星から脱出できる時はやって来るのか、少しずつ不安が大きくなるばかりだったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる