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第19話 大人を圧倒する元魔王
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あれよあれよという間に、アリエスを乗せた馬車は王都へと到着する。
王都の入口では、門番たちがぎょっとした様子で一行を眺めている。それというのもフィシェギルのサハーがいるからだ。
早馬で聖女を連れて到着するとは報告を受けていたものの、まさか魔物が混ざり込んでいるとは思わなかったというわけである。
だが、そこは護衛隊長がうまく言いくるめたので、いよいよ王都へと馬車は入っていく。
(ふむ、ここが俺がデビュタントを行う人間の国の中心地か。俺が魔王として築いていた城塞都市とは雰囲気が違うな。人間になったせいか、この雰囲気が心なしか心地よいな……)
街の中で営まれる人々の生活。そこに漂う雰囲気に、アリエスはつい心を和ませていた。
「聖女様、あれがデビュタントの会場となります、サンカサス王城でございます」
「そうですか。あのお城が会場なのですね」
アリエスは聖女として感想を漏らす一方、心の中では魔王としての感想が呟かれていた。
(ふん、あの程度の城ならば一瞬で崩せそうだな。それに、俺の建てた城の方がでかい。しょせんは人間の建築物か……)
まったくもって正反対ともいえる内容である。アリエスはよくもまあ、内なる魔王を隠して行動できているものである。
「それででして、デビュタントで聖女様がまとわれる衣装につきましては、我々がご用意しております。ぜひともご着用願いますように申し上げさせて頂きます」
使者の男はそういうものの、アリエスはふるふると横に首を振っていた。
「私の着用するドレスは、カプリナ様がご用意下さっております。それにお約束ですから、そちらをご優先させて頂きます。ご用意いただいたのに、心苦しいですが、お断りさせて頂きます」
どこの誰だか分からない人物に用意してもらったものよりも、親しい友人が用意してくれた衣装の方がいいに決まっている。しかも、ちゃんと仕立ててくれているのだから、着用しなければ失礼に当たるというものだ。
「なぜでございます。我々が聖女様のためにご用意いたしましたのに!」
使者の男性は声を荒げて、アリエスを問い質している。
教会の威信がかかっているのだろうか、相当必死のようである。
「私の体型もよく知らずに仕立てられた衣装です。着用して万一寸法が合いませんでしたら恥をかくのは誰でございましょう。そのようなことも分からずに勧められたのでは、さすがの私も困るというものです。もう少ししっかりと認識を持たれてはいかがでしょうか」
アリエスはぴしゃりと使者の男性を言いくるめる。
あまりにも正論すぎる上に、十歳の少女としてなめていたために、使者の男性はまったくもって反論ができなかった。実に悔しそうに唇をかみしめている。
アリエスは男性の悔しがる姿を見ても、すました表情で過ごしている。元魔王とはいえども、今は聖女である。教会で教えられたとおりに、清楚に振る舞うことを心掛けている。そのため、必要以上に咎めることはしなかったのだった。
お城に到着したアリエスは、護衛隊長の手を取って馬車から降りる。
「ようこそサンカサス王城へ。歓迎致します、聖女アリエス様」
「はい。私も楽しみにしていました。数日間、よろしくお願い致しますね」
「はっ、誠心誠意、もてなさせて頂きます」
アリエスが微笑みながら言葉を返すと、護衛隊長は跪いてまで誓いの言葉を立てていた。そこまでするとは、聖女とは相当なものなのだなと、アリエスは心の中で呆れていた。
「そうです。遅れてカプリナ様が到着なさると思うのですが、お部屋はご一緒にして頂けますでしょうか」
「ゾディアーク伯爵令嬢様でいらっしゃいますね。畏まりました、そのように手配しておきましょう」
「はい、お願い致しますね。デビュタント用の衣装を預けたままになっていますので、ぜひそのようにお願い致します」
アリエスはそのように伝言をすると、お城の使用人たちの案内で客間へと案内される。
通された部屋はさすが聖女にあつらえられただけあってとても豪華な部屋である。そもそもお城の中なのだからもとより豪華なのだろうが。
ただ、そこにいるのが十歳の少女と……フィシェギルのサハーというなんともミスマッチな二人である。
サハーはアリエスのわがままで護衛にあてがわれたのである。
「よろしいのでしょうか。俺ごときがこのような部屋に通されまして。ましてやまお……アリエス様とご一緒など、身に余る光栄でございますよ」
「いいのですよ。それにカプリナ様とも会わせておいた方がよろしいと思いますし」
「はあ……。そのカプリナ様と仰られる方は、アリエス様の御友人ということでよろしいのでしょうか」
「はい。小さい頃からの付き合いです」
微妙な顔で問い掛けるサハーに、アリエスは満面の笑みで答えている。
「さて、カプリナ様が到着なさるのが楽しみですね。それまでちょっと退屈かも知れませんが、ゆっくり待ちましょう」
「はっ、承知致しました。アリエス様のしもべとして、精一杯護衛させて頂きます」
一足先にお城に到着したアリエスは、カプリナが到着するまでごろごろと過ごして待ち続けた。
結局カプリナが到着したのは、アリエスが到着した二日後のことだったのだ。
王都の入口では、門番たちがぎょっとした様子で一行を眺めている。それというのもフィシェギルのサハーがいるからだ。
早馬で聖女を連れて到着するとは報告を受けていたものの、まさか魔物が混ざり込んでいるとは思わなかったというわけである。
だが、そこは護衛隊長がうまく言いくるめたので、いよいよ王都へと馬車は入っていく。
(ふむ、ここが俺がデビュタントを行う人間の国の中心地か。俺が魔王として築いていた城塞都市とは雰囲気が違うな。人間になったせいか、この雰囲気が心なしか心地よいな……)
街の中で営まれる人々の生活。そこに漂う雰囲気に、アリエスはつい心を和ませていた。
「聖女様、あれがデビュタントの会場となります、サンカサス王城でございます」
「そうですか。あのお城が会場なのですね」
アリエスは聖女として感想を漏らす一方、心の中では魔王としての感想が呟かれていた。
(ふん、あの程度の城ならば一瞬で崩せそうだな。それに、俺の建てた城の方がでかい。しょせんは人間の建築物か……)
まったくもって正反対ともいえる内容である。アリエスはよくもまあ、内なる魔王を隠して行動できているものである。
「それででして、デビュタントで聖女様がまとわれる衣装につきましては、我々がご用意しております。ぜひともご着用願いますように申し上げさせて頂きます」
使者の男はそういうものの、アリエスはふるふると横に首を振っていた。
「私の着用するドレスは、カプリナ様がご用意下さっております。それにお約束ですから、そちらをご優先させて頂きます。ご用意いただいたのに、心苦しいですが、お断りさせて頂きます」
どこの誰だか分からない人物に用意してもらったものよりも、親しい友人が用意してくれた衣装の方がいいに決まっている。しかも、ちゃんと仕立ててくれているのだから、着用しなければ失礼に当たるというものだ。
「なぜでございます。我々が聖女様のためにご用意いたしましたのに!」
使者の男性は声を荒げて、アリエスを問い質している。
教会の威信がかかっているのだろうか、相当必死のようである。
「私の体型もよく知らずに仕立てられた衣装です。着用して万一寸法が合いませんでしたら恥をかくのは誰でございましょう。そのようなことも分からずに勧められたのでは、さすがの私も困るというものです。もう少ししっかりと認識を持たれてはいかがでしょうか」
アリエスはぴしゃりと使者の男性を言いくるめる。
あまりにも正論すぎる上に、十歳の少女としてなめていたために、使者の男性はまったくもって反論ができなかった。実に悔しそうに唇をかみしめている。
アリエスは男性の悔しがる姿を見ても、すました表情で過ごしている。元魔王とはいえども、今は聖女である。教会で教えられたとおりに、清楚に振る舞うことを心掛けている。そのため、必要以上に咎めることはしなかったのだった。
お城に到着したアリエスは、護衛隊長の手を取って馬車から降りる。
「ようこそサンカサス王城へ。歓迎致します、聖女アリエス様」
「はい。私も楽しみにしていました。数日間、よろしくお願い致しますね」
「はっ、誠心誠意、もてなさせて頂きます」
アリエスが微笑みながら言葉を返すと、護衛隊長は跪いてまで誓いの言葉を立てていた。そこまでするとは、聖女とは相当なものなのだなと、アリエスは心の中で呆れていた。
「そうです。遅れてカプリナ様が到着なさると思うのですが、お部屋はご一緒にして頂けますでしょうか」
「ゾディアーク伯爵令嬢様でいらっしゃいますね。畏まりました、そのように手配しておきましょう」
「はい、お願い致しますね。デビュタント用の衣装を預けたままになっていますので、ぜひそのようにお願い致します」
アリエスはそのように伝言をすると、お城の使用人たちの案内で客間へと案内される。
通された部屋はさすが聖女にあつらえられただけあってとても豪華な部屋である。そもそもお城の中なのだからもとより豪華なのだろうが。
ただ、そこにいるのが十歳の少女と……フィシェギルのサハーというなんともミスマッチな二人である。
サハーはアリエスのわがままで護衛にあてがわれたのである。
「よろしいのでしょうか。俺ごときがこのような部屋に通されまして。ましてやまお……アリエス様とご一緒など、身に余る光栄でございますよ」
「いいのですよ。それにカプリナ様とも会わせておいた方がよろしいと思いますし」
「はあ……。そのカプリナ様と仰られる方は、アリエス様の御友人ということでよろしいのでしょうか」
「はい。小さい頃からの付き合いです」
微妙な顔で問い掛けるサハーに、アリエスは満面の笑みで答えている。
「さて、カプリナ様が到着なさるのが楽しみですね。それまでちょっと退屈かも知れませんが、ゆっくり待ちましょう」
「はっ、承知致しました。アリエス様のしもべとして、精一杯護衛させて頂きます」
一足先にお城に到着したアリエスは、カプリナが到着するまでごろごろと過ごして待ち続けた。
結局カプリナが到着したのは、アリエスが到着した二日後のことだったのだ。
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